本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではありません.  個々の患者の病態や､ 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上､ 利用者の判断と責任でご利用ください.

ポイント

• 嘔気･嘔吐＝消化器疾患ではない！
• 緊急性の高い非消化器系を見逃さない！
• ACSや妊娠､頭蓋内疾患､甲状腺グリーゼ！
• これらの鑑別を考慮して問診･診察を行う！

診断アルゴリズム

語呂合わせ ｢NAVSEA｣

治療｜原因疾患への対応が基本

• 経口摂取が困難であれば補液を行う.
• 長期の嘔吐では電解質の補正を行う.
• 原因不明､ 原疾患治療が困難なら対症療法.
• それぞれの制吐剤の特徴を覚えると良い.

急性の症状に対してよく利用する薬剤

• プリンペラン（メトクロプラミド）
• ナウゼリン（ドンペリドン）
• ノバミン（プロクロルペラジン）
• トラベルミン配合錠
• ブスコパン（ブチルスコポラミン）

制吐剤一覧

Achm (ムスカリン受容体拮抗薬)

• 機序：嘔吐中枢　※保険適応なし
• ブスコパン（ブチルスコポラミン）

D2 (ドパミン受容体)

1）D2受容体+5-HT3受容体

• 機序：CTZ化学受容体誘発帯
• プリンペラン（メトクロプラミド）
• ナウゼリン（ドンペリドン）

胃内容遅延に有効とされる.我が国ではメトクロプラミドが頻用される. ドンペリドンの方が脳に移行しにくく､錐体外路症状が出にくいとされる.

2）D2受容体+H1受容体

• ノバミン（プロクロルペラジン）
• コントミン（クロルプロマジン）

カテコラミンにも作用し､低血圧の副作用.

3）D2受容体のCTZによく効く

• セレネース（ハロペリドール）

保険適応なし､半減期長く1.5mg1錠就前. 副作用強い (狡猾､眠気､錐体外路症状).

H1 (ヒスタミン受容体拮抗薬)

• 機序：嘔吐中枢, 前庭神経核
• トラベルミン配合錠
• ドラマミン（ジメンヒドリナート）
• アタラックスP（ヒドロキシジンパモ酸塩）

前庭神経系で誘発される嘔気･嘔吐はヒスタミン受容体を介する. そのため､ めまいや乗物酔いに続発する嘔気･嘔吐の治療に推奨.

5−HT3 (セロトニン受容体拮抗薬)

• 機序：消化管迷走神経､ 嘔吐中枢､ CTZ
• カイトリル（オンダンセトロン）
• ゾフラン（グラニセトロン）
• アロキシ（パロノセトロン）

本邦では､ 抗がん剤に伴う嘔吐や腹部放射線治療にのみ保険適応. 急性の嘔吐に効果的で､抗癌剤による嘔吐に対し有効率70−90％.

NH1 (ニューロキニン受容体)

• 機序：疑核周辺部網様体
• イメンド（アプレピタント）

HT3拮抗薬と異なり遅発性嘔吐にも効く.

ステロイド

• 機序：不明､HT3拮抗薬と併用
• デカドロン（デキサメタゾン)

頭蓋内圧亢進に対して抗浮腫作用期待. 

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最終更新：2021年7月17日

監修医師：聖路加国際病院救急部 清水真人