概要
監修医師
2024年9月24日に 「化学療法歴のあるホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌」 を対象として承認、 2024年11月20日薬価収載 (200mg1瓶 18万7195円 /1日 4万4570円)
本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではありません。 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください。

薬剤情報

トロデルビ® (添付文書¹⁾ / 製品情報サイト*)

抗TROP2抗体薬物複合体 サシツズマブ ゴビテカン
*ギリアド・サイエンシズ株式会社の外部サイトへ遷移します

投与スケジュール

【1コース】21日間
【催吐性】 高度催吐性*
【FN発症】中等度リスク(発症率10~20%)**
トロデルビ®添付文書、ASCENT試験より

1回10mg/kgを、 21日間を1サイクルとし、 各サイクルの1日目及び8日目に点滴静注する。

投与時間は3時間とし、 初回投与の忍容性が良好であれば、 2回目以降は1~2時間に短縮できる。 なお、 患者の状態により適宜減量する。

輸液バッグを遮光して投与。 タキサン系抗悪性腫瘍剤による治療歴のある患者を対象とする。

トロデルビ®添付文書 2024年9月作成 第1版、 N Engl J Med. 2021 Apr 22;384(16):1529-1541より引用、作図
*NCCN Guideline Ver 2.2024. Antiemesis **NCCN Guidelines Ver1.2025. Hematopoietic Growth Factors

Key Data|臨床試験結果

海外第III相臨床試験 (ASCENT) と国内第II相臨床試験 (ASCENT-J02) の結果に基づく承認である。

ASCENT試験²⁾³⁾

2つ以上の化学療法歴のある*¹ホルモン受容体陰性かつHER2陰性*²の手術不能又は再発乳癌患者529例を対象に、 本剤 (267例) と医師選択治療*³ (262例) の有効性及び安全性を比較した海外第Ⅲ相無作為化非盲検比較試験
*¹ 手術可能な乳癌に対する周術期治療 (術前or術後) 終了後12ヵ月以内に疾患進行が認められた場合、 当該周術期治療を化学療法歴の1つとみなすこととされた。 また、 周術期又は進行乳癌に対してタキサン系による治療歴を有する患者が対象とされた。
*² IHC法0、 IHC法1+、 又はIHC法2+かつISH法陰性の患者
*³ エリブリン139例、 カペシタビン33例、 ゲムシタビン38例、 ビノレルビン52例の単独投与

有効性|本剤投与群 最終解析結果³⁾

追跡期間中央値11.2ヵ月 (医師選択治療群は6.3ヵ月)

- mPFS : 4.8ヵ月

  医師選択治療群 1.7ヵ月、HR 0.41 (95%CI 0.33-0.52)

- mOS : 11.8ヵ月

  医師選択治療群群 6.9ヵ月、HR 0.51 (95%CI 0.42-0.63)

安全性|本剤投与群 最終解析結果³⁾

安全性プロファイルは管理可能であり、 治療関連死亡は認められなかった。 有害事象 (AE) による治療中止率は5%以下であった。

各プロトコル

用量レベル

トロデルビ®添付文書 2024年9月作成 第1版より引用

投与基準

好中球数 (各サイクル)

Day1 ≧1,500/mm³、 Day8 ≧1,000/mm³

各サイクル Day8の投与予定日に1,000/mm³未満で、 1週間を超えても1,000/mm³以上に回復しない場合には、 次回投与は1,500/mm³以上に回復してから再開する。

トロデルビ®添付文書 2024年9月作成 第1版より引用

休薬、減量、中止基準

トロデルビ®添付文書 2024年9月作成 第1版より引用

レジメンの特徴と注意点

本レジメンは、 化学療法歴があり、 タキサン系抗悪性腫瘍剤による治療歴を有するホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能または再発乳癌に適用される。

作用機序

サシツズマブ ゴビテカンは、 TROP-2に対するヒト化モノクローナル抗体に、 トポイソメラーゼI阻害薬SN-38をリンカーで結合させた抗体薬物複合体である。 TROP-2陽性腫瘍細胞に取り込まれた後、 SN-38が細胞内で遊離し、 DNA合成を阻害して抗腫瘍効果を発揮する。

UGT1A1遺伝子多型を有する患者

UGT1A1 (本剤を構成するSN-38の主な代謝酵素) によるSN-38の代謝が減少し、 重篤な副作用が発現する可能性がある。 以下に臨床試験の報告例を示す。

UGT1A1*6または*28のホモ接合体、 あるいは両アレルの複合ヘテロ接合体を有する患者では、 SN-38の代謝が低下し、 骨髄抑制や下痢などの重篤な副作用のリスクがあるため、 十分に注意すること。
トロデルビ®添付文書 2024年9月作成 第1版より引用

薬剤師からのワンポイントアドバイス

NTT東日本関東病院薬剤部 兼平暖先生

2025年5月現在、 ホルモン受容体陽性/HER2陰性乳癌に対しても承認申請中であり (TROPiCS-02試験、 ASCENTJ02試験)、 進行トリプルネガティブ乳癌における1次治療としては、 PD-L1発現陽性例に対するペムブロリズマブ併用 (ASCENT-04/KEYNOTE-D19試験) およびPD-L1陰性例に対する単剤投与 (ASCENT-03試験) でPFS延長が報告されている。

催吐性リスクは、 日本の制吐薬ガイドライン (2023年版) では中等度、 NCCNガイドラインでは高度に分類されている。

発熱性好中球減少症はASCENT試験で5.8%に認められ、 G-CSF製剤の使用はリスク因子や好中球減少症の発現状況に応じて検討される。

UGT1A1*28/*28型患者ではGrade≧3の好中球減少症、 発熱性好中球減少症、 貧血、 下痢などの発現率が高い傾向にあるが、 有害事象発現との明確な関連は確立しておらず、 遺伝子多型検査は必須とはされていない。

レジメン適用時の注意事項¹⁾

骨髄抑制・感染症 : 投与前後に定期的な血液検査を行い、 必要に応じてG-CSF製剤の使用を検討。

Infusion reaction : 重度の反応に備え緊急対応体制下で投与し、 予防のために解熱鎮痛剤・抗ヒスタミン薬・H₂受容体拮抗薬の前投与を考慮。

治験時には、 必要に応じてコルチコステロイドの前投与も許容されていた。

間質性肺疾患 : 投与時は呼吸困難・咳嗽・発熱などの初期症状に留意し、 定期的に胸部画像検査を実施。

RMP【重要な特定されたリスク】

トロデルビ® 医薬品リスク管理計画書 (RMP)

- 骨髄抑制

- 感染症

- 重度の下痢・腸炎

- Infusion reaction

- 間質性肺疾患

出典

1) ギリアド・サイエンシズ株式会社. トロデルビ®添付文書 2024年9月作成 第1版

2) N Engl J Med. 2021;384(16):1529-1541.

3) J Clin Oncol. 2024;42(15):1738-1744.

最終更新 : 2025年6月30日
監修医師 : HOKUTO編集部監修医師

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本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではありません。 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください。

薬剤情報

トロデルビ® (添付文書¹⁾ / 製品情報サイト*)

抗TROP2抗体薬物複合体 サシツズマブ ゴビテカン
*ギリアド・サイエンシズ株式会社の外部サイトへ遷移します

投与スケジュール

【1コース】21日間
【催吐性】 高度催吐性*
【FN発症】中等度リスク(発症率10~20%)**
トロデルビ®添付文書、ASCENT試験より

1回10mg/kgを、 21日間を1サイクルとし、 各サイクルの1日目及び8日目に点滴静注する。

投与時間は3時間とし、 初回投与の忍容性が良好であれば、 2回目以降は1~2時間に短縮できる。 なお、 患者の状態により適宜減量する。

輸液バッグを遮光して投与。 タキサン系抗悪性腫瘍剤による治療歴のある患者を対象とする。

トロデルビ®添付文書 2024年9月作成 第1版、 N Engl J Med. 2021 Apr 22;384(16):1529-1541より引用、作図
*NCCN Guideline Ver 2.2024. Antiemesis **NCCN Guidelines Ver1.2025. Hematopoietic Growth Factors

Key Data|臨床試験結果

海外第III相臨床試験 (ASCENT) と国内第II相臨床試験 (ASCENT-J02) の結果に基づく承認である。

ASCENT試験²⁾³⁾

2つ以上の化学療法歴のある*¹ホルモン受容体陰性かつHER2陰性*²の手術不能又は再発乳癌患者529例を対象に、 本剤 (267例) と医師選択治療*³ (262例) の有効性及び安全性を比較した海外第Ⅲ相無作為化非盲検比較試験
*¹ 手術可能な乳癌に対する周術期治療 (術前or術後) 終了後12ヵ月以内に疾患進行が認められた場合、 当該周術期治療を化学療法歴の1つとみなすこととされた。 また、 周術期又は進行乳癌に対してタキサン系による治療歴を有する患者が対象とされた。
*² IHC法0、 IHC法1+、 又はIHC法2+かつISH法陰性の患者
*³ エリブリン139例、 カペシタビン33例、 ゲムシタビン38例、 ビノレルビン52例の単独投与

有効性|本剤投与群 最終解析結果³⁾

追跡期間中央値11.2ヵ月 (医師選択治療群は6.3ヵ月)

- mPFS : 4.8ヵ月

  医師選択治療群 1.7ヵ月、HR 0.41 (95%CI 0.33-0.52)

- mOS : 11.8ヵ月

  医師選択治療群群 6.9ヵ月、HR 0.51 (95%CI 0.42-0.63)

安全性|本剤投与群 最終解析結果³⁾

安全性プロファイルは管理可能であり、 治療関連死亡は認められなかった。 有害事象 (AE) による治療中止率は5%以下であった。

各プロトコル

用量レベル

トロデルビ®添付文書 2024年9月作成 第1版より引用

投与基準

好中球数 (各サイクル)

Day1 ≧1,500/mm³、 Day8 ≧1,000/mm³

各サイクル Day8の投与予定日に1,000/mm³未満で、 1週間を超えても1,000/mm³以上に回復しない場合には、 次回投与は1,500/mm³以上に回復してから再開する。

トロデルビ®添付文書 2024年9月作成 第1版より引用

休薬、減量、中止基準

トロデルビ®添付文書 2024年9月作成 第1版より引用

レジメンの特徴と注意点

本レジメンは、 化学療法歴があり、 タキサン系抗悪性腫瘍剤による治療歴を有するホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能または再発乳癌に適用される。

作用機序

サシツズマブ ゴビテカンは、 TROP-2に対するヒト化モノクローナル抗体に、 トポイソメラーゼI阻害薬SN-38をリンカーで結合させた抗体薬物複合体である。 TROP-2陽性腫瘍細胞に取り込まれた後、 SN-38が細胞内で遊離し、 DNA合成を阻害して抗腫瘍効果を発揮する。

UGT1A1遺伝子多型を有する患者

UGT1A1 (本剤を構成するSN-38の主な代謝酵素) によるSN-38の代謝が減少し、 重篤な副作用が発現する可能性がある。 以下に臨床試験の報告例を示す。

UGT1A1*6または*28のホモ接合体、 あるいは両アレルの複合ヘテロ接合体を有する患者では、 SN-38の代謝が低下し、 骨髄抑制や下痢などの重篤な副作用のリスクがあるため、 十分に注意すること。
トロデルビ®添付文書 2024年9月作成 第1版より引用

薬剤師からのワンポイントアドバイス

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2025年5月現在、 ホルモン受容体陽性/HER2陰性乳癌に対しても承認申請中であり (TROPiCS-02試験、 ASCENTJ02試験)、 進行トリプルネガティブ乳癌における1次治療としては、 PD-L1発現陽性例に対するペムブロリズマブ併用 (ASCENT-04/KEYNOTE-D19試験) およびPD-L1陰性例に対する単剤投与 (ASCENT-03試験) でPFS延長が報告されている。

催吐性リスクは、 日本の制吐薬ガイドライン (2023年版) では中等度、 NCCNガイドラインでは高度に分類されている。

発熱性好中球減少症はASCENT試験で5.8%に認められ、 G-CSF製剤の使用はリスク因子や好中球減少症の発現状況に応じて検討される。

UGT1A1*28/*28型患者ではGrade≧3の好中球減少症、 発熱性好中球減少症、 貧血、 下痢などの発現率が高い傾向にあるが、 有害事象発現との明確な関連は確立しておらず、 遺伝子多型検査は必須とはされていない。

レジメン適用時の注意事項¹⁾

骨髄抑制・感染症 : 投与前後に定期的な血液検査を行い、 必要に応じてG-CSF製剤の使用を検討。

Infusion reaction : 重度の反応に備え緊急対応体制下で投与し、 予防のために解熱鎮痛剤・抗ヒスタミン薬・H₂受容体拮抗薬の前投与を考慮。

治験時には、 必要に応じてコルチコステロイドの前投与も許容されていた。

間質性肺疾患 : 投与時は呼吸困難・咳嗽・発熱などの初期症状に留意し、 定期的に胸部画像検査を実施。

RMP【重要な特定されたリスク】

トロデルビ® 医薬品リスク管理計画書 (RMP)

- 骨髄抑制

- 感染症

- 重度の下痢・腸炎

- Infusion reaction

- 間質性肺疾患

出典

1) ギリアド・サイエンシズ株式会社. トロデルビ®添付文書 2024年9月作成 第1版

2) N Engl J Med. 2021;384(16):1529-1541.

3) J Clin Oncol. 2024;42(15):1738-1744.

最終更新 : 2025年6月30日
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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