
投資信託も含めて、 米国株を保有している先生も多いでしょう。 連載 「医師による医師のための財テク術」 の第37回では、 将来起こり得る円高によるリスク整理し、 医師がどのように備えるべきかを考えていきましょう。
米国株を保有している場合、 円高が進むと日本円換算での資産価値が下がります。
昨今急激な円安が進行したたため、 「将来的に円高に振れるのでは」 と考えると投資に踏み切れない先生も多いかもしれません。
しかし実は、 円高の影響は日本株にも及ぶことをご存じでしょうか。

【グラフ1】を見てください。 日経平均とドル円チャートを比較すると、 長期的に両者の間に強い相関があることが分かります。
その理由のひとつは、 日本株の多くが輸出企業によって構成されていることです。
円安になると海外での売上を円換算した利益が増えるため、 株価上昇の追い風になります。 反対に円高が進むと、 同じ売上でも円建て利益が減るため、 企業業績に下押し圧力がかかります。

もう一つの要因は外国人投資家の存在感です。
現在、 日本株の約3割を外国人が保有し、 売買代金ベースでは6割、 先物市場では7~8割を占めるといわれています。 円安になると外国人投資家にとって日本株は 「割安」 に見えるため買いが入りやすく、 円高になると逆に売り圧力が高まりやすい。
結果として、 円高は日本株全体にとってもマイナス要因となりやすいのです。

次に、 実際に円高が進んだ局面を振り返ってみましょう。
過去20年で代表的な円高期は、 2008年のリーマン・ショックと2016年前後の世界経済不安です【グラフ2】。
2008年、 リーマン・ブラザーズの破綻をきっかけに 「有事の円買い」 が起こり、 3年間でおよそ32%もの円高が進行しました。 株価も同時に大きく下落しましたが、 米国株 (S&P500) は円建てで見ても最終的には日本株より良好なパフォーマンスを示しました【グラフ3】。

2016年前半には、 中国経済の減速や原油価格の急落、 英国のEU離脱投票などを背景にリスク回避ムードが広がり、 円高が再び進行しました。 この時期も同様に、 日本株・米国株ともに円高局面でパフォーマンスが低下しましたが、 長期で見ると米国株は円建てでも優位であることが確認されています【グラフ4】。

こうした短期的な円高期間だけを切り取るとパフォーマンスは悪化して見えますが、 15年以上の長期スパンで見れば、 S&P500は円建てでもマイナスになった期間がほとんどありません。
つまり、 一時的な円高に過度に怯える必要はないということです。
大切なのは、 どの資産が長期的に成長していくかを見極める視点です。

我々医師は給与を日本円で受け取るため、 収入も資産も円に偏りがちです。
これは、 円安が進行した場合に 「自国通貨ベースの資産が目減りする」 というリスクを意味します。
投資の基本は 「卵をひとつのカゴに盛らない」 こと。
この原則は、 通貨にも当てはまります。 日本円だけに依存するのではなく、 ドルなど他通貨建ての資産を一定割合で持つことが、 結果的にリスク分散につながります。
もちろん、 ドルを持つことで円高局面では含み損を抱える可能性もあります。
しかし、 円安局面では逆に資産価値が上昇します。
両方向のリスクをバランスさせることで、 為替変動の影響を抑えつつ中長期で安定的に資産を育てることができるのです。
いかがでしたでしょうか。 次回は、 「投資を楽しむ」 という視点から、 日々の資産形成を前向きに続けるマインドについて考えていきたいと思います。


編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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