心不全患者の予後予測
Seattle Heart Failure Modelは、 2006年にWayne C. Levyらによって開発された心不全患者の生存率を予測するためのツールである¹⁾。 その後、 2019年に慶應義塾大学のShiraishiらが日本人補正版のSHFMを報告している²⁾。
Cox比例ハザードモデルを基にしており、 以下の要因を組み合わせて生存率を算出する
上記を組み合わせて計算したものをSHFM、 tを求めたい年数としたときのX(t)を
X(t) = (- 0.0405 * t) * e(SHFM)とすると
Survival (t) = exp (X(t))
と表現できる。 1年間予測生存率が85%未満が、一般的に左室循環補助や心臓移植の適応の1つの基準とされる⁴⁾。
なお、 オリジナル版公開後、 2009年のSHFM-D長期追跡データを組み込み、 2013年に公式サイトは実測Kaplan–Meier 曲線に対応した。 そのため 3~5 年生存率は公式サイトと僅かに異なる (なお、 1年生存率は同一で、 SHFMスコア自体には差はない)。 実臨床や学術研究では公式計算式を利用すること。
SHFMは、 PRAISE-1 (計1,125例) の心不全患者データを基にモデル開発後、 5つの追加コホート (ELITE-2 など 計9,942例) で検証され、 派生コホートのc統計 0.725、 検証コホート 0.679–0.810 と高い識別能を示した。 1年生存率は派生コホートで 73.4% (予測) と 74.3% (実測) が一致し、 5コホートでも ±3%以内に収まる良好なキャリブレーションが確認された¹⁾。
慶應義塾大学のShiraishiらが本邦の心不全レジストリ (WET-HFとNaDEF、 計2,470例) でSHFMを検証したところ、 識別能 (c統計) は HFrEF 0.75 / HFpEF 0.69と良好に保たれていた。 一方キャリブレーションはHFrEF (LVEF <40%) で1年生存率を過大評価、 HFpEF (LVEF ≧40%) で過小評価する傾向が判明した。 そこでベースライン死亡率を決める定数 λ をオリジナルの 0.0405 から 0.059 に置換 (単純リベース) した結果、 HFrEFでは実測値とほぼ一致するまで補正できたが、 HFpEFでは依然ミスマッチが残った²⁾。
本邦の『2025年改訂版心不全診療ガイドライン』においても 「心不全患者の予後改善を目的として、 急性期に標準化されたリスクスコアを使用して予後予測を行うことを考慮する [推奨クラスIIa エビデンスレベルB-R]」 とされ、 慢性心不全リスクスコアの一つとして本スコアが紹介されている³⁾。
オリジナル版公開後、 2009年のSHFM-D長期追跡データを組み込み、 2013年に公式サイトへ実装された “ver 2” [実測 Kaplan–Meier 曲線] には対応していない。 そのため 3~5 年生存率は公式サイトと僅かに異なる (なお、 1年生存率は同一で、 SHFMスコア自体には差はない)。 実臨床や学術研究では公式計算式を利用すること。
*オリジナル版¹⁾には利尿薬としてメトラゾン、 ブメタニドの項目が掲載されていたが、 本邦未販売のため割愛し、 代わりにアゾセミド (ダイアート®など) を掲載した。 オリジナル版¹⁾および日本人補正板²⁾からまとめたフロセミド換算は以下の通りである¹⁾²⁾。
フロセミド80mg換算
≒ トラセミド40mg¹⁾²⁾
≒ アゾセミド120mg²⁾
≒ ヒドロクロロチアジド25mg¹⁾
≒ ブメタニド3mg (本ツール未掲載)¹⁾
≒ メトラゾン2mg (本ツール未掲載)¹⁾
なお、 著者らレジストリグループが公開する SHFM 日本人患者対応版においては、 フロセミド80mg≒トラセミド16mg ≒アゾセミド60mg となっている点に留意する必要がある。 本ツールではオリジナル文献¹⁾および日本人補正板²⁾のフロセミド換算法に準拠した。
3) 日本循環器学会/日本心不全学会合同ガイドライン. 2025年改訂版心不全診療ガイドライン
最終更新日 : 2025年5月6日
監修医師 : HOKUTO編集部監修医師
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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Seattle Heart Failure Modelは、 2006年にWayne C. Levyらによって開発された心不全患者の生存率を予測するためのツールである¹⁾。 その後、 2019年に慶應義塾大学のShiraishiらが日本人補正版のSHFMを報告している²⁾。
Cox比例ハザードモデルを基にしており、 以下の要因を組み合わせて生存率を算出する
上記を組み合わせて計算したものをSHFM、 tを求めたい年数としたときのX(t)を
X(t) = (- 0.0405 * t) * e(SHFM)とすると
Survival (t) = exp (X(t))
と表現できる。 1年間予測生存率が85%未満が、一般的に左室循環補助や心臓移植の適応の1つの基準とされる⁴⁾。
なお、 オリジナル版公開後、 2009年のSHFM-D長期追跡データを組み込み、 2013年に公式サイトは実測Kaplan–Meier 曲線に対応した。 そのため 3~5 年生存率は公式サイトと僅かに異なる (なお、 1年生存率は同一で、 SHFMスコア自体には差はない)。 実臨床や学術研究では公式計算式を利用すること。
SHFMは、 PRAISE-1 (計1,125例) の心不全患者データを基にモデル開発後、 5つの追加コホート (ELITE-2 など 計9,942例) で検証され、 派生コホートのc統計 0.725、 検証コホート 0.679–0.810 と高い識別能を示した。 1年生存率は派生コホートで 73.4% (予測) と 74.3% (実測) が一致し、 5コホートでも ±3%以内に収まる良好なキャリブレーションが確認された¹⁾。
慶應義塾大学のShiraishiらが本邦の心不全レジストリ (WET-HFとNaDEF、 計2,470例) でSHFMを検証したところ、 識別能 (c統計) は HFrEF 0.75 / HFpEF 0.69と良好に保たれていた。 一方キャリブレーションはHFrEF (LVEF <40%) で1年生存率を過大評価、 HFpEF (LVEF ≧40%) で過小評価する傾向が判明した。 そこでベースライン死亡率を決める定数 λ をオリジナルの 0.0405 から 0.059 に置換 (単純リベース) した結果、 HFrEFでは実測値とほぼ一致するまで補正できたが、 HFpEFでは依然ミスマッチが残った²⁾。
本邦の『2025年改訂版心不全診療ガイドライン』においても 「心不全患者の予後改善を目的として、 急性期に標準化されたリスクスコアを使用して予後予測を行うことを考慮する [推奨クラスIIa エビデンスレベルB-R]」 とされ、 慢性心不全リスクスコアの一つとして本スコアが紹介されている³⁾。
オリジナル版公開後、 2009年のSHFM-D長期追跡データを組み込み、 2013年に公式サイトへ実装された “ver 2” [実測 Kaplan–Meier 曲線] には対応していない。 そのため 3~5 年生存率は公式サイトと僅かに異なる (なお、 1年生存率は同一で、 SHFMスコア自体には差はない)。 実臨床や学術研究では公式計算式を利用すること。
*オリジナル版¹⁾には利尿薬としてメトラゾン、 ブメタニドの項目が掲載されていたが、 本邦未販売のため割愛し、 代わりにアゾセミド (ダイアート®など) を掲載した。 オリジナル版¹⁾および日本人補正板²⁾からまとめたフロセミド換算は以下の通りである¹⁾²⁾。
フロセミド80mg換算
≒ トラセミド40mg¹⁾²⁾
≒ アゾセミド120mg²⁾
≒ ヒドロクロロチアジド25mg¹⁾
≒ ブメタニド3mg (本ツール未掲載)¹⁾
≒ メトラゾン2mg (本ツール未掲載)¹⁾
なお、 著者らレジストリグループが公開する SHFM 日本人患者対応版においては、 フロセミド80mg≒トラセミド16mg ≒アゾセミド60mg となっている点に留意する必要がある。 本ツールではオリジナル文献¹⁾および日本人補正板²⁾のフロセミド換算法に準拠した。
3) 日本循環器学会/日本心不全学会合同ガイドライン. 2025年改訂版心不全診療ガイドライン
最終更新日 : 2025年5月6日
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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