シクロホスファミド (エンドキサン®)
| 投与量 | コース | 投与日 |
|---|---|---|
| 50mg/kg | - | Day 3, 4 |
| Day5よりタクロリムスおよびMMFを開始 |
- シクロホスファミド (添付文書)
【1コース】Day 0に造血幹細胞移植
【催吐性】 高度

Post-Transplantation Cyclophosphamide (PTCy) : 末梢血幹細胞 (PBSC) 輸注後60~72時間 (Day3) に投与、 Day4の投与はその約24時間後に投与。 投与量はIBW (理想体重) で算出し、 ABW タクロリムス (Tac) : Day5に開始し、 静注では0.02–0.03mg/kg/日を投与。 血中濃度はトラフ5–15ng/mLを維持。 活動性GVHDがなければDay90以降に漸減を開始し、 Day180までの中止を目標とする¹⁾。 ミコフェノール酸モフェチル (MMF) : Day5に開始し、 15mg/kg/回を1日3回 (最大1回1g、 総量3g/日) を投与。 Day35で終了予定とし、 活動性GVHDがある場合は継続可能¹⁾。 N Engl J Med. 2023;388(25):2338-2348. 【有効性】 【安全性】 BMT CTN 1703試験¹⁾の主な適格基準 - 18歳以上 - Karnofsky Performance Score≧60% - 心機能 : 左室駆出率≧45% - 肺機能 : DLCO補正値≧40%、 FEV1予測値≧50% - 腎機能・肝機能 : 施設基準に準ずる シクロホスファミド²⁾ : 腎機能低下によりクリアランスが低下し、 心筋障害が増悪する可能性がある。 - CrCL≧10mL/min : 調整不要 - CrCL<10mL/min : 75%に減量 - 維持透析中 : 50%に減量 (透析後に投与) - CAPD : 75%に減量 - CRRT : 調整不要 PTCyは当初、 ハプロ移植のGVHD予防法として開発されたが、 その有効性と安全性が確立されたことから、 現在ではHLA一致移植を含む多様なドナーソースに適用されている。 HLA適合移植では、 強度減弱前処置 (RIC) 下でPTCyを含むレジメンが従来のMTXベースより優れるとされる³⁾。 一方、 強度前処置 (MAC) や非寛解例ではエビデンスが限られており、 疾患コントロールの状況に応じた適応判断が推奨される。 なお、 PTCy単剤ではGVHD抑制が不十分であり、 TacやMMFなどの免疫抑制薬との併用が前提である³⁾。 PTCyを用いたハプロ移植後に注意すべき合併症の一つであり、 発熱が最も頻度の高い症状である。 多くは輸注後数日以内に発症し、 倦怠感や血圧低下を伴うこともある。 重症例では循環不全や呼吸不全に進展しうる。 PTCy後の発熱は自然軽快することが多いが、 重症例では速やかなステロイド介入が必要である。 敗血症との鑑別が困難な場合は、 発熱性好中球減少症として抗菌薬投与を行うことが望ましい⁴⁾。 シクロホスファミドによる心毒性は用量依存的にリスクが上昇し、 ときに致死的となる。 高齢、 高血圧、 不整脈、 糖尿病、 心疾患既往は独立した危険因子である。 症状は軽度の心機能低下から出血性壊死性心筋炎まで多様で、 投与後数日~数週間で急速に進行することがある⁴⁾。 PTCy施行例ではCMV再活性化率が高く、 ハプロ移植で42%、 HLA適合同胞間移植で37%と報告されている。 レテルモビル投与により再活性化リスクを低減できることが示されている。 EBウイルス関連疾患やHHV-6脳炎はまれだが、 BKウイルスによる出血性膀胱炎は注意が必要であり、 前処置にブスルファンを使用した場合に発症率が上昇するとされる⁴⁾。出血性膀胱炎の予防 : CY投与時は3 L/m²/日程度の輸液を行う。 輸液は投与の少なくとも4時間前から開始し、 終了後24時間まで継続する。 投与後24時間は尿量150 mL/h以上を維持するよう管理する。 メスナの投与法は添付文書または施設のガイドラインに従う²⁾。
PTCy後の免疫抑制薬
Key Data|臨床試験結果
📊 BMT CTN 1703試験
血液腫瘍患者431例を対象とした第III相無作為化比較試験。 強度減弱または非骨髄破壊的前処置後、 HLA一致血縁ドナーまたはHLA一致/1抗原不一致の非血縁ドナーから末梢血幹細胞移植 (PBSC) を受けた患者を、 PTCy/Tac/MMF群と標準予防のTac/メトトレキサート (MTX) 群に1:1で割り付けた。 主要評価項目は、 1年時点の無GVHD・無再発生存率*であった。
*Grade III–IV急性GVHD、 全身免疫抑制を要する慢性GVHD、 再発/進行、 死亡をイベントとする


各プロトコル
適格基準
腎障害患者における移植前処置薬の減量
レジメンの特徴と注意点
PTCyの位置付け
サイトカイン放出症候群 (CRS)
心毒性
ウイルス感染症
🧑⚕️PTCyは、移植後数日のタイミングで大量のアルキル化剤を投与することで、主に急速に増殖しているアロ反応性エフェクターT細胞を選択的に排除することでGVHDを抑制します。一方で、休止期にある造血幹細胞、制御性T細胞、メモリーT細胞などを温存することができます。 抗白血病活性を持つT細胞やNK細胞、さらに後から再構築されるT細胞群が残るため、GVL効果は一定程度維持されます。PTCyを用いる場合の移植前処置は施設や疾患によって異なり、Flu+Mel+TBI、Flu+Bu+TBI、Flu+TBI(non-TBIレジメンを用いる施設もあり)が使用されることが多いです。従来のHLA半合致移植だけでなくHLA不一致移植でも用いられるようになってきています。
東海大学医学部 血液腫瘍内科 扇屋大輔先生
出典
最終更新 : 2025年10月9日
執筆 : HOKUTO編集部がん専門・指導薬剤師
監修医師 : 東海大学血液腫瘍内科 扇屋大輔
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
| 投与量 | コース | 投与日 |
|---|---|---|
| 50mg/kg | - | Day 3, 4 |
| Day5よりタクロリムスおよびMMFを開始 |
- シクロホスファミド (添付文書)
【1コース】Day 0に造血幹細胞移植
【催吐性】 高度

Post-Transplantation Cyclophosphamide (PTCy) : 末梢血幹細胞 (PBSC) 輸注後60~72時間 (Day3) に投与、 Day4の投与はその約24時間後に投与。 投与量はIBW (理想体重) で算出し、 ABW タクロリムス (Tac) : Day5に開始し、 静注では0.02–0.03mg/kg/日を投与。 血中濃度はトラフ5–15ng/mLを維持。 活動性GVHDがなければDay90以降に漸減を開始し、 Day180までの中止を目標とする¹⁾。 ミコフェノール酸モフェチル (MMF) : Day5に開始し、 15mg/kg/回を1日3回 (最大1回1g、 総量3g/日) を投与。 Day35で終了予定とし、 活動性GVHDがある場合は継続可能¹⁾。 N Engl J Med. 2023;388(25):2338-2348. 【有効性】 【安全性】 BMT CTN 1703試験¹⁾の主な適格基準 - 18歳以上 - Karnofsky Performance Score≧60% - 心機能 : 左室駆出率≧45% - 肺機能 : DLCO補正値≧40%、 FEV1予測値≧50% - 腎機能・肝機能 : 施設基準に準ずる シクロホスファミド²⁾ : 腎機能低下によりクリアランスが低下し、 心筋障害が増悪する可能性がある。 - CrCL≧10mL/min : 調整不要 - CrCL<10mL/min : 75%に減量 - 維持透析中 : 50%に減量 (透析後に投与) - CAPD : 75%に減量 - CRRT : 調整不要 PTCyは当初、 ハプロ移植のGVHD予防法として開発されたが、 その有効性と安全性が確立されたことから、 現在ではHLA一致移植を含む多様なドナーソースに適用されている。 HLA適合移植では、 強度減弱前処置 (RIC) 下でPTCyを含むレジメンが従来のMTXベースより優れるとされる³⁾。 一方、 強度前処置 (MAC) や非寛解例ではエビデンスが限られており、 疾患コントロールの状況に応じた適応判断が推奨される。 なお、 PTCy単剤ではGVHD抑制が不十分であり、 TacやMMFなどの免疫抑制薬との併用が前提である³⁾。 PTCyを用いたハプロ移植後に注意すべき合併症の一つであり、 発熱が最も頻度の高い症状である。 多くは輸注後数日以内に発症し、 倦怠感や血圧低下を伴うこともある。 重症例では循環不全や呼吸不全に進展しうる。 PTCy後の発熱は自然軽快することが多いが、 重症例では速やかなステロイド介入が必要である。 敗血症との鑑別が困難な場合は、 発熱性好中球減少症として抗菌薬投与を行うことが望ましい⁴⁾。 シクロホスファミドによる心毒性は用量依存的にリスクが上昇し、 ときに致死的となる。 高齢、 高血圧、 不整脈、 糖尿病、 心疾患既往は独立した危険因子である。 症状は軽度の心機能低下から出血性壊死性心筋炎まで多様で、 投与後数日~数週間で急速に進行することがある⁴⁾。 PTCy施行例ではCMV再活性化率が高く、 ハプロ移植で42%、 HLA適合同胞間移植で37%と報告されている。 レテルモビル投与により再活性化リスクを低減できることが示されている。 EBウイルス関連疾患やHHV-6脳炎はまれだが、 BKウイルスによる出血性膀胱炎は注意が必要であり、 前処置にブスルファンを使用した場合に発症率が上昇するとされる⁴⁾。出血性膀胱炎の予防 : CY投与時は3 L/m²/日程度の輸液を行う。 輸液は投与の少なくとも4時間前から開始し、 終了後24時間まで継続する。 投与後24時間は尿量150 mL/h以上を維持するよう管理する。 メスナの投与法は添付文書または施設のガイドラインに従う²⁾。
PTCy後の免疫抑制薬
Key Data|臨床試験結果
📊 BMT CTN 1703試験
血液腫瘍患者431例を対象とした第III相無作為化比較試験。 強度減弱または非骨髄破壊的前処置後、 HLA一致血縁ドナーまたはHLA一致/1抗原不一致の非血縁ドナーから末梢血幹細胞移植 (PBSC) を受けた患者を、 PTCy/Tac/MMF群と標準予防のTac/メトトレキサート (MTX) 群に1:1で割り付けた。 主要評価項目は、 1年時点の無GVHD・無再発生存率*であった。
*Grade III–IV急性GVHD、 全身免疫抑制を要する慢性GVHD、 再発/進行、 死亡をイベントとする


各プロトコル
適格基準
腎障害患者における移植前処置薬の減量
レジメンの特徴と注意点
PTCyの位置付け
サイトカイン放出症候群 (CRS)
心毒性
ウイルス感染症
🧑⚕️PTCyは、移植後数日のタイミングで大量のアルキル化剤を投与することで、主に急速に増殖しているアロ反応性エフェクターT細胞を選択的に排除することでGVHDを抑制します。一方で、休止期にある造血幹細胞、制御性T細胞、メモリーT細胞などを温存することができます。 抗白血病活性を持つT細胞やNK細胞、さらに後から再構築されるT細胞群が残るため、GVL効果は一定程度維持されます。PTCyを用いる場合の移植前処置は施設や疾患によって異なり、Flu+Mel+TBI、Flu+Bu+TBI、Flu+TBI(non-TBIレジメンを用いる施設もあり)が使用されることが多いです。従来のHLA半合致移植だけでなくHLA不一致移植でも用いられるようになってきています。
東海大学医学部 血液腫瘍内科 扇屋大輔先生
出典
最終更新 : 2025年10月9日
執筆 : HOKUTO編集部がん専門・指導薬剤師
監修医師 : 東海大学血液腫瘍内科 扇屋大輔
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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