アカラブルチニブ (カルケンス®) + ベンダムスチン + リツキシマブ
投与量 | コース | 投与日 |
---|---|---|
100mg 1日2回 経口 | 1~ | Day 1~ |
投与量 | コース | 投与日 |
---|---|---|
90mg/m² | 1~6 | Day 1, 2 |
投与量 | コース | 投与日 |
---|---|---|
375mg/m² | 1~6 | Day 1 |
375mg/m² | 8~30の2サイクルごと (偶数サイクル) | Day 1 |
リツキシマブ投与30分前に、抗ヒスタミン薬・解熱鎮痛薬を前投与。副腎皮質ホルモン薬を併用しない場合は、投与前の前投与を考慮。 |
BR療法は6サイクルで終了し、奏効例にはサイクル8以降の偶数サイクルにリツキシマブ維持療法を施行する。 |
- トレアキシン® (添付文書)
- リツキサン® (添付文書)
【1コース】28日間
【催吐性】中等度
【FN発症】低リスク*
アカラブルチニブ錠100mgを1日2回経口、 ベンダムスチン90mg/m²をサイクル1・2日目に静注、 リツキシマブ375mg/m²をサイクル1日目に単回静注し、 28日ごとに繰り返す。
奏効例では、 BR療法6サイクル終了後に56日あけて (サイクル8より) リツキシマブ維持療法を開始し、 2年間にわたり56日間隔で計12回投与する。 アカラブルチニブは、 病勢進行または許容不能な毒性が出現するまで継続。
J Clin Oncol. 2025;43(20):2276-2284.
65歳以上の未治療MCL患者598例を対象とした、 国際共同・二重盲検の第III相無作為化比較試験。 患者はアカラブルチニブ+BR (ベンダムスチン+リツキシマブ) 群またはプラセボ+BR群に1:1の比率で割り付けられ、 主要評価項目はPFSとされた。
【有効性】アカラブルチニブ群 (vs プラセボ群)
- PFS中央値 : 66.4ヵ月 (vs 49.6ヵ月)
- 全奏効率 : 91.0% (vs 88.0%)
- OS中央値 : 未到達 (vs 未到達)
【安全性】主な有害事象 : 全Grade (Grade≧3)
- 悪心 42.8% (1.3%)
- 好中球減少 40.1% (35.4%)
- 下痢 37.4% (3.0%)
- COVID-19 30.6% (8.8%)
- 頭痛 30.3% (1.3%)
- 疲労 29.3% (2.7%)
- 発熱 29.0% (2.4%)
- 咳嗽 26.9% (0%)
- 嘔吐 25.6% (0.7%)
- 便秘 24.6% (1.0%)
- 貧血 22.9% (9.4%)
- 発疹 20.5% (1.3%)
- Infusion reaction 14.5% (0.7%)
- 感染症 78.1% (41.1%)
- 心房細動/粗動 6.7% (4.0%)
- 高血圧 12.5% (5.7%)
ECHO試験³⁾の主な適格基準 :
- 65歳以上
- ECOG PS 0–2
- 好中球数≧1,000/μL (骨髄浸潤例は≧750/μL)
- 血小板数≧7.5万/μL (骨髄浸潤例は≧5万/μL)
- 腎機能 : CrCl≧50mL/min
- 肝機能 : T-Bil≦1.5×ULN、 AST/ALT ≦2.5×ULN
リツキシマブの用量変更は行わない。一方、 アカラブルチニブおよびベンダムスチンは、 以下の基準に従って減量を行う。
アカラブルチニブ : 尿中未変化体の排泄率は1%未満であり、 腎障害患者における用量調整は不要と考えられる。
ベンダムスチン : 尿中未変化体の排泄率は1.6%と低く、 腎障害患者での用量調整は不要と考えられるが、 副作用の増強に注意が必要である。 一方、 米国の添付文書ではCrCl<30mL/minの薬物動態が検討されておらず、 投与は避けるよう注意喚起されている。
リツキシマブ : 抗体薬は多様な細胞でのエンドサイトーシスとリソソーム分解により消失するため、 一般に減量は不要と考えられる。
アカラブルチニブ : 以下の有害事象発現時は休薬し、 再開基準到達後に同量で再開する。
ただし、 再発時には以下の対応を行う :
2回目 : 100mg 1日1回で再開
3回目 (非血液毒性又は重大な出血を伴う血小板減少) : 治療中止
3回目 (その他) : 100mg 1日1回で再開
4回目 (その他) : 治療中止
ベンダムスチン : 以下の有害事象発現時は休薬し、 再開基準到達後に1段階減量で再開する。
🧑⚕️ECHO試験は65歳以上を対象としているため、 カルケンス®+BR療法は主に高齢患者に用いられます。 現時点では移植適応のある患者には自家移植が検討されます。 自家移植前のレジメン選択や移植回避の可能性は今後の課題です。 また、 カルケンス®は剤形ごとに適応が異なり、 カプセルは慢性リンパ性白血病のみ、 錠剤は慢性リンパ性白血病とMCLに適応となっているため注意が必要です。
アカラブルチニブは、 ブルトン型チロシンキナーゼ (BTK) を選択的に阻害する低分子化合物であり、 BTKの活性部位に存在するシステイン残基 (Cys481) と共有結合することで、 その酵素活性を不可逆的に阻害する。
アカラブルチニブ+BR療法は、 未治療MCLに対して適用される。 一方、 アカラブルチニブ単剤は、 再発または難治性の症例に対して適用される。
強力な化学療法の適応となる未治療MCL患者におけるアカラブルチニブの有効性・安全性は確立していない。
アカラブルチニブはCYP3A4に対する感度の高い基質薬であり、 中程度または強いCYP3A4阻害薬との併用により血中濃度が上昇し、 副作用が増強するおそれがある。 そのため、 これらの薬剤との併用は可能な限り避け、 代替薬への変更を検討する。 やむを得ず併用する場合には、 患者の状態を慎重に観察し、 副作用の発現に十分注意する。
出血 : 頭蓋内や消化管などで重篤な出血、 死亡例も報告されている。 抗凝固薬・抗血小板薬との併用は出血リスクを高めるため慎重に観察する。 手術・侵襲的処置の前後は少なくとも3日間の休薬を考慮。
骨髄抑制・感染症 : 貧血、 好中球・白血球・血小板減少、 肺炎、 日和見感染症、 B型肝炎ウイルス再活性化などが報告され、 死亡例もある。 血球減少の早期発見には定期的な血液検査を行い、 投与前には肝炎ウイルス等の感染有無を確認する。 リスクの高い患者には予防的処置を考慮し、 投与中は感染徴候に十分注意する。 B型肝炎ウイルスキャリアや既往感染者には、 肝機能とウイルスマーカーの定期的モニタリングを実施。
心毒性 : 心房細動・心房粗動などの重篤な不整脈や、 急性冠症候群を含む虚血性心疾患が報告されている。 早期発見のため、 投与後は定期的に心機能検査を実施。
腫瘍崩壊症候群 : 血清電解質や腎機能を定期的に確認し、 異常時は投与中止の上、 生理食塩液や高尿酸血症治療薬などで適切に対応。
間質性肺疾患 : 呼吸器症状や胸部X線所見をモニタリングし、 異常時は速やかに胸部CTを実施する。 必要に応じて専門医と連携し、 投与を中止の上、 ステロイド投与など適切に対応。
二次性悪性腫瘍 : 皮膚および皮膚以外に二次性悪性腫瘍が報告されている。 皮膚有棘細胞癌や基底細胞癌などの発現に留意し、 皮膚の状態を適宜観察。
- 出血
- 感染症
- 骨髄抑制
- 不整脈
- 虚血性心疾患
- 腫瘍崩壊症候群
- 間質性肺疾患
最終更新 : 2025年8月27日
執筆 : HOKUTO編集部 がん専門・指導薬剤師
監修医師 : 東海大学血液腫瘍内科 扇屋大輔
投与量 | コース | 投与日 |
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100mg 1日2回 経口 | 1~ | Day 1~ |
投与量 | コース | 投与日 |
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90mg/m² | 1~6 | Day 1, 2 |
投与量 | コース | 投与日 |
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375mg/m² | 1~6 | Day 1 |
375mg/m² | 8~30の2サイクルごと (偶数サイクル) | Day 1 |
リツキシマブ投与30分前に、抗ヒスタミン薬・解熱鎮痛薬を前投与。副腎皮質ホルモン薬を併用しない場合は、投与前の前投与を考慮。 |
BR療法は6サイクルで終了し、奏効例にはサイクル8以降の偶数サイクルにリツキシマブ維持療法を施行する。 |
- トレアキシン® (添付文書)
- リツキサン® (添付文書)
【1コース】28日間
【催吐性】中等度
【FN発症】低リスク*
アカラブルチニブ錠100mgを1日2回経口、 ベンダムスチン90mg/m²をサイクル1・2日目に静注、 リツキシマブ375mg/m²をサイクル1日目に単回静注し、 28日ごとに繰り返す。
奏効例では、 BR療法6サイクル終了後に56日あけて (サイクル8より) リツキシマブ維持療法を開始し、 2年間にわたり56日間隔で計12回投与する。 アカラブルチニブは、 病勢進行または許容不能な毒性が出現するまで継続。
J Clin Oncol. 2025;43(20):2276-2284.
65歳以上の未治療MCL患者598例を対象とした、 国際共同・二重盲検の第III相無作為化比較試験。 患者はアカラブルチニブ+BR (ベンダムスチン+リツキシマブ) 群またはプラセボ+BR群に1:1の比率で割り付けられ、 主要評価項目はPFSとされた。
【有効性】アカラブルチニブ群 (vs プラセボ群)
- PFS中央値 : 66.4ヵ月 (vs 49.6ヵ月)
- 全奏効率 : 91.0% (vs 88.0%)
- OS中央値 : 未到達 (vs 未到達)
【安全性】主な有害事象 : 全Grade (Grade≧3)
- 悪心 42.8% (1.3%)
- 好中球減少 40.1% (35.4%)
- 下痢 37.4% (3.0%)
- COVID-19 30.6% (8.8%)
- 頭痛 30.3% (1.3%)
- 疲労 29.3% (2.7%)
- 発熱 29.0% (2.4%)
- 咳嗽 26.9% (0%)
- 嘔吐 25.6% (0.7%)
- 便秘 24.6% (1.0%)
- 貧血 22.9% (9.4%)
- 発疹 20.5% (1.3%)
- Infusion reaction 14.5% (0.7%)
- 感染症 78.1% (41.1%)
- 心房細動/粗動 6.7% (4.0%)
- 高血圧 12.5% (5.7%)
ECHO試験³⁾の主な適格基準 :
- 65歳以上
- ECOG PS 0–2
- 好中球数≧1,000/μL (骨髄浸潤例は≧750/μL)
- 血小板数≧7.5万/μL (骨髄浸潤例は≧5万/μL)
- 腎機能 : CrCl≧50mL/min
- 肝機能 : T-Bil≦1.5×ULN、 AST/ALT ≦2.5×ULN
リツキシマブの用量変更は行わない。一方、 アカラブルチニブおよびベンダムスチンは、 以下の基準に従って減量を行う。
アカラブルチニブ : 尿中未変化体の排泄率は1%未満であり、 腎障害患者における用量調整は不要と考えられる。
ベンダムスチン : 尿中未変化体の排泄率は1.6%と低く、 腎障害患者での用量調整は不要と考えられるが、 副作用の増強に注意が必要である。 一方、 米国の添付文書ではCrCl<30mL/minの薬物動態が検討されておらず、 投与は避けるよう注意喚起されている。
リツキシマブ : 抗体薬は多様な細胞でのエンドサイトーシスとリソソーム分解により消失するため、 一般に減量は不要と考えられる。
アカラブルチニブ : 以下の有害事象発現時は休薬し、 再開基準到達後に同量で再開する。
ただし、 再発時には以下の対応を行う :
2回目 : 100mg 1日1回で再開
3回目 (非血液毒性又は重大な出血を伴う血小板減少) : 治療中止
3回目 (その他) : 100mg 1日1回で再開
4回目 (その他) : 治療中止
ベンダムスチン : 以下の有害事象発現時は休薬し、 再開基準到達後に1段階減量で再開する。
🧑⚕️ECHO試験は65歳以上を対象としているため、 カルケンス®+BR療法は主に高齢患者に用いられます。 現時点では移植適応のある患者には自家移植が検討されます。 自家移植前のレジメン選択や移植回避の可能性は今後の課題です。 また、 カルケンス®は剤形ごとに適応が異なり、 カプセルは慢性リンパ性白血病のみ、 錠剤は慢性リンパ性白血病とMCLに適応となっているため注意が必要です。
アカラブルチニブは、 ブルトン型チロシンキナーゼ (BTK) を選択的に阻害する低分子化合物であり、 BTKの活性部位に存在するシステイン残基 (Cys481) と共有結合することで、 その酵素活性を不可逆的に阻害する。
アカラブルチニブ+BR療法は、 未治療MCLに対して適用される。 一方、 アカラブルチニブ単剤は、 再発または難治性の症例に対して適用される。
強力な化学療法の適応となる未治療MCL患者におけるアカラブルチニブの有効性・安全性は確立していない。
アカラブルチニブはCYP3A4に対する感度の高い基質薬であり、 中程度または強いCYP3A4阻害薬との併用により血中濃度が上昇し、 副作用が増強するおそれがある。 そのため、 これらの薬剤との併用は可能な限り避け、 代替薬への変更を検討する。 やむを得ず併用する場合には、 患者の状態を慎重に観察し、 副作用の発現に十分注意する。
出血 : 頭蓋内や消化管などで重篤な出血、 死亡例も報告されている。 抗凝固薬・抗血小板薬との併用は出血リスクを高めるため慎重に観察する。 手術・侵襲的処置の前後は少なくとも3日間の休薬を考慮。
骨髄抑制・感染症 : 貧血、 好中球・白血球・血小板減少、 肺炎、 日和見感染症、 B型肝炎ウイルス再活性化などが報告され、 死亡例もある。 血球減少の早期発見には定期的な血液検査を行い、 投与前には肝炎ウイルス等の感染有無を確認する。 リスクの高い患者には予防的処置を考慮し、 投与中は感染徴候に十分注意する。 B型肝炎ウイルスキャリアや既往感染者には、 肝機能とウイルスマーカーの定期的モニタリングを実施。
心毒性 : 心房細動・心房粗動などの重篤な不整脈や、 急性冠症候群を含む虚血性心疾患が報告されている。 早期発見のため、 投与後は定期的に心機能検査を実施。
腫瘍崩壊症候群 : 血清電解質や腎機能を定期的に確認し、 異常時は投与中止の上、 生理食塩液や高尿酸血症治療薬などで適切に対応。
間質性肺疾患 : 呼吸器症状や胸部X線所見をモニタリングし、 異常時は速やかに胸部CTを実施する。 必要に応じて専門医と連携し、 投与を中止の上、 ステロイド投与など適切に対応。
二次性悪性腫瘍 : 皮膚および皮膚以外に二次性悪性腫瘍が報告されている。 皮膚有棘細胞癌や基底細胞癌などの発現に留意し、 皮膚の状態を適宜観察。
- 出血
- 感染症
- 骨髄抑制
- 不整脈
- 虚血性心疾患
- 腫瘍崩壊症候群
- 間質性肺疾患
最終更新 : 2025年8月27日
執筆 : HOKUTO編集部 がん専門・指導薬剤師
監修医師 : 東海大学血液腫瘍内科 扇屋大輔
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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