治療スケジュール
概要
監修医師

cilta-cel:シルタカブタゲン オートルユーセル(カービクティ®)

投与量コース投与日
0.5~1.0 ×10⁶ 個/kg 〈最大許容量1.0×10⁸ 個〉1Day1

前投薬

Infusion reaction軽減のため、 投与30~60分前に抗ヒスタミン薬、 解熱鎮痛薬を投与.

その他

細胞採取から本剤投与に至るまでの手順は、 製造販売業者が提供するマニュアル等を参照すること.
通常の目標用量は、 CAR発現生T細胞として0.75×10⁶ 個/kg〈MMY2001試験〉.
リンパ球除去化学療法終了後に本剤を投与.
サイトカイン放出症候群の緊急時に備えて、 トシリズマブの在庫を確保する.
輸液バッグの融解は開始から完了までを15分以内に行い、 融解後は室温下で2.5時間以内に投与を完了する.
投与速度は7mL/minを超えないこと.
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本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

薬剤情報

*適正使用ガイドは 「ヤンセンファーマ株式会社」 の外部サイトへ遷移します.

主な有害事象

CARTITUDE-1 (MMY2001) 試験¹⁾ より引用 (適正使用ガイド²⁾ の情報を参照し作成)

外国人集団 (N=97) /日本人集団 (N=9) の順で記載
(12ヵ月CCO)

骨髄抑制

  • 好中球減少症 (95.9%、 ≧Grade3 94.8%) / (88.9%、 ≧Grade3 88.9%)
  • 貧血 (81.4%、 ≧Grade3 68.0%) / (66.7%、 ≧Grade3 66.7%)
  • 血小板減少症 (79.4%、 ≧Grade3 59.8%) / (77.8%、 ≧Grade3 77.8%)
  • 白血球減少症 (61.9%、 ≧Grade3 60.8%) / (44.4%、 ≧Grade3 44.4%)
  • リンパ球減少症 (52.6%、 ≧Grade3 49.5%) /0
  • 発熱性好中球減少症 (10.3%、 ≧Grade3 9.3%) / (33.3%、 ≧Grade3 33.3%)

主な有害事象*

*CRS、 ICANSと重複する症状は除外²⁾
CRS:サイトカイン放出症候群
ICANS:免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群

免疫系障害

  • CRS (94.8%、 ≧Grade3 5.2%) / (88.9%)
  • 低γグロブリン血症 (11.3%) / (11.1%)

神経系障害

  • ICANS (16.5%、 ≧Grade3 2.1/%) /0
  • 脳症 (12.4%) /0
  • 頭痛 (6.2%) / (22.2%)

感染症および寄生虫症

  • 上気道感染 (7.2%) /0
  • 肺炎 (6.2%) /0
  • 敗血症 (5.2%) /0
  • CMV感染 (2.1%) /0
  • 播種性帯状疱疹 (1.0%) /0

一般・全身障害

  • 疲労 (30.9%) / (11.1%)
  • 食欲減退 (17.5%) / (11.1%)
  • 悪寒 (13.4%) /0
  • 発熱 (10.3%) /0
  • 浮腫 (7.2%) / (11.1%)

臨床検査

  • トランスアミナーゼ上昇 (25.8%) / (33.3%)
  • γ-GT増加 (11.3%) / (11.1%)
  • LDH増加 (5.2%) / (11.1%)
  • 低カリウム血症 (1.0%) / (11.1%)

胃腸障害

  • 悪心 (6.2%) / (22.2%)
  • 下痢 (4.1%) / (22.2%)
  • 嘔吐 (4.1%) / (22.2%)

その他

  • 呼吸困難 (11.3%) /0
  • 頻脈 (7.2%) /0
  • 低血圧 (7.2%) /0
  • 腎不全 (6.2%) /0
  • 不整脈 (3.1%) /0
  • 高血圧 (3.1%) / (11.1%)
  • 血栓症 (2.1%) /0
  • 腫瘍崩壊症候群 (1.0%) /0

特徴と注意点

作用機序

  • レンチウイルスベクターを用い、 キメラ抗原受容体 (Chimeric Antigen Receptor;CAR) をコードする遺伝子を患者自身のT細胞に導入したCAR‐T細胞を構成細胞とする細胞加工製品.
  • 標的抗原を発現したがん細胞をCAR‐T細胞が認識すると、 主要組織適合遺伝子複合体とは非依存的に導入T細胞の増殖、 活性化、 標的細胞に対する攻撃、 導入T細胞を持続させるシグナルが伝達され、 抗腫瘍効果を示すと考えられている.
  • 本剤はB細胞成熟抗原 (BCMA)を標的抗原とする単回投与製剤.

適応疾患

  • 再発又は難治性の多発性骨髄腫.

適格基準【MM】

下記の条件をいずれも満たす場合

  • BCMA抗原を標的としたキメラ抗原受容体発現T細胞輸注療法の治療歴がない.
  • 免疫調節薬、 プロテアソーム阻害剤及び抗CD38モノクローナル抗体製剤を含む3つ以上の前治療歴を有し、 かつ、 直近の前治療に対して病勢進行が認められた又は治療後に再発した.

白血球アフェレーシス

  • 十分量のTリンパ球を含む非動員末梢血単核球を採取し、 白血球アフェレーシス産物を凍結保存する.

リンパ球除去化学療法前の抗腫瘍療法 (ブリッジング療法)

  • 本剤の製造を待っている期間に患者の病態を安定させるため、 腫瘍量等に応じて抗腫瘍療法 (ブリッジング療法) を実施する.

MMY2001試験におけるブリッジング療法》

  • 1つ以上のブリッジング療法*を実施:外国人75.3%、 日本人100%.
*使用薬剤:ステロイド (デキサメタゾン等)、抗悪性腫瘍薬 (シクロホスファミド等)、プロテアソーム阻害薬 (ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ等)、抗CD38抗体薬 (ダラツムマブ)、免疫調整薬 (ポマリドミド、レナリドミド)

リンパ球除去化学療法【MM】

  • 本剤投与前にリンパ球数を減少させることで、 投与されたCAR‐T細胞の生着と恒常性の維持に基づく生体内の増殖を促進させる.
  • 本剤投与の5~7日前から、 下記のリンパ球除去化学療法を行う.
  • シクロホスファミド (無水物換算) として300mg/m²及びフルダラビンリン酸エステル*として30mg/m²を1日1回3日間点滴静注.
*腎機能障害時 (eGFR30~70mL/min/1.73m²):フルダラビンリン酸エステルを24mg/m²に減量
  • リンパ球除去化学療法終了後に本剤を投与.

投与時の注意事項

  • B型肝炎又はC型肝炎ウイルスキャリアの患者又は既往感染者は、 肝炎ウイルスが再活性化される可能性がある.
  • HIV感染者はウイルスが増加する可能性がある.
  • 本剤受領時及び投与前に、 静注用バッグに貼付されたラベルの記載が患者本人の情報と一致していることを確認する.
  • Infusion reaction軽減のため、 本剤投与の約30~60分前に抗ヒスタミン薬と解熱鎮痛薬を投与する.
  • 生命を脅かす緊急事態を除き、 副腎皮質ステロイド薬は使用しない.
  • サイトカイン放出症候群 (CRS) の緊急時に備え、 トシリズマブを2回投与分以上準備する.
  • 凍結した本剤静注用バッグが完全に融解するまで、 37±2℃の恒温水槽又は乾式解凍機器等で融解する.
  • 輸液バッグの融解は開始から完了までを15分以内に行い、 融解後は室温下で2.5時間以内に投与を完了する.
  • 本剤はカリウムを含有し、 最高濃度は45.8mEq/Lとなるため、 投与速度は7mL/minを超えない.
  • 白血球除去フィルターは使用せず、 インラインフィルターを介して投与する.
  • 投与前に生理食塩液にて点滴ルートのプライミングを行う. 全量投与後は、 バックプライミングにより静注用バッグを生理食塩液で洗浄し、 できるだけ多くの細胞を投与する.
  • ジメチルスルホキシド (DMSO) 及びデキストランを含有しており、 アナフィラキシー等の過敏症反応を誘発する可能性がある.
  • HIV-1を基に開発されたレンチウイルスベクターを使用しているためHIV核酸増幅検査で偽陽性になることがある.
  • 移植のために血液、 臓器、 組織及び細胞を影響しないよう指導する.

副作用と対策【サイトカイン放出症候群;CRS】

  • 活性化されたT細胞により放出されるサイトカインによって引き起こされる全身性炎症反応.
  • 体内でのCAR‐T細胞の増殖、 活性化及び腫瘍細胞の死滅の結果発現する.
  • 症状:高熱、 悪寒、 筋肉痛、 関節痛、 悪心、 嘔吐、 下痢、 発汗、 発疹、 食欲不振、 疲労、 頭痛、 低血圧、 呼吸困難、 呼吸不全、 肺水腫、 頻呼吸、 低酸素症、 凝固障害、 心不全、 不整脈、 腎不全、 肝障害、 播種性血管内凝固症候群、 毛細血管漏出症候群、 血球貪食症候群、 マクロファージ活性化症候群、 急性呼吸窮迫症候群等.
  • 本剤投与後2週間は入院管理下で綿密なモニタリングを行い、 少なくとも4週間は観察を継続する.
  • 重度CRSのリスク因子:ベースラインの高腫瘍量、 活動性感染等のコントロール不良な状態、 本剤投与後早期に発熱が発現した又は対症療法を行ったにもかかわらず24時間以上発熱が持続した²⁾ .
  • 腫瘍量が多い患者では、 CRSリスクを軽減するため、 本剤投与前にブリッジング療法を実施しベースライン時の腫瘍量を減少させることを推奨.
  • 発現までの期間 中央値 (範囲):外国人 7.0日 (1-12)、 日本人 7.5日 (4-11)²⁾ .
  • 回復までの期間 中央値 (範囲):外国人 4.0日 (1-14)、 日本人 5.0日 (2-6)²⁾ .

《サイトカイン放出症候群管理アルゴリズム》

MMY2001試験におけるCRS治療》

  • トシリズマブ投与:外国人70.1%、 日本人77.8%.
  • 副腎皮質ステロイド:外国人21.6%、 日本人33.3%.

副作用と対策【神経系事象】

  • 発現メカニズムは不明. 多くは一過性であり、 ほとんどが支持療法もしくは治療を要せず症状が消失.
  • 報告された神経系事象:免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群 (ICANS)、 パーキンソニズムの徴候や症状を伴う運動及び神経認知機能の有害事象、 ギラン・バレー症候群、 末梢性ニューロパチー及び脳神経麻痺等.
  • 症状:脳症、 せん妄、 不安、 浮動性めまい、 運動障害 (小字症、 振戦等)、 認知機能障害 (記憶喪失、 注意力障害等)、 人格変化 (表情減少、 感情の平板化等)、 意識障害、 頭痛、 錯乱、 激越、 痙攣発作、 無言症、 失語症等.
  • 神経系事象の多くはCRSに伴いみられるが、 CRSの回復後、 又はCRSを伴わずに発現するケースもある.
  • 本剤投与後2週間は入院管理下で綿密なモニタリングを行い、 少なくとも4週間は観察を継続する.
  • 本剤投与後少なくとも8週間は自動車の運転及び危険を伴う行動に従事しないよう指導する.
  • 神経系事象は、 外国人集団では20.6%に見られたが、 日本人集団では認められなかった (12ヵ月CCO)²⁾.
  • ICANS発現までの期間 中央値 (範囲):外国人 8.0日 (3-12)²⁾ .
  • ICANS回復までの期間 中央値 (範囲):外国人 4.0日 (1-12)²⁾ .

《神経系事象管理アルゴリズム》

MMY2001試験におけるICANS治療*》

*ICANS発現数/全数:外国人 16/97人、日本人 0/9人
  • トシリズマブ投与:外国人4.1%.
  • 副腎皮質ステロイド:外国人9.3%.
  • レベチラセタム:外国人2.1%.

副作用と対策【感染症】

  • 低γグロブリン血症又は無γグロブリン血症や重篤な遷延する血球減少に伴い、 細菌、 真菌、 ウイルス等による重度の感染症や発熱性好中球減少症が現れることがある.
  • 免疫抑制によるウイルス性疾患の再燃・悪化に注意 (HBV、 HCV、 HIV、 CMV、 EBV等).
  • 患者の易感染状態に応じた標準的な感染予防療法を実施する.

副作用と対策【低γグロブリン血症】

  • 正常な形質細胞の一部も枯渇し、 低γグロブリン血症を発症することがある.
  • CAR‐T細胞が患者の体内で持続する限り、 低γグロブリン血症が持続する可能性がある.
  • 定期的に免疫グロブリンを測定し、 必要に応じて免疫補充療法や抗菌薬・抗ウイルス薬の予防投与を実施する.

副作用と対策【血球減少・造血器疾患】

  • 本剤投与後28日目までに回復しないGrade3以上の好中球減少症、 白血球減少症、 リンパ球減少症、 血小板減少症及び貧血が現れることがある.
  • 血球減少には血液製剤、 骨髄増殖因子 (G-CSF等)、 抗菌薬等の投与を実施する.
  • G-CSF製剤はCRSを悪化させる可能性があるため、 CAR-T投与後3週間以上経過、 又はCRSが発現している場合はCRSが回復するまでG-CSF製剤の投与は推奨されない³⁾ .

副作用と対策【二次発がん】

  • レンチウイルスベクターによる遺伝子挿入をうけたT細胞によって、 細胞増殖を制御する重要な遺伝子に影響が及ぼされ、 二次発がんを引き起こす可能性あり. 投与後も長期間の経過観察が必要.
  • MMY2001試験では、 外国人10.3% (10/97人)、 日本人0% (0/9人) に二次発がんが認められた²⁾ .
内訳:骨髄異形成症候群 6例、急性骨髄性白血病 3例、基底細胞癌 2例、扁平上皮癌、皮膚扁平上皮癌、前立腺癌 各1例

関連する臨床試験の結果

CARTITUDE-1 (MMY2001) 試験¹⁾

概要

  • 単群非盲検第1b/2相試験
  • 対象:前治療歴の多い再発・難治性のMM患者97例
  • Cilta-cel (CAR発現生T細胞として0.75×10⁶ 個/kg) を単回投与
  • 主要評価項目:第1b相は安全性と推奨用量、 第2相は全奏功率
  • 副次評価項目:奏効期間、 無増悪生存期間
PFS:無増悪生存期間 OS:全生存期間 CR:完全奏効  sCR:厳格な完全奏効

結果

  • 追跡期間中央値:12.4ヵ月
  • 全奏効率:97% (95%CI 91.2-99.4%)
  • sCR率:67%
  • 奏効期間中央値:未到達 (95%CI 15.9ヵ月-推定不能)
  • PFS中央値:未到達 (95%CI 16.8ヵ月-推定不能)
  • 12ヵ月PFS:77% (95%CI 66.0-84.3%)
  • 12ヵ月OS:89% (95%CI 80.2-93.5%)
  • 血液学的有害事象は一般的であり、 Grade3以上は好中球減少症95%、 貧血68%、 白血球減少症61%、 血小板減少60%、 リンパ球減少50%であった.
  • CRSは95% (≧Grade3 4%)、 神経毒性は21% (≧Grade3 9%) に発生した.
  • CRSは、 Grade5と血球貪食性リンパ組織球症の1人を除いて回復した.
  • 本試験では14名の死亡例があり、 治療関連有害事象が6名、 疾患進行が5名、 治療と無関係な有害事象が3名であった.
  • Cilta-cel単回投与は、 重度の前治療を受けたMM患者において、 管理可能な安全性プロファイルで早期かつ深く、 持続的な奏効が確認された.

CARTITUDE-1試験 長期追跡調査⁴⁾

概要

  • 追跡期間中央値27.7ヵ月時点での調査結果

結果

  • 全奏効率:97.9% (95%CI 92.7-99.7%)
  • sCR到達率:82.5% (95%CI 73.4-89.4%)
  • PFS及びOSの中央値は未到達.
  • 27ヵ月PFS:54.9% (95%CI 44.0-64.6%)
  • 27ヵ月OS: 70.4% (95%CI 60.1-78.6%)
  • 全奏効率はすべてのサブグループで高かった (95.1-100%).
  • 細胞遺伝学的高リスク、 ISS分類ステージⅢ、 高腫瘍量、 または形質細胞腫を有する患者では奏効期間、 PFS、 OSが短かった.
  • CRSは前回の報告以降に新たな発生は無く、 パーキンソニズムが1例発生したのみであった (本剤投与後914日目) .
  • Cilta-cel治療を受けた患者は、 標準的サブグループと高リスクサブグループの両方で深く持続的な奏功を維持した.
  • Cilta-celのリスク/ベネフィットプロファイルは、 より長い追跡期間でも良好に保たれた.

参考文献

  1. Lancet. 2021 Jul 24;398(10297):314-324.
  2. カービクティⓇ点滴静注 適正使用ガイド
  3. Int J Cancer. 2021 Mar 1;148(5):1192-1196. 
  4. J Clin Oncol. 2022 Jun 4;JCO2200842.

最終更新:2023年2月9日
監修医師:HOKUTO編集部医師
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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投与量コース投与日
0.5~1.0 ×10⁶ 個/kg 〈最大許容量1.0×10⁸ 個〉1Day1

前投薬

Infusion reaction軽減のため、 投与30~60分前に抗ヒスタミン薬、 解熱鎮痛薬を投与.

その他

細胞採取から本剤投与に至るまでの手順は、 製造販売業者が提供するマニュアル等を参照すること.
通常の目標用量は、 CAR発現生T細胞として0.75×10⁶ 個/kg〈MMY2001試験〉.
リンパ球除去化学療法終了後に本剤を投与.
サイトカイン放出症候群の緊急時に備えて、 トシリズマブの在庫を確保する.
輸液バッグの融解は開始から完了までを15分以内に行い、 融解後は室温下で2.5時間以内に投与を完了する.
投与速度は7mL/minを超えないこと.

概要

本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

薬剤情報

*適正使用ガイドは 「ヤンセンファーマ株式会社」 の外部サイトへ遷移します.

主な有害事象

CARTITUDE-1 (MMY2001) 試験¹⁾ より引用 (適正使用ガイド²⁾ の情報を参照し作成)

外国人集団 (N=97) /日本人集団 (N=9) の順で記載
(12ヵ月CCO)

骨髄抑制

  • 好中球減少症 (95.9%、 ≧Grade3 94.8%) / (88.9%、 ≧Grade3 88.9%)
  • 貧血 (81.4%、 ≧Grade3 68.0%) / (66.7%、 ≧Grade3 66.7%)
  • 血小板減少症 (79.4%、 ≧Grade3 59.8%) / (77.8%、 ≧Grade3 77.8%)
  • 白血球減少症 (61.9%、 ≧Grade3 60.8%) / (44.4%、 ≧Grade3 44.4%)
  • リンパ球減少症 (52.6%、 ≧Grade3 49.5%) /0
  • 発熱性好中球減少症 (10.3%、 ≧Grade3 9.3%) / (33.3%、 ≧Grade3 33.3%)

主な有害事象*

*CRS、 ICANSと重複する症状は除外²⁾
CRS:サイトカイン放出症候群
ICANS:免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群

免疫系障害

  • CRS (94.8%、 ≧Grade3 5.2%) / (88.9%)
  • 低γグロブリン血症 (11.3%) / (11.1%)

神経系障害

  • ICANS (16.5%、 ≧Grade3 2.1/%) /0
  • 脳症 (12.4%) /0
  • 頭痛 (6.2%) / (22.2%)

感染症および寄生虫症

  • 上気道感染 (7.2%) /0
  • 肺炎 (6.2%) /0
  • 敗血症 (5.2%) /0
  • CMV感染 (2.1%) /0
  • 播種性帯状疱疹 (1.0%) /0

一般・全身障害

  • 疲労 (30.9%) / (11.1%)
  • 食欲減退 (17.5%) / (11.1%)
  • 悪寒 (13.4%) /0
  • 発熱 (10.3%) /0
  • 浮腫 (7.2%) / (11.1%)

臨床検査

  • トランスアミナーゼ上昇 (25.8%) / (33.3%)
  • γ-GT増加 (11.3%) / (11.1%)
  • LDH増加 (5.2%) / (11.1%)
  • 低カリウム血症 (1.0%) / (11.1%)

胃腸障害

  • 悪心 (6.2%) / (22.2%)
  • 下痢 (4.1%) / (22.2%)
  • 嘔吐 (4.1%) / (22.2%)

その他

  • 呼吸困難 (11.3%) /0
  • 頻脈 (7.2%) /0
  • 低血圧 (7.2%) /0
  • 腎不全 (6.2%) /0
  • 不整脈 (3.1%) /0
  • 高血圧 (3.1%) / (11.1%)
  • 血栓症 (2.1%) /0
  • 腫瘍崩壊症候群 (1.0%) /0

特徴と注意点

作用機序

  • レンチウイルスベクターを用い、 キメラ抗原受容体 (Chimeric Antigen Receptor;CAR) をコードする遺伝子を患者自身のT細胞に導入したCAR‐T細胞を構成細胞とする細胞加工製品.
  • 標的抗原を発現したがん細胞をCAR‐T細胞が認識すると、 主要組織適合遺伝子複合体とは非依存的に導入T細胞の増殖、 活性化、 標的細胞に対する攻撃、 導入T細胞を持続させるシグナルが伝達され、 抗腫瘍効果を示すと考えられている.
  • 本剤はB細胞成熟抗原 (BCMA)を標的抗原とする単回投与製剤.

適応疾患

  • 再発又は難治性の多発性骨髄腫.

適格基準【MM】

下記の条件をいずれも満たす場合

  • BCMA抗原を標的としたキメラ抗原受容体発現T細胞輸注療法の治療歴がない.
  • 免疫調節薬、 プロテアソーム阻害剤及び抗CD38モノクローナル抗体製剤を含む3つ以上の前治療歴を有し、 かつ、 直近の前治療に対して病勢進行が認められた又は治療後に再発した.

白血球アフェレーシス

  • 十分量のTリンパ球を含む非動員末梢血単核球を採取し、 白血球アフェレーシス産物を凍結保存する.

リンパ球除去化学療法前の抗腫瘍療法 (ブリッジング療法)

  • 本剤の製造を待っている期間に患者の病態を安定させるため、 腫瘍量等に応じて抗腫瘍療法 (ブリッジング療法) を実施する.

MMY2001試験におけるブリッジング療法》

  • 1つ以上のブリッジング療法*を実施:外国人75.3%、 日本人100%.
*使用薬剤:ステロイド (デキサメタゾン等)、抗悪性腫瘍薬 (シクロホスファミド等)、プロテアソーム阻害薬 (ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ等)、抗CD38抗体薬 (ダラツムマブ)、免疫調整薬 (ポマリドミド、レナリドミド)

リンパ球除去化学療法【MM】

  • 本剤投与前にリンパ球数を減少させることで、 投与されたCAR‐T細胞の生着と恒常性の維持に基づく生体内の増殖を促進させる.
  • 本剤投与の5~7日前から、 下記のリンパ球除去化学療法を行う.
  • シクロホスファミド (無水物換算) として300mg/m²及びフルダラビンリン酸エステル*として30mg/m²を1日1回3日間点滴静注.
*腎機能障害時 (eGFR30~70mL/min/1.73m²):フルダラビンリン酸エステルを24mg/m²に減量
  • リンパ球除去化学療法終了後に本剤を投与.

投与時の注意事項

  • B型肝炎又はC型肝炎ウイルスキャリアの患者又は既往感染者は、 肝炎ウイルスが再活性化される可能性がある.
  • HIV感染者はウイルスが増加する可能性がある.
  • 本剤受領時及び投与前に、 静注用バッグに貼付されたラベルの記載が患者本人の情報と一致していることを確認する.
  • Infusion reaction軽減のため、 本剤投与の約30~60分前に抗ヒスタミン薬と解熱鎮痛薬を投与する.
  • 生命を脅かす緊急事態を除き、 副腎皮質ステロイド薬は使用しない.
  • サイトカイン放出症候群 (CRS) の緊急時に備え、 トシリズマブを2回投与分以上準備する.
  • 凍結した本剤静注用バッグが完全に融解するまで、 37±2℃の恒温水槽又は乾式解凍機器等で融解する.
  • 輸液バッグの融解は開始から完了までを15分以内に行い、 融解後は室温下で2.5時間以内に投与を完了する.
  • 本剤はカリウムを含有し、 最高濃度は45.8mEq/Lとなるため、 投与速度は7mL/minを超えない.
  • 白血球除去フィルターは使用せず、 インラインフィルターを介して投与する.
  • 投与前に生理食塩液にて点滴ルートのプライミングを行う. 全量投与後は、 バックプライミングにより静注用バッグを生理食塩液で洗浄し、 できるだけ多くの細胞を投与する.
  • ジメチルスルホキシド (DMSO) 及びデキストランを含有しており、 アナフィラキシー等の過敏症反応を誘発する可能性がある.
  • HIV-1を基に開発されたレンチウイルスベクターを使用しているためHIV核酸増幅検査で偽陽性になることがある.
  • 移植のために血液、 臓器、 組織及び細胞を影響しないよう指導する.

副作用と対策【サイトカイン放出症候群;CRS】

  • 活性化されたT細胞により放出されるサイトカインによって引き起こされる全身性炎症反応.
  • 体内でのCAR‐T細胞の増殖、 活性化及び腫瘍細胞の死滅の結果発現する.
  • 症状:高熱、 悪寒、 筋肉痛、 関節痛、 悪心、 嘔吐、 下痢、 発汗、 発疹、 食欲不振、 疲労、 頭痛、 低血圧、 呼吸困難、 呼吸不全、 肺水腫、 頻呼吸、 低酸素症、 凝固障害、 心不全、 不整脈、 腎不全、 肝障害、 播種性血管内凝固症候群、 毛細血管漏出症候群、 血球貪食症候群、 マクロファージ活性化症候群、 急性呼吸窮迫症候群等.
  • 本剤投与後2週間は入院管理下で綿密なモニタリングを行い、 少なくとも4週間は観察を継続する.
  • 重度CRSのリスク因子:ベースラインの高腫瘍量、 活動性感染等のコントロール不良な状態、 本剤投与後早期に発熱が発現した又は対症療法を行ったにもかかわらず24時間以上発熱が持続した²⁾ .
  • 腫瘍量が多い患者では、 CRSリスクを軽減するため、 本剤投与前にブリッジング療法を実施しベースライン時の腫瘍量を減少させることを推奨.
  • 発現までの期間 中央値 (範囲):外国人 7.0日 (1-12)、 日本人 7.5日 (4-11)²⁾ .
  • 回復までの期間 中央値 (範囲):外国人 4.0日 (1-14)、 日本人 5.0日 (2-6)²⁾ .

《サイトカイン放出症候群管理アルゴリズム》

MMY2001試験におけるCRS治療》

  • トシリズマブ投与:外国人70.1%、 日本人77.8%.
  • 副腎皮質ステロイド:外国人21.6%、 日本人33.3%.

副作用と対策【神経系事象】

  • 発現メカニズムは不明. 多くは一過性であり、 ほとんどが支持療法もしくは治療を要せず症状が消失.
  • 報告された神経系事象:免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群 (ICANS)、 パーキンソニズムの徴候や症状を伴う運動及び神経認知機能の有害事象、 ギラン・バレー症候群、 末梢性ニューロパチー及び脳神経麻痺等.
  • 症状:脳症、 せん妄、 不安、 浮動性めまい、 運動障害 (小字症、 振戦等)、 認知機能障害 (記憶喪失、 注意力障害等)、 人格変化 (表情減少、 感情の平板化等)、 意識障害、 頭痛、 錯乱、 激越、 痙攣発作、 無言症、 失語症等.
  • 神経系事象の多くはCRSに伴いみられるが、 CRSの回復後、 又はCRSを伴わずに発現するケースもある.
  • 本剤投与後2週間は入院管理下で綿密なモニタリングを行い、 少なくとも4週間は観察を継続する.
  • 本剤投与後少なくとも8週間は自動車の運転及び危険を伴う行動に従事しないよう指導する.
  • 神経系事象は、 外国人集団では20.6%に見られたが、 日本人集団では認められなかった (12ヵ月CCO)²⁾.
  • ICANS発現までの期間 中央値 (範囲):外国人 8.0日 (3-12)²⁾ .
  • ICANS回復までの期間 中央値 (範囲):外国人 4.0日 (1-12)²⁾ .

《神経系事象管理アルゴリズム》

MMY2001試験におけるICANS治療*》

*ICANS発現数/全数:外国人 16/97人、日本人 0/9人
  • トシリズマブ投与:外国人4.1%.
  • 副腎皮質ステロイド:外国人9.3%.
  • レベチラセタム:外国人2.1%.

副作用と対策【感染症】

  • 低γグロブリン血症又は無γグロブリン血症や重篤な遷延する血球減少に伴い、 細菌、 真菌、 ウイルス等による重度の感染症や発熱性好中球減少症が現れることがある.
  • 免疫抑制によるウイルス性疾患の再燃・悪化に注意 (HBV、 HCV、 HIV、 CMV、 EBV等).
  • 患者の易感染状態に応じた標準的な感染予防療法を実施する.

副作用と対策【低γグロブリン血症】

  • 正常な形質細胞の一部も枯渇し、 低γグロブリン血症を発症することがある.
  • CAR‐T細胞が患者の体内で持続する限り、 低γグロブリン血症が持続する可能性がある.
  • 定期的に免疫グロブリンを測定し、 必要に応じて免疫補充療法や抗菌薬・抗ウイルス薬の予防投与を実施する.

副作用と対策【血球減少・造血器疾患】

  • 本剤投与後28日目までに回復しないGrade3以上の好中球減少症、 白血球減少症、 リンパ球減少症、 血小板減少症及び貧血が現れることがある.
  • 血球減少には血液製剤、 骨髄増殖因子 (G-CSF等)、 抗菌薬等の投与を実施する.
  • G-CSF製剤はCRSを悪化させる可能性があるため、 CAR-T投与後3週間以上経過、 又はCRSが発現している場合はCRSが回復するまでG-CSF製剤の投与は推奨されない³⁾ .

副作用と対策【二次発がん】

  • レンチウイルスベクターによる遺伝子挿入をうけたT細胞によって、 細胞増殖を制御する重要な遺伝子に影響が及ぼされ、 二次発がんを引き起こす可能性あり. 投与後も長期間の経過観察が必要.
  • MMY2001試験では、 外国人10.3% (10/97人)、 日本人0% (0/9人) に二次発がんが認められた²⁾ .
内訳:骨髄異形成症候群 6例、急性骨髄性白血病 3例、基底細胞癌 2例、扁平上皮癌、皮膚扁平上皮癌、前立腺癌 各1例

関連する臨床試験の結果

CARTITUDE-1 (MMY2001) 試験¹⁾

概要

  • 単群非盲検第1b/2相試験
  • 対象:前治療歴の多い再発・難治性のMM患者97例
  • Cilta-cel (CAR発現生T細胞として0.75×10⁶ 個/kg) を単回投与
  • 主要評価項目:第1b相は安全性と推奨用量、 第2相は全奏功率
  • 副次評価項目:奏効期間、 無増悪生存期間
PFS:無増悪生存期間 OS:全生存期間 CR:完全奏効  sCR:厳格な完全奏効

結果

  • 追跡期間中央値:12.4ヵ月
  • 全奏効率:97% (95%CI 91.2-99.4%)
  • sCR率:67%
  • 奏効期間中央値:未到達 (95%CI 15.9ヵ月-推定不能)
  • PFS中央値:未到達 (95%CI 16.8ヵ月-推定不能)
  • 12ヵ月PFS:77% (95%CI 66.0-84.3%)
  • 12ヵ月OS:89% (95%CI 80.2-93.5%)
  • 血液学的有害事象は一般的であり、 Grade3以上は好中球減少症95%、 貧血68%、 白血球減少症61%、 血小板減少60%、 リンパ球減少50%であった.
  • CRSは95% (≧Grade3 4%)、 神経毒性は21% (≧Grade3 9%) に発生した.
  • CRSは、 Grade5と血球貪食性リンパ組織球症の1人を除いて回復した.
  • 本試験では14名の死亡例があり、 治療関連有害事象が6名、 疾患進行が5名、 治療と無関係な有害事象が3名であった.
  • Cilta-cel単回投与は、 重度の前治療を受けたMM患者において、 管理可能な安全性プロファイルで早期かつ深く、 持続的な奏効が確認された.

CARTITUDE-1試験 長期追跡調査⁴⁾

概要

  • 追跡期間中央値27.7ヵ月時点での調査結果

結果

  • 全奏効率:97.9% (95%CI 92.7-99.7%)
  • sCR到達率:82.5% (95%CI 73.4-89.4%)
  • PFS及びOSの中央値は未到達.
  • 27ヵ月PFS:54.9% (95%CI 44.0-64.6%)
  • 27ヵ月OS: 70.4% (95%CI 60.1-78.6%)
  • 全奏効率はすべてのサブグループで高かった (95.1-100%).
  • 細胞遺伝学的高リスク、 ISS分類ステージⅢ、 高腫瘍量、 または形質細胞腫を有する患者では奏効期間、 PFS、 OSが短かった.
  • CRSは前回の報告以降に新たな発生は無く、 パーキンソニズムが1例発生したのみであった (本剤投与後914日目) .
  • Cilta-cel治療を受けた患者は、 標準的サブグループと高リスクサブグループの両方で深く持続的な奏功を維持した.
  • Cilta-celのリスク/ベネフィットプロファイルは、 より長い追跡期間でも良好に保たれた.

参考文献

  1. Lancet. 2021 Jul 24;398(10297):314-324.
  2. カービクティⓇ点滴静注 適正使用ガイド
  3. Int J Cancer. 2021 Mar 1;148(5):1192-1196. 
  4. J Clin Oncol. 2022 Jun 4;JCO2200842.

最終更新:2023年2月9日
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