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西日本がん研究機構(WJOG)

33日前

WJOG Boot Camp 参加印象記 : MVP賞・チームコンセプト賞を受賞して

WJOG Boot Camp 参加印象記 : MVP賞・チームコンセプト賞を受賞して
参加者全員での集合写真
2025年8月22~24日に西日本がん研究機構 (WJOG) が主催する若手医師育成プログラムである 「WJOG Boot Camp」 に参加し、 MVP賞を受賞した上原悠治先生より、 参加者として体験した視点から本プログラムの魅力をお届けします。 挑戦と学び、 そして全国の志高い仲間たちとの出会いを通じて感じた熱気を、 ぜひご覧ください。 

執筆者

WJOG Boot Camp 参加印象記 : MVP賞・チームコンセプト賞を受賞して
2019年千葉大学医学部医学科卒。 都立駒込病院、 国立がん研究センター中央病院・東病院呼吸器内科、 カリフォルニア大学サンディエゴ校研究員などを経て現職。 日本臨床腫瘍学会、 日本肺癌肺癌学会SNS-WG委員。 主な受賞歴: ESMO Merit Travel Grant (2023, 2025年)、 本庄国際奨学財団奨学金 (2024年)、 WJOG MVP (2025年) など。

はじめに

WJOG Boot Camp (旧称 : 虎の穴) のことは、 学生時代から存じ上げていました。 当時、 虎の門病院へ見学に伺った際、 いらっしゃった高野利実先生、 尾崎由記範先生 (現 がん研有明病院) からも、 非常に勉強になるというお話を伺っており、 いつか参加したいと強く憧れていました。

私は医師7年目となります。 関西出身ではありますが、 都立駒込病院、 国立がん研究センター中央病院、 国立がん研究センター東病院の呼吸器内科と、 主に関東圏の施設で呼吸器内科医として研鑽を積んできました。 そのため、 関東圏以外の先生方との交流の機会は多くありませんでした。 以前から国際学会などでWJOGの活発なアクティビティを拝見しており、 西日本を中心とした先生方と繋がり、 臨床試験の知見を深めたいという思いが募っていました。

この度、 念願叶って参加が実現し、 私達のチームはチームコンセプト賞を、 そして私は個人としてMVP賞を拝受しました。 呼吸器内科グループのMVP受賞は、 近畿大学教授の林秀敏先生に次いで2人目とのことで、 大変光栄に感じています。 本稿では、 本合宿の圧倒的な魅力とそこで得た生涯の財産についてご報告します。

選考まで

Boot Campは、 まず1月下旬に自身の応募動機・Clinical Questionを提出するところから始まります。 私は選考過程の詳細は存じ上げませんが、 今までWJOGの試験に関わった経験がなかったため、 正直なところ選考を通過するとは思っていませんでした。

しかし、 私のような立場の医師にも門戸が開かれているのだと実感しました。 アイデアや自己アピールの独自性もさることながら、 参加したいという 「熱意」 を1、 2枚の応募用紙で伝えることが何より大切だと思います。 私自身、 WJOGの先生方と交流し、 臨床試験を深く学びたいという強い思いを持って応募しました。

集合レクチャー~合宿まで

まず、 4月の集合レクチャーで顔合わせを行います。 呼吸器グループは4人が選ばれ、 大分大学の安部美幸先生、 産業医科大学の眞鍋堯彦先生という外科医2人と、 静岡がんセンターの松田賢先生、 そして私という内科医2人でした。

また、 ジュニアチューターとして肺癌分野の第一線で活躍されている先生方が6人 (運営委員も含めて)、 シニアチューターには日本・世界の肺癌領域を牽引する教授陣が3人、 医学統計家が1人という、 大変手厚い布陣です。

その後、 合宿本番までの約4ヵ月間、 臨床試験のアイデアを練り上げます。 最初は月1回、 6月のASCO後からは2週間に1回、 2時間程度のオンライン会議を重ねました。 各自が案を持ち寄り、 議論し、 消えていく案もある中で、 最終的に4つの案をプレゼン。 チューターと参加者 (虎の子) の投票で1つに絞り込み、 その提案書をチーム全員で磨き上げていきました。 内科、 外科、 様々な臨床や研究経歴を持つ多様な専門家からのフィードバックは、 自施設にいるだけでは得られない非常に貴重なものでした。

WJOG Boot Camp 参加印象記 : MVP賞・チームコンセプト賞を受賞して
プレゼン中の様子 (呼吸器グループ)

合宿中

ここがメインイベントです。 睡眠時間は多少短くなりますが、 ジュニアチューター・シニアチューターに加えて、 肺癌領域のレジェンド達も参戦され、 国内のさまざまなKOLと対等に、 朝から晩まで、 ざっくばらんに議論できる環境は非常に刺激的で、 大変勉強になりました。

WJOGは関西が中心という背景からか、 科学性・実現可能性・倫理面といった要素は勿論のこと、 「面白いかどうか?」 という視点を非常に大切にする文化があると感じました。 この点も、 他の臨床試験グループと比べてユニークな特徴かもしれません。

合宿では計4回のプレゼンがあり、 回を追うごとに発表時間 (5分→10分→15分→20分) と質疑応答時間(10分→20分→45分→50分)が長くなっていきます。 限られた時間でコンセプトの骨子と魅力を伝え、 他グループのKOLからの鋭い質問に的確に答える必要があります。 どうプレゼンし、 誰が担当するかといった戦略も重要になってきます。

私達のチームはチームコンセプト賞を受賞でき、 私は幸運にもMVPを頂きました。 最後のプレゼンと質疑応答での貢献を評価いただきましたが、 これは合宿前から努力を続けた素晴らしい仲間達のおかげです。 特に、 プロトコール提案者である安部先生の合宿前から今に至るまでの凄まじい努力には、 ただただ感服しています。

WJOG Boot Camp 参加印象記 : MVP賞・チームコンセプト賞を受賞して
受賞時の様子

また、 懇親会・飲み会もこの会の大きな魅力の一つです。 自身のグループだけでなく、 他がん種で活躍される先生方と交流できることも、 本合宿の醍醐味です。 これは単に知識の幅を広げるだけでなく、 臓器横断的な視点を持つ腫瘍内科医として、 今後のネットワーク構築に大いに活きると感じました。 また、 学生時代からお世話になっていた乳がんグループの高野利実先生、 尾崎由記範先生や他臓器グループの友人と再会できたことも嬉しい出来事でした。

合宿後

Boot Campは合宿で終わりではありません。 チームコンセプト賞を受賞した私達の案は、 今まさに提案者の安部先生を中心にブラッシュアップが続いています。 WJOGの呼吸器グループで提案し、 実際の臨床試験として実現を目指している段階です。 合宿時より、 特にファンディング面の観点や企業との交渉など、 考えるべきことがさらに増え、 一つの臨床試験を立ち上げることの大変さと難しさを改めて実感しています。

参加を迷っている皆様へ

HOKUTO会員の皆様、 特に臨床試験に興味のある若手の先生方には、 WJOG Boot Campへの参加を強くお勧めします。

臨床試験の立案プロセスを体系的に学べるだけでなく、 プレゼンの仕方、 質問の方法といったソフトスキル、 そして何より濃密なネットワークは、 ほかでは得難い財産となります。 これほど臨床試験について集中に考え、 議論できる場は他にありません。 ここで得た経験は、 間違いなく医師としての一生の財産になるはずです。

来年は、 私は呼吸器内科のジュニアチューターとして参加させていただく予定です。 皆様と会場でお会いできることを楽しみにしています。

WJOG Boot Camp 参加印象記 : MVP賞・チームコンセプト賞を受賞して
参加者全員での集合写真

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こちらの記事の監修医師
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HOKUTO編集部
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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