エンコラフェニブ (ビラフトビ®) +セツキシマブ+FOLFOX
| 投与量 | コース | 投与日 |
|---|---|---|
| 300mg 1日1回 | 1~ | Day 1~ |
| 投与量 | コース | 投与日 |
|---|---|---|
| 500mg/m² 点滴 | 1~ | Day 1、15 |
| 投与量 | コース | 投与日 |
|---|---|---|
| 85mg/m² 点滴 | 1~ | Day 1、15 |
| 投与量 | コース | 投与日 |
|---|---|---|
| 200mg/m² 点滴 | 1~ | Day 1、15 |
| 投与量 | コース | 投与日 |
|---|---|---|
| 400mg/m² 点滴 | 1~ | Day 1、15 |
| 2400mg/m² 46~48時間で持続点滴 | 1~ | Day 1、15 |
| Cmab投与時に生じ得るインフュージョンリアクションを軽減するため、投与前に抗ヒスタミン薬を前投与し、必要に応じて副腎皮質ステロイドを併用する。 |
ビラフトビ® (エンコラフェニブ)
アービタックス® (セツキシマブ)
【1コース】 28日間
【催吐性】中等度 (FOLFOX)
【FN発症】 未報告*

エンコラフェニブ (Enco) : 300mgを1日1回経口投与
セツキシマブ (Cmab) : 500mg/m²を120分かけて点滴静注し、 2週ごと (Day 1、 15) に投与
FOLFOX : オキサリプラチン85mg/m²を120分かけて点滴静注し、 ロイコボリン400mg/m²を同様に120分で投与。 続いて5-FU 400mg/m²を静注後、 2400mg/m²を46–48時間かけて持続点滴静注する。 これを2週ごと (Day 1、 15) に投与。
N Engl J Med. 2025;392(24):2425-2437.
未治療のBRAF V600E変異陽性切除不能・転移性大腸癌637例を対象とした第III相無作為化比較試験。 EC (エンコラフェニブ+セツキシマブ) +FOLFOX群236例と標準治療群243例を比較し、 主要評価項目は客観的奏効割合 (ORR) とPFSとされた。
【有効性】 EC+FOLFOX群 (vs 標準治療群)
- ORR 65.7% (vs 37.4%)
- PFS中央値 12.8ヵ月 (vs 7.1ヵ月)
- 奏効期間中央値 13.9ヵ月 (vs 10.8ヵ月)
- OS中央値 30.3ヵ月 (vs 15.1ヵ月)
【安全性】 主な有害事象 全Grade (Grade≧ 3)
- 悪心 53.9% (3.0%)
- 貧血 46.1% (15.1%)
- 下痢 41.8% (1.3%)
- 食欲不振 37.5% (2.2%)
- 嘔吐 36.2% (3.9%)
- 好中球数減少 34.1% (19.0%)
- 関節痛 31.5% (2.6%)
- 皮疹 30.2% (1.3%)
- 無力症 25.9% (5.2%)
- 発熱 28.9% (2.2%)
- 末梢神経障害 27.6% (7.8%)
- 便秘 27.2% (0.4%)
- 末梢性感覚ニューロパチー 26.7% (6.9%)
- 疲労 26.3% (2.6%)
- 好中球減少症 24.1% (15.1%)
- 脱毛症 22.8% (0%)
- 血小板数減少 22.8% (1.3%)
- リパーゼ増加 22.4% (17.2%)
- 腹痛 20.3% (4.7%)
BREAKWATER試験³⁾の主な適格基準
- 18歳以上
- ECOG PS 0–1
- 好中球数≧1,500/μL
- 血小板数≧10万/μL
- ヘモグロビン≧9.0g/dL
- 腎機能 : CrCl≧50mL/min
- 肝機能 : T-Bil≦1.5×ULN、 AST/ALT≦2.5×ULN

Enco : 尿中未変化体排泄率は1.8%と低く、 腎クリアランスの寄与は小さいため、 腎障害時の用量調整は不要と考えられる。
Cmab : 抗体薬は多様な細胞でのエンドサイトーシスとリソソーム分解により消失するため、 一般に減量は不要と考えられる。
L-OHP : CrCL<30mL/minは、 初期投与量85mg/m²を65mg/m²に減量 (CrCL≧20mL/minでは減量不要との報告もある)⁴⁾。
5-FU : 減量不要。 ただし、 末期腎不全患者では代謝物の蓄積により高アンモニア血症を来す可能性が報告されている⁴⁾。
サイクル開始基準は以下のとおり。
- 好中球数≧1500/μL
- 血小板数≧10万/μL
- 消化器毒性Grade≦1
BREAKWATER試験³⁾では、 Enco+Cmab+FOLFOXはいずれかの薬剤を中止しても他剤の同時中止は不要であり、 医師の判断で継続できるとされた。
Enco :

Cmab :

BREAKWATER試験³⁾では、 間質性肺炎はGrade 2または増悪でCmabを休薬しGrade≦1で再開、 Grade 3では鑑別確定まで休薬し、 間質性肺疾患が確認されれば永久中止とされた。
FOLFOX :

本レジメンは、 BRAF V600E変異陽性進行・再発結腸直腸癌の1次治療として適用される。
🧑⚕️本レジメンの安全性プロファイルは、 各薬剤 (FOLFOXおよびエンコラフェニブ+セツキシマブ) の既報と同様である。 Grade 3–4の有害事象は81.5%に認められたが、 治療中止は26.7%にとどまり、 ほとんどの有害事象はマネージメント可能と考えられる。 特徴的な有害事象であるエンコラフェニブの関節痛、 セツキシマブの皮膚障害などの管理をうまく行いながら、 dose intensityを保ち治療を継続していくことが肝要である。
エンコラフェニブはBRAF V600Eのキナーゼ活性を阻害し、 MAPK経路 (MEK・ERK) シグナルを抑制することで細胞増殖を抑える。 大腸癌ではBRAF阻害に伴いEGFR経路が代償的に再活性化するため、 EGFR阻害薬セツキシマブを併用することでこの再活性化を抑え、 抗腫瘍効果を高める意義がある³⁾。
Enco :

Cmab :

- 皮膚悪性腫瘍
- 眼障害
- 手掌・足底発赤知覚不全症候群
- 腫瘍崩壊症候群
本剤の適応判定に利用可能なコンパニオン診断薬は以下のとおり。
- MEBGEN RASKET-B キット
- therascreen BRAF V600E変異検出キットRGQ 「キアゲン」
- Idylla RAS-BRAF Mutation Test 「ニチレイバイオ」
- Guardant360 CDx がん遺伝子パネル
最終更新 : 2025年11月27日
執筆 : 京都桂病院薬剤科 塩飽英二
監修医師 : 神奈川県立がんセンター 消化器内科 (消化管) 部長 大隅寛木
| 投与量 | コース | 投与日 |
|---|---|---|
| 300mg 1日1回 | 1~ | Day 1~ |
| 投与量 | コース | 投与日 |
|---|---|---|
| 500mg/m² 点滴 | 1~ | Day 1、15 |
| 投与量 | コース | 投与日 |
|---|---|---|
| 85mg/m² 点滴 | 1~ | Day 1、15 |
| 投与量 | コース | 投与日 |
|---|---|---|
| 200mg/m² 点滴 | 1~ | Day 1、15 |
| 投与量 | コース | 投与日 |
|---|---|---|
| 400mg/m² 点滴 | 1~ | Day 1、15 |
| 2400mg/m² 46~48時間で持続点滴 | 1~ | Day 1、15 |
| Cmab投与時に生じ得るインフュージョンリアクションを軽減するため、投与前に抗ヒスタミン薬を前投与し、必要に応じて副腎皮質ステロイドを併用する。 |
ビラフトビ® (エンコラフェニブ)
アービタックス® (セツキシマブ)
【1コース】 28日間
【催吐性】中等度 (FOLFOX)
【FN発症】 未報告*

エンコラフェニブ (Enco) : 300mgを1日1回経口投与
セツキシマブ (Cmab) : 500mg/m²を120分かけて点滴静注し、 2週ごと (Day 1、 15) に投与
FOLFOX : オキサリプラチン85mg/m²を120分かけて点滴静注し、 ロイコボリン400mg/m²を同様に120分で投与。 続いて5-FU 400mg/m²を静注後、 2400mg/m²を46–48時間かけて持続点滴静注する。 これを2週ごと (Day 1、 15) に投与。
N Engl J Med. 2025;392(24):2425-2437.
未治療のBRAF V600E変異陽性切除不能・転移性大腸癌637例を対象とした第III相無作為化比較試験。 EC (エンコラフェニブ+セツキシマブ) +FOLFOX群236例と標準治療群243例を比較し、 主要評価項目は客観的奏効割合 (ORR) とPFSとされた。
【有効性】 EC+FOLFOX群 (vs 標準治療群)
- ORR 65.7% (vs 37.4%)
- PFS中央値 12.8ヵ月 (vs 7.1ヵ月)
- 奏効期間中央値 13.9ヵ月 (vs 10.8ヵ月)
- OS中央値 30.3ヵ月 (vs 15.1ヵ月)
【安全性】 主な有害事象 全Grade (Grade≧ 3)
- 悪心 53.9% (3.0%)
- 貧血 46.1% (15.1%)
- 下痢 41.8% (1.3%)
- 食欲不振 37.5% (2.2%)
- 嘔吐 36.2% (3.9%)
- 好中球数減少 34.1% (19.0%)
- 関節痛 31.5% (2.6%)
- 皮疹 30.2% (1.3%)
- 無力症 25.9% (5.2%)
- 発熱 28.9% (2.2%)
- 末梢神経障害 27.6% (7.8%)
- 便秘 27.2% (0.4%)
- 末梢性感覚ニューロパチー 26.7% (6.9%)
- 疲労 26.3% (2.6%)
- 好中球減少症 24.1% (15.1%)
- 脱毛症 22.8% (0%)
- 血小板数減少 22.8% (1.3%)
- リパーゼ増加 22.4% (17.2%)
- 腹痛 20.3% (4.7%)
BREAKWATER試験³⁾の主な適格基準
- 18歳以上
- ECOG PS 0–1
- 好中球数≧1,500/μL
- 血小板数≧10万/μL
- ヘモグロビン≧9.0g/dL
- 腎機能 : CrCl≧50mL/min
- 肝機能 : T-Bil≦1.5×ULN、 AST/ALT≦2.5×ULN

Enco : 尿中未変化体排泄率は1.8%と低く、 腎クリアランスの寄与は小さいため、 腎障害時の用量調整は不要と考えられる。
Cmab : 抗体薬は多様な細胞でのエンドサイトーシスとリソソーム分解により消失するため、 一般に減量は不要と考えられる。
L-OHP : CrCL<30mL/minは、 初期投与量85mg/m²を65mg/m²に減量 (CrCL≧20mL/minでは減量不要との報告もある)⁴⁾。
5-FU : 減量不要。 ただし、 末期腎不全患者では代謝物の蓄積により高アンモニア血症を来す可能性が報告されている⁴⁾。
サイクル開始基準は以下のとおり。
- 好中球数≧1500/μL
- 血小板数≧10万/μL
- 消化器毒性Grade≦1
BREAKWATER試験³⁾では、 Enco+Cmab+FOLFOXはいずれかの薬剤を中止しても他剤の同時中止は不要であり、 医師の判断で継続できるとされた。
Enco :

Cmab :

BREAKWATER試験³⁾では、 間質性肺炎はGrade 2または増悪でCmabを休薬しGrade≦1で再開、 Grade 3では鑑別確定まで休薬し、 間質性肺疾患が確認されれば永久中止とされた。
FOLFOX :

本レジメンは、 BRAF V600E変異陽性進行・再発結腸直腸癌の1次治療として適用される。
🧑⚕️本レジメンの安全性プロファイルは、 各薬剤 (FOLFOXおよびエンコラフェニブ+セツキシマブ) の既報と同様である。 Grade 3–4の有害事象は81.5%に認められたが、 治療中止は26.7%にとどまり、 ほとんどの有害事象はマネージメント可能と考えられる。 特徴的な有害事象であるエンコラフェニブの関節痛、 セツキシマブの皮膚障害などの管理をうまく行いながら、 dose intensityを保ち治療を継続していくことが肝要である。
エンコラフェニブはBRAF V600Eのキナーゼ活性を阻害し、 MAPK経路 (MEK・ERK) シグナルを抑制することで細胞増殖を抑える。 大腸癌ではBRAF阻害に伴いEGFR経路が代償的に再活性化するため、 EGFR阻害薬セツキシマブを併用することでこの再活性化を抑え、 抗腫瘍効果を高める意義がある³⁾。
Enco :

Cmab :

- 皮膚悪性腫瘍
- 眼障害
- 手掌・足底発赤知覚不全症候群
- 腫瘍崩壊症候群
本剤の適応判定に利用可能なコンパニオン診断薬は以下のとおり。
- MEBGEN RASKET-B キット
- therascreen BRAF V600E変異検出キットRGQ 「キアゲン」
- Idylla RAS-BRAF Mutation Test 「ニチレイバイオ」
- Guardant360 CDx がん遺伝子パネル
最終更新 : 2025年11月27日
執筆 : 京都桂病院薬剤科 塩飽英二
監修医師 : 神奈川県立がんセンター 消化器内科 (消化管) 部長 大隅寛木
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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