治療スケジュール
概要
監修医師

Acalabrutinib:アカラブルチニブ(カルケンス®)

投与量コース投与日
100mg 1日2回 経口1~Day 1~

Bendamustine:ベンダムスチン(トレアキシン®)

投与量コース投与日
90mg/m²1~6Day 1, 2

Rituximab:リツキシマブ(リツキサン®)

投与量コース投与日
375mg/m²1~6Day 1
375mg/m²8~30の2サイクルごと (偶数サイクル)Day 1

前投薬

リツキシマブ投与30分前に、抗ヒスタミン薬・解熱鎮痛薬を前投与。副腎皮質ホルモン薬を併用しない場合は、投与前の前投与を考慮。

その他

BR療法は6サイクルで終了し、奏効例にはサイクル8以降の偶数サイクルにリツキシマブ維持療法を施行する。
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カルケンス®錠は従来CLL/SLLに適応を有していたが、 2025年8月25日に 「マントル細胞リンパ腫 (MCL)」 が追加承認された。
本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません。 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください。

薬剤情報

- カルケンス®錠 (添付文書¹⁾/適正使用情報²*⁾)

 *アストラゼネカ株式会社の外部サイトへ遷移します。
 カルケンス®カプセルはMCLの適応を有さないため注意

- トレアキシン® (添付文書)

- リツキサン® (添付文書)

投与スケジュール

【1コース】28日間
【催吐性】中等度
【FN発症】低リスク*
*ECHO試験のFN発生率5.4%²⁾より編集部が分類
ECHO試験³⁾を基に編集部作成

アカラブルチニブ100mgを1日2回経口、 ベンダムスチン90mg/m²をサイクル1・2日目に静注、 リツキシマブ375mg/m²をサイクル1日目に単回静注し、 28日ごとに繰り返す。

*カルケンス®カプセルはMCLの適応を有さないため注意
奏効例では、 BR療法6サイクル終了後に56日あけて (サイクル8より) リツキシマブ維持療法を開始し、 2年間にわたり56日間隔で計12回投与する。 アカラブルチニブは、 病勢進行または許容不能な毒性が出現するまで継続。 

Key Data|臨床試験結果

📊 ECHO試験

J Clin Oncol. 2025;43(20):2276-2284.

65歳以上の未治療MCL患者598例を対象とした、 国際共同・二重盲検の第III相無作為化比較試験。 患者はアカラブルチニブ+BR (ベンダムスチン+リツキシマブ) 群またはプラセボ+BR群に1:1の比率で割り付けられ、 主要評価項目はPFSとされた。 

【有効性】アカラブルチニブ群 (vs プラセボ群)

- PFS中央値 : 66.4ヵ月 (vs 49.6ヵ月)

  • HR 0.73 (95%CI 0.57–0.94、 p=0.02)

- 全奏効率 : 91.0% (vs 88.0%)

  • 完全奏効率 : 66.6% (vs 53.5%)
  • 奏効期間中央値 : 63.5ヵ月 (vs 53.8ヵ月)

- OS中央値 : 未到達 (vs 未到達)

  • HR 0.86 (95%CI 0.65–1.13、 p=0.27)

【安全性】主な有害事象 : 全Grade (Grade≧3)

- 悪心 42.8% (1.3%)

- 好中球減少 40.1% (35.4%)

- 下痢 37.4% (3.0%)

- COVID-19 30.6% (8.8%)

- 頭痛 30.3% (1.3%)

- 疲労 29.3% (2.7%)

- 発熱 29.0% (2.4%)

- 咳嗽 26.9% (0%)

- 嘔吐 25.6% (0.7%)

- 便秘 24.6% (1.0%)

- 貧血 22.9% (9.4%)

- 発疹 20.5% (1.3%)

- Infusion reaction 14.5% (0.7%)

- 感染症 78.1% (41.1%)

- 心房細動/粗動 6.7% (4.0%)

- 高血圧 12.5% (5.7%)

各プロトコル

適格基準

ECHO試験³⁾の主な適格基準 :

- 65歳以上

- ECOG PS 0–2

- 好中球数≧1,000/μL (骨髄浸潤例は≧750/μL)

- 血小板数≧7.5万/μL (骨髄浸潤例は≧5万/μL)

- 腎機能 : CrCl≧50mL/min

- 肝機能 : T-Bil≦1.5×ULN、 AST/ALT ≦2.5×ULN

主な除外基準 : 造血幹細胞移植予定、 中枢神経系病変、 重度の心疾患 (コントロール不良または症候性不整脈、 うっ血性心不全、 6か月以内の心筋梗塞)、 NYHAクラス3または4の心疾患、 QTc>480ms、 ワルファリンまたはCYP3A阻害薬/誘導薬併用中。

用量レベル

リツキシマブの用量変更は行わない。一方、 アカラブルチニブおよびベンダムスチンは、 以下の基準に従って減量を行う。

ECHO試験³⁾のプロトコルを基に編集部作成

腎障害患者に対する用量調整

アカラブルチニブ : 尿中未変化体の排泄率は1%未満であり、 腎障害患者における用量調整は不要と考えられる。

カルケンス®錠インタビューフォームを基に編集部が評価

ベンダムスチン : 尿中未変化体の排泄率は1.6%と低く、 腎障害患者での用量調整は不要と考えられるが、 副作用の増強に注意が必要である。 一方、 米国の添付文書ではCrCl<30mL/minの薬物動態が検討されておらず、 投与は避けるよう注意喚起されている。

トレアキシン®電子添文情報、 BENDAMUSTINE HYDROCHLORIDE INJECTION. HIGHLIGHTS OF PRESCRIBING INFORMATIONを基に編集部が評価

リツキシマブ : 抗体薬は多様な細胞でのエンドサイトーシスとリソソーム分解により消失するため、 一般に減量は不要と考えられる。

編集部の見解

有害事象発現時の減量・休薬・中止基準

以下、 ECHO試験³⁾のプロトコルと電子添文情報¹⁾を基に作成

アカラブルチニブ : 以下の有害事象発現時は休薬し、 再開基準到達後に同量で再開する。

ただし、 再発時には以下の対応を行う :

2回目 : 100mg 1日1回で再開

3回目 (非血液毒性又は重大な出血を伴う血小板減少) : 治療中止

3回目 (その他) : 100mg 1日1回で再開

4回目 (その他) : 治療中止


ベンダムスチン : 以下の有害事象発現時は休薬し、 再開基準到達後に1段階減量で再開する。

レジメンの特徴と注意点

🧑‍⚕️ECHO試験は65歳以上を対象としているため、 カルケンス®+BR療法は主に高齢患者に用いられます。 現時点では移植適応のある患者には自家移植が検討されます。 自家移植前のレジメン選択や移植回避の可能性は今後の課題です。 また、 カルケンス®は剤形ごとに適応が異なり、 カプセルは慢性リンパ性白血病のみ、 錠剤は慢性リンパ性白血病とMCLに適応となっているため注意が必要です。 
東海大学医学部血液腫瘍内科 扇屋大輔先生

作用機序の特徴

アカラブルチニブは、 ブルトン型チロシンキナーゼ (BTK) を選択的に阻害する低分子化合物であり、 BTKの活性部位に存在するシステイン残基 (Cys481) と共有結合することで、 その酵素活性を不可逆的に阻害する。

本レジメンの位置付け

アカラブルチニブ+BR療法は、 未治療MCLに対して適用される。 一方、 アカラブルチニブ単剤は、 再発または難治性の症例に対して適用される。

強力な化学療法の適応となる未治療MCL患者におけるアカラブルチニブの有効性・安全性は確立していない。 

CYP3A4阻害薬併用時の注意事項

アカラブルチニブはCYP3A4に対する感度の高い基質薬であり、 中程度または強いCYP3A4阻害薬との併用により血中濃度が上昇し、 副作用が増強するおそれがある。 そのため、 これらの薬剤との併用は可能な限り避け、 代替薬への変更を検討する。 やむを得ず併用する場合には、 患者の状態を慎重に観察し、 副作用の発現に十分注意する。

>> 中程度の・強いCYP3A4阻害薬を確認する

レジメン適用時の注意事項

出血 : 頭蓋内や消化管などで重篤な出血、 死亡例も報告されている。 抗凝固薬・抗血小板薬との併用は出血リスクを高めるため慎重に観察する。 手術・侵襲的処置の前後は少なくとも3日間の休薬を考慮。

骨髄抑制・感染症 : 貧血、 好中球・白血球・血小板減少、 肺炎、 日和見感染症、 B型肝炎ウイルス再活性化などが報告され、 死亡例もある。 血球減少の早期発見には定期的な血液検査を行い、 投与前には肝炎ウイルス等の感染有無を確認する。 リスクの高い患者には予防的処置を考慮し、 投与中は感染徴候に十分注意する。 B型肝炎ウイルスキャリアや既往感染者には、 肝機能とウイルスマーカーの定期的モニタリングを実施。

心毒性 : 心房細動・心房粗動などの重篤な不整脈や、 急性冠症候群を含む虚血性心疾患が報告されている。 早期発見のため、 投与後は定期的に心機能検査を実施。

腫瘍崩壊症候群 : 血清電解質や腎機能を定期的に確認し、 異常時は投与中止の上、 生理食塩液や高尿酸血症治療薬などで適切に対応。

間質性肺疾患 : 呼吸器症状や胸部X線所見をモニタリングし、 異常時は速やかに胸部CTを実施する。 必要に応じて専門医と連携し、 投与を中止の上、 ステロイド投与など適切に対応。

二次性悪性腫瘍 : 皮膚および皮膚以外に二次性悪性腫瘍が報告されている。 皮膚有棘細胞癌や基底細胞癌などの発現に留意し、 皮膚の状態を適宜観察。

RMP【重要な特定されたリスク】

カルケンス®錠 医薬品リスク管理計画書 (RMP)

- 出血

- 感染症

- 骨髄抑制

- 不整脈

- 虚血性心疾患

- 腫瘍崩壊症候群

- 間質性肺疾患

出典

  1. アストラゼネカ株式会社. カルケンス錠100mg 電子添文 2025年8月改訂 (第2版)
  2. アストラゼネカ株式会社. カルケンス錠100mg 適正使用ガイド 2025年8月作成
  3. J Clin Oncol. 2025;43(20):2276-2284.
最終更新 : 2025年8月27日
執筆 : HOKUTO編集部 がん専門・指導薬剤師
監修医師 : 東海大学血液腫瘍内科 扇屋大輔

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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投与量コース投与日
100mg 1日2回 経口1~Day 1~

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投与量コース投与日
90mg/m²1~6Day 1, 2

Rituximab:リツキシマブ(リツキサン®)

投与量コース投与日
375mg/m²1~6Day 1
375mg/m²8~30の2サイクルごと (偶数サイクル)Day 1

前投薬

リツキシマブ投与30分前に、抗ヒスタミン薬・解熱鎮痛薬を前投与。副腎皮質ホルモン薬を併用しない場合は、投与前の前投与を考慮。

その他

BR療法は6サイクルで終了し、奏効例にはサイクル8以降の偶数サイクルにリツキシマブ維持療法を施行する。

概要

カルケンス®錠は従来CLL/SLLに適応を有していたが、 2025年8月25日に 「マントル細胞リンパ腫 (MCL)」 が追加承認された。
本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません。 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください。

薬剤情報

- カルケンス®錠 (添付文書¹⁾/適正使用情報²*⁾)

 *アストラゼネカ株式会社の外部サイトへ遷移します。
 カルケンス®カプセルはMCLの適応を有さないため注意

- トレアキシン® (添付文書)

- リツキサン® (添付文書)

投与スケジュール

【1コース】28日間
【催吐性】中等度
【FN発症】低リスク*
*ECHO試験のFN発生率5.4%²⁾より編集部が分類
ECHO試験³⁾を基に編集部作成

アカラブルチニブ100mgを1日2回経口、 ベンダムスチン90mg/m²をサイクル1・2日目に静注、 リツキシマブ375mg/m²をサイクル1日目に単回静注し、 28日ごとに繰り返す。

*カルケンス®カプセルはMCLの適応を有さないため注意
奏効例では、 BR療法6サイクル終了後に56日あけて (サイクル8より) リツキシマブ維持療法を開始し、 2年間にわたり56日間隔で計12回投与する。 アカラブルチニブは、 病勢進行または許容不能な毒性が出現するまで継続。 

Key Data|臨床試験結果

📊 ECHO試験

J Clin Oncol. 2025;43(20):2276-2284.

65歳以上の未治療MCL患者598例を対象とした、 国際共同・二重盲検の第III相無作為化比較試験。 患者はアカラブルチニブ+BR (ベンダムスチン+リツキシマブ) 群またはプラセボ+BR群に1:1の比率で割り付けられ、 主要評価項目はPFSとされた。 

【有効性】アカラブルチニブ群 (vs プラセボ群)

- PFS中央値 : 66.4ヵ月 (vs 49.6ヵ月)

  • HR 0.73 (95%CI 0.57–0.94、 p=0.02)

- 全奏効率 : 91.0% (vs 88.0%)

  • 完全奏効率 : 66.6% (vs 53.5%)
  • 奏効期間中央値 : 63.5ヵ月 (vs 53.8ヵ月)

- OS中央値 : 未到達 (vs 未到達)

  • HR 0.86 (95%CI 0.65–1.13、 p=0.27)

【安全性】主な有害事象 : 全Grade (Grade≧3)

- 悪心 42.8% (1.3%)

- 好中球減少 40.1% (35.4%)

- 下痢 37.4% (3.0%)

- COVID-19 30.6% (8.8%)

- 頭痛 30.3% (1.3%)

- 疲労 29.3% (2.7%)

- 発熱 29.0% (2.4%)

- 咳嗽 26.9% (0%)

- 嘔吐 25.6% (0.7%)

- 便秘 24.6% (1.0%)

- 貧血 22.9% (9.4%)

- 発疹 20.5% (1.3%)

- Infusion reaction 14.5% (0.7%)

- 感染症 78.1% (41.1%)

- 心房細動/粗動 6.7% (4.0%)

- 高血圧 12.5% (5.7%)

各プロトコル

適格基準

ECHO試験³⁾の主な適格基準 :

- 65歳以上

- ECOG PS 0–2

- 好中球数≧1,000/μL (骨髄浸潤例は≧750/μL)

- 血小板数≧7.5万/μL (骨髄浸潤例は≧5万/μL)

- 腎機能 : CrCl≧50mL/min

- 肝機能 : T-Bil≦1.5×ULN、 AST/ALT ≦2.5×ULN

主な除外基準 : 造血幹細胞移植予定、 中枢神経系病変、 重度の心疾患 (コントロール不良または症候性不整脈、 うっ血性心不全、 6か月以内の心筋梗塞)、 NYHAクラス3または4の心疾患、 QTc>480ms、 ワルファリンまたはCYP3A阻害薬/誘導薬併用中。

用量レベル

リツキシマブの用量変更は行わない。一方、 アカラブルチニブおよびベンダムスチンは、 以下の基準に従って減量を行う。

ECHO試験³⁾のプロトコルを基に編集部作成

腎障害患者に対する用量調整

アカラブルチニブ : 尿中未変化体の排泄率は1%未満であり、 腎障害患者における用量調整は不要と考えられる。

カルケンス®錠インタビューフォームを基に編集部が評価

ベンダムスチン : 尿中未変化体の排泄率は1.6%と低く、 腎障害患者での用量調整は不要と考えられるが、 副作用の増強に注意が必要である。 一方、 米国の添付文書ではCrCl<30mL/minの薬物動態が検討されておらず、 投与は避けるよう注意喚起されている。

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リツキシマブ : 抗体薬は多様な細胞でのエンドサイトーシスとリソソーム分解により消失するため、 一般に減量は不要と考えられる。

編集部の見解

有害事象発現時の減量・休薬・中止基準

以下、 ECHO試験³⁾のプロトコルと電子添文情報¹⁾を基に作成

アカラブルチニブ : 以下の有害事象発現時は休薬し、 再開基準到達後に同量で再開する。

ただし、 再発時には以下の対応を行う :

2回目 : 100mg 1日1回で再開

3回目 (非血液毒性又は重大な出血を伴う血小板減少) : 治療中止

3回目 (その他) : 100mg 1日1回で再開

4回目 (その他) : 治療中止


ベンダムスチン : 以下の有害事象発現時は休薬し、 再開基準到達後に1段階減量で再開する。

レジメンの特徴と注意点

🧑‍⚕️ECHO試験は65歳以上を対象としているため、 カルケンス®+BR療法は主に高齢患者に用いられます。 現時点では移植適応のある患者には自家移植が検討されます。 自家移植前のレジメン選択や移植回避の可能性は今後の課題です。 また、 カルケンス®は剤形ごとに適応が異なり、 カプセルは慢性リンパ性白血病のみ、 錠剤は慢性リンパ性白血病とMCLに適応となっているため注意が必要です。 
東海大学医学部血液腫瘍内科 扇屋大輔先生

作用機序の特徴

アカラブルチニブは、 ブルトン型チロシンキナーゼ (BTK) を選択的に阻害する低分子化合物であり、 BTKの活性部位に存在するシステイン残基 (Cys481) と共有結合することで、 その酵素活性を不可逆的に阻害する。

本レジメンの位置付け

アカラブルチニブ+BR療法は、 未治療MCLに対して適用される。 一方、 アカラブルチニブ単剤は、 再発または難治性の症例に対して適用される。

強力な化学療法の適応となる未治療MCL患者におけるアカラブルチニブの有効性・安全性は確立していない。 

CYP3A4阻害薬併用時の注意事項

アカラブルチニブはCYP3A4に対する感度の高い基質薬であり、 中程度または強いCYP3A4阻害薬との併用により血中濃度が上昇し、 副作用が増強するおそれがある。 そのため、 これらの薬剤との併用は可能な限り避け、 代替薬への変更を検討する。 やむを得ず併用する場合には、 患者の状態を慎重に観察し、 副作用の発現に十分注意する。

>> 中程度の・強いCYP3A4阻害薬を確認する

レジメン適用時の注意事項

出血 : 頭蓋内や消化管などで重篤な出血、 死亡例も報告されている。 抗凝固薬・抗血小板薬との併用は出血リスクを高めるため慎重に観察する。 手術・侵襲的処置の前後は少なくとも3日間の休薬を考慮。

骨髄抑制・感染症 : 貧血、 好中球・白血球・血小板減少、 肺炎、 日和見感染症、 B型肝炎ウイルス再活性化などが報告され、 死亡例もある。 血球減少の早期発見には定期的な血液検査を行い、 投与前には肝炎ウイルス等の感染有無を確認する。 リスクの高い患者には予防的処置を考慮し、 投与中は感染徴候に十分注意する。 B型肝炎ウイルスキャリアや既往感染者には、 肝機能とウイルスマーカーの定期的モニタリングを実施。

心毒性 : 心房細動・心房粗動などの重篤な不整脈や、 急性冠症候群を含む虚血性心疾患が報告されている。 早期発見のため、 投与後は定期的に心機能検査を実施。

腫瘍崩壊症候群 : 血清電解質や腎機能を定期的に確認し、 異常時は投与中止の上、 生理食塩液や高尿酸血症治療薬などで適切に対応。

間質性肺疾患 : 呼吸器症状や胸部X線所見をモニタリングし、 異常時は速やかに胸部CTを実施する。 必要に応じて専門医と連携し、 投与を中止の上、 ステロイド投与など適切に対応。

二次性悪性腫瘍 : 皮膚および皮膚以外に二次性悪性腫瘍が報告されている。 皮膚有棘細胞癌や基底細胞癌などの発現に留意し、 皮膚の状態を適宜観察。

RMP【重要な特定されたリスク】

カルケンス®錠 医薬品リスク管理計画書 (RMP)

- 出血

- 感染症

- 骨髄抑制

- 不整脈

- 虚血性心疾患

- 腫瘍崩壊症候群

- 間質性肺疾患

出典

  1. アストラゼネカ株式会社. カルケンス錠100mg 電子添文 2025年8月改訂 (第2版)
  2. アストラゼネカ株式会社. カルケンス錠100mg 適正使用ガイド 2025年8月作成
  3. J Clin Oncol. 2025;43(20):2276-2284.
最終更新 : 2025年8月27日
執筆 : HOKUTO編集部 がん専門・指導薬剤師
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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がん薬物療法における治療計画をまとめたものです。

主要論文や適正使用ガイドをもとにした用量調整プロトコール、 有害事象対応をご紹介します。

なお、 本ツールは医師向けの教育用資料であり、 実臨床での使用は想定しておりません。 最新の添付文書やガイドラインを必ずご確認下さい。

また、 一般の方への情報提供ではないことを予めご了承ください。

急性骨髄性白血病
急性前骨髄球性白血病
慢性骨髄性白血病
骨髄増殖性疾患
骨髄異形成症候群
急性リンパ性白血病
慢性リンパ性白血病
悪性リンパ腫
多発性骨髄腫
自家移植
同種移植
非腫瘍性疾患
CAR-T
急性前骨髄球性白血病
悪性リンパ腫
多発性骨髄腫
再発難治性
DPd
ダラツムマブ、ポマリドミド、デキサメタゾン
DCd(DKd)
ダラツムマブ、 カルフィルゾミブ、 デキサメタゾン
DBd(DVd)
ダラツムマブ、 ボルテゾミブ、 デキサメタゾン
ISA-Pd
イサツキシマブ、 ポマリドミド、 デキサメタゾン
ISA-Kd
イサツキシマブ、カルフィルゾミブ、デキサメタゾン
ISA-d/ISA monotherapy
イサツキシマブ ± デキサメタゾン
KRd
カルフィルゾミブ、 レナリドミド、 デキサメタゾン
weekly Kd(wKd)70mg/m²
週1回高用量カルフィルゾミブ、 デキサメタゾン
Kd (Cd) 56mg/m²
カルフィルゾミブ、 デキサメタゾン
ERd(ELd)
エロツズマブ、 レナリドミド、 デキサメタゾン
EPd
エロツズマブ、 ポマリドミド、 デキサメタゾン
ILd(IRd)
イキサゾミブ、 レナリドミド、 デキサメタゾン
Pd
ポマリドミド、 デキサメタゾン
PBd(PVd)
ポマリドミド、ボルテゾミブ、デキサメタゾン
BelaVd
ベランタマブ マホドチン+ボルテゾミブ+デキサメタゾン
BelaPd
ベランタマブ マホドチン+ポマリドミド+デキサメタゾン
Elranatamab
エルラナタマブ(エルレフィオ®)
Teclistamab
テクリスタマブ (テクベイリ®)
Talquetamab
トアルクエタマブ (タービー®)
Ide-cel(Idecabtagene vicleucel)
イデカブタゲン ビクルユーセル(アベクマ®)
Cilta-cel(Ciltacabtagene autoleucel)
シルタカブタゲン オートルユーセル(カービクティ®)
DCEP
デキサメタゾン+シクロホスファミド+エトポシド+シスプラチン
VTD-PACE
ボルテゾミブ、 サリドマイド、 デキサメタゾン、 シスプラチン、 アドリアマイシン、 シクロホスファミド、 エトポシド
非腫瘍性疾患
血栓性血小板減少性紫斑病

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