本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.
薬剤情報
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主な有害事象
適正使用ガイド¹⁾ BO42162試験 (COMMODORE 2試験)より引用.
(本剤群 n=141/切り替え群 n=68) の順で記載.
骨髄抑制
- 白血球減少 (12.1%/10.3%)
- 好中球減少症 (11.3%/5.9%)
- 血小板減少 (0.7%/2.9%)
主な有害事象
- 注入に伴う反応 (14.2%/2.9%)
- 注射に伴う反応 (4.3%/5.9%)
- 3型免疫複合体型反応 (0%/16.2%)
その他 (MedDRA器官別大分類)
- 感染症および寄生虫症 (2.1%/0%)
- 一般・全身障害および投与部位の状態 (3.5%/1.5%)
- 胃腸障害 (1.4%/2.9%)
- 皮膚および皮下組織障害 (2.1%/1.5%)
- 血液およびリンパ系障害 (1.4%/1.5%)
- 神経系障害 (1.4%/5.9%)
- 筋骨格系および結合組織障害 (1.4%/1.5%)
- 呼吸器、胸郭および縦隔障害 (0.7%/1.5%)
- 代謝および栄養障害 (1.4%/0%)
- 肝胆道系障害 (0.7%/0%)
- 心臓障害 (0.7%/0%)
- 腎および尿路障害 (0.7%/0%)
- 精神障害 (0%/1.5%)
特徴と注意点
発作性夜間血色素尿症 (PNH)
- 本剤は、 補体C5にpH依存的に結合し、 C5からC5a及びC5bへの開裂を阻害. 終末補体複合体C5b-9生成抑制により、 PNH患者における補体介在性の血管内溶血を改善する.
- 本剤の特徴は、 最終的には4週に1回の皮下投与となり患者負担が少ないこと、 既存薬とは異なる部位でC5に結合するため、 特定のC5遺伝子変異を有する患者 (日本人においてはPNH患者の約3.2%) にも有効な選択肢となり得ることが挙げられる.
- 本剤はリサイクリング抗体®技術により機能的半減期が延長され、 補体活性を持続的に抑制する. 一方で、 体内から消失する期間も長く、 投与終了後も1年程度は重篤な感染症等の副作用に注意が必要.
- 本剤の投与により、 髄膜炎菌をはじめ、 莢膜形成細菌 (淋菌、 肺炎球菌、 インフルエンザ菌b型等) による感染症リスクが増大することから、 感染対策、 ワクチン接種などの十分な患者指導を行う.
- 他の抗C5抗体製剤から本剤へ切り替え、 又は本剤から他の抗C5抗体製剤に切り替える場合、 異なるC5エピトープの結合により免疫複合体反応を引き起こすおそれがある. 抗C5抗体製剤を切り替えた患者では、 切替え後30日程度は皮膚、 関節、 腎機能等を注意深く観察する.
- 注意すべき副作用¹⁾:髄膜炎菌感染症 (頻度不明)、 感染症 (2.1%)、 免疫複合体反応 (17.8%)、 Infusion reaction* (16%).
*臨床試験において前処置の施行は規定なし
髄膜炎菌感染症の予防
- 本剤投与開始の少なくとも2週間前までに髄膜炎菌ワクチンを接種し、 以後5年ごとに追加接種を行う.
- 緊急治療が必要で、 本剤投与開始2週間前までに髄膜炎菌ワクチン接種を完了できない場合には、 接種完了後少なくとも2週間は適切な予防的抗菌薬の投与を検討する.
- ワクチンは、 A、 C、 W-135及びY型に対するワクチン、 及びB型 (入手可能な場合) を推奨.
本邦ではA、C、W-135及びY型に対するワクチンのみ保険適用(メンクアッドフィ®筋注)
- 免疫抑制状態の患者に対しては、 髄膜炎菌ワクチンを8週以上間隔をあけて2回接種すること、 また5年ごとに追加接種することを推奨.
関連する臨床試験の結果
概要
- 第3相無作為化非盲検実薬対照多施設試験
- 目的:補体阻害剤による治療歴のないPNH患者を対象として、 Eculizumabに対するCrovalimabの有効性の非劣性を検証. また安全性を評価.
- 対象:ランダム化パート/18歳以上の補体阻害剤未治療PNH患者204例
- Crovalimab群135例 (日本人2例)、 Eculizumab群69例 (日本人3例)
- 方法:Crovalimab群又はEculizumab群に2:1の割合でランダムに割り付け. 24週間を主要投与期間とし、 その後 (25週の来院時以降) は継続投与期間 (最長5年間) としてCrovalimab (Crovalimab群はCrovalimab継続投与、 Eculizumab群はCrovalimabに切替え) の投与を継続
- 主要評価項目:5週から25週までの溶血コントロールを達成した患者の平均割合、 ベースラインから25週まで輸血回避を達成した患者の割合
結果
- 5週から25週までの溶血コントロールを達成した患者の平均割合は、 Crovalimab群で79.3% (95%CI:72.86~84.48)、 Eculizumab群で79.0% (95%CI:69.66~85.99) であった. オッズ比 (Crovalimab群/Eculizumab群) は1.02 (95%CI:0.57~1.82) で、 95%CIの下限は事前に規定した非劣性マージンの0.2を上回った.
- ベースラインから25週まで輸血回避を達成した患者の割合は、 Crovalimab群で65.7% (88/134例、 95%CI:56.91~73.52)、 Eculizumab群で68.1% (47/69例、 95%CI:55.67~78.53) であった. 輸血回避を達成した患者の割合の調整群間差は-2.8% (95%CI:-15.67~11.14) で、 95%CIの下限は事前に規定した非劣性マージンの-20%を上回った.
- 有害事象 (AE) は、 Crovalimab群 78%(Grade3~5は18%)、 Eculizumab群80% (Grade3~5は25%) で発生した.
- Crovalimab群 3%、 Eculizumab群 7%に重篤な感染症が発生したが、 髄膜炎菌感染症は無かった.
- 致死的なAEは3件あり、 そのうち2件はCrovalimab群 (治療開始前の心筋梗塞1件、 治療中止後の呼吸器出血1件)、 1件はEculizumab群 (虚血性脳卒中) であり、 全て治療とは無関係であった.
概要
- 第3相無作為化非盲検実薬対照多施設試験
- 目的:補体阻害剤による治療歴のあるPNH患者を対象として、 Eculizumabに対するCrovalimabの有効性、 安全性を評価
- 対象:ランダム化パート/Eculizumab治療中のPNH患者89例
- 方法:Crovalimab群又はEculizumab群に1:1の割合でランダムに割り付け. 24週間を主要投与期間とし、 その後 (25週の来院時以降) は継続投与期間 (最長5年間) としてCrovalimab (Crovalimab群はCrovalimab継続投与、 Eculizumab群はCrovalimabに切替え) の投与を継続
- 主要評価項目:安全性
結果
- 有害事象 (AE) はCrovalimab群77%、 Eculizumab群の67%に見られ、 Grade 3/4のAEはそれぞれ18%、 2%に発現したが、 休薬または死亡に至ったAEは無かった.
- 重篤なAEはCrovalimab群14%、 Eculizumab群2%に発現したが、 いずれも治療に関連したものではなかった.
- 重篤な感染症はCrovalimab群7%、 Eculizumab群2%で報告されたが、 髄膜炎菌感染症は見られなかった.
- Crovalimab群の16%に薬物-標的-薬物複合体を介したIII型過敏症 (T3H) がみられたが、 ほとんどは軽度または中等度であり、 Crovalimab投与に変更はなく消失した.
- 報告されたT3Hの徴候および症状は、 主に皮膚及び関節の異常 (蕁麻疹様発疹、 関節痛、 血管炎) であり、 腎臓病変は認められなかった.
- 全体として、 Eculizumabから切り替えた患者は疾患コントロールを維持した.
参考文献
- ピアスカイ®適正使用ガイド
- COMMODORE 2試験
- COMMODORE 1試験
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最終更新:2024年6月27日
執筆:牛久愛和総合病院薬剤センタ- 秋場孝則
監修医師:東海大学血液腫瘍内科 扇屋大輔