Granulosa cell tumor
顆粒膜細胞腫 (granulosa cell tumor, GCT) は、 卵巣性索間質腫瘍 (sex cord-stromal tumors, SCST) の一種であり、 全卵巣腫瘍の2~5%を占める¹⁾。 性成熟に関与する顆粒膜細胞に由来し、 エストロゲンの過剰産生を特徴とする。
卵巣GCTには2つの病型が存在する¹⁾。
年齢および月経の状態によって異なる¹⁾。
若年型の大部分はI期と診断され、 その場合、 片側卵巣摘出術で妊孕性を温存できる。 しかし、 成人型では、 子宮全摘術および片側卵管卵巣摘出術を含む広範な手術が必要となる¹⁾。
成人型の約20%は、 最初の診断から中央値で5年後に再発する。 再発時も外科的切除を検討し、 手術不能または転移性疾患に対する治療を考慮する場合に、 全身化学療法を計画する¹⁾。
希少癌であることから、 抗癌薬のエビデンスは小規模なレトロスペクティブ研究やケースシリーズに依存する。
GCTに対する化学療法は、 上皮性卵巣癌のレジメンを参考にする。 実臨床では、 TC (パクリタキセル + カルボプラチン) 療法や、 非上皮性腫瘍に準じてBEP (ブレオマイシン + エトポシド + シスプラチン) 療法が選択されることが多い。
TC療法のBEP療法に対する非劣性を検討した第II相無作為化比較試験 (n=63)。 主要評価項目の無増悪生存期間 (PFS) について、 中間解析でTC群は非劣性を証明できず、 試験は中止となった。
PFS中央値: TC群27.7ヵ月 vs BEP群19.7ヵ月 (ハザード比 [HR] 1.11*、 95% CI 0.57-2.13)。
Grade3以上 有害事象: TC群77% vs BEP群90%
TC療法は有害事象が少なく、 高齢者やBEP療法が適用できない患者に考慮できる。
GCTの約80%がエストロゲン受容体陽性であり、 ホルモン療法が奏効する症例がある。
アロマターゼ阻害薬
アナストロゾール: 単群第II相試験PARAGON / ANZGOG0903で、 再発GCTに対して、 12週時点の臨床有益率78.9%、 PFS中央値8.6ヵ月が報告されている³⁾。 レトロゾールが選択されることもある¹⁾。
リュープロレリン
再発GCTに対して、 6ヵ月時点の臨床有益率66%、 PFS中央値10.3ヵ月が報告されている⁴⁾。
アロマターゼ阻害薬と併用されることがある。
メドロキシプロゲステロン
エストロゲン拮抗作用を持つため、 ホルモン療法の一つとして使用されることがある。
【参考】セルトライディッヒ細胞腫瘍の治療
セルトライディッヒ細胞腫瘍はGCTと同様に性索間質腫瘍に分類されるが、 発生頻度は全卵巣腫瘍の0.5%未満とさらに希少である⁵⁾。 治療法として、 GCTと同様にBEP療法とTC療法が選択される。
顆粒膜細胞腫は希少がんであり、 がんセンターや大学病院レベルでも年に1名いるかどうかといったまれながんである。 顆粒膜細胞腫の薬物療法のエビデンスは非常に乏しく、 ほとんどがケースレポートもしくは、 ケースシリーズであり、 第II相試験がわずかにある程度で、 第III相試験 (無作為化比較試験) は皆無である。 したがって、 顆粒膜細胞腫の標準治療といえるだけの強いエビデンスではないが、 これまでのエビデンスから、 上記で示した化学療法やホルモン療法などが一般に使用される。
進行が比較的緩徐なことも多いため、 薬物療法だけでなく、 転移巣に対しては、 手術療法や放射線治療も選択肢になることを知っておくべきである。 また、 ホルモン受容体陽性例では、 ホルモン療法も奏効が期待できる。
1) J Immunother Precis Oncol. 2024 Aug 1;7(4):263–271.
2) Gynecol Oncol. 2024 Nov:190:283-290.
3) Gynecol Oncol. 2021 Oct;163(1):72-78.
4) Am J Obstet Gynecol. 2023 Jun;228(6):724.e1-724.e9.
5) J Ovarian Res. 2021 Nov 4;14(1):150.
最終更新日 : 2025年3月21日
監修医師 : 日本医科大学 武蔵小杉病院 腫瘍内科教授 勝俣 範之先生
顆粒膜細胞腫 (granulosa cell tumor, GCT) は、 卵巣性索間質腫瘍 (sex cord-stromal tumors, SCST) の一種であり、 全卵巣腫瘍の2~5%を占める¹⁾。 性成熟に関与する顆粒膜細胞に由来し、 エストロゲンの過剰産生を特徴とする。
卵巣GCTには2つの病型が存在する¹⁾。
年齢および月経の状態によって異なる¹⁾。
若年型の大部分はI期と診断され、 その場合、 片側卵巣摘出術で妊孕性を温存できる。 しかし、 成人型では、 子宮全摘術および片側卵管卵巣摘出術を含む広範な手術が必要となる¹⁾。
成人型の約20%は、 最初の診断から中央値で5年後に再発する。 再発時も外科的切除を検討し、 手術不能または転移性疾患に対する治療を考慮する場合に、 全身化学療法を計画する¹⁾。
希少癌であることから、 抗癌薬のエビデンスは小規模なレトロスペクティブ研究やケースシリーズに依存する。
GCTに対する化学療法は、 上皮性卵巣癌のレジメンを参考にする。 実臨床では、 TC (パクリタキセル + カルボプラチン) 療法や、 非上皮性腫瘍に準じてBEP (ブレオマイシン + エトポシド + シスプラチン) 療法が選択されることが多い。
TC療法のBEP療法に対する非劣性を検討した第II相無作為化比較試験 (n=63)。 主要評価項目の無増悪生存期間 (PFS) について、 中間解析でTC群は非劣性を証明できず、 試験は中止となった。
PFS中央値: TC群27.7ヵ月 vs BEP群19.7ヵ月 (ハザード比 [HR] 1.11*、 95% CI 0.57-2.13)。
Grade3以上 有害事象: TC群77% vs BEP群90%
TC療法は有害事象が少なく、 高齢者やBEP療法が適用できない患者に考慮できる。
GCTの約80%がエストロゲン受容体陽性であり、 ホルモン療法が奏効する症例がある。
アロマターゼ阻害薬
アナストロゾール: 単群第II相試験PARAGON / ANZGOG0903で、 再発GCTに対して、 12週時点の臨床有益率78.9%、 PFS中央値8.6ヵ月が報告されている³⁾。 レトロゾールが選択されることもある¹⁾。
リュープロレリン
再発GCTに対して、 6ヵ月時点の臨床有益率66%、 PFS中央値10.3ヵ月が報告されている⁴⁾。
アロマターゼ阻害薬と併用されることがある。
メドロキシプロゲステロン
エストロゲン拮抗作用を持つため、 ホルモン療法の一つとして使用されることがある。
【参考】セルトライディッヒ細胞腫瘍の治療
セルトライディッヒ細胞腫瘍はGCTと同様に性索間質腫瘍に分類されるが、 発生頻度は全卵巣腫瘍の0.5%未満とさらに希少である⁵⁾。 治療法として、 GCTと同様にBEP療法とTC療法が選択される。
顆粒膜細胞腫は希少がんであり、 がんセンターや大学病院レベルでも年に1名いるかどうかといったまれながんである。 顆粒膜細胞腫の薬物療法のエビデンスは非常に乏しく、 ほとんどがケースレポートもしくは、 ケースシリーズであり、 第II相試験がわずかにある程度で、 第III相試験 (無作為化比較試験) は皆無である。 したがって、 顆粒膜細胞腫の標準治療といえるだけの強いエビデンスではないが、 これまでのエビデンスから、 上記で示した化学療法やホルモン療法などが一般に使用される。
進行が比較的緩徐なことも多いため、 薬物療法だけでなく、 転移巣に対しては、 手術療法や放射線治療も選択肢になることを知っておくべきである。 また、 ホルモン受容体陽性例では、 ホルモン療法も奏効が期待できる。
1) J Immunother Precis Oncol. 2024 Aug 1;7(4):263–271.
2) Gynecol Oncol. 2024 Nov:190:283-290.
3) Gynecol Oncol. 2021 Oct;163(1):72-78.
4) Am J Obstet Gynecol. 2023 Jun;228(6):724.e1-724.e9.
5) J Ovarian Res. 2021 Nov 4;14(1):150.
最終更新日 : 2025年3月21日
監修医師 : 日本医科大学 武蔵小杉病院 腫瘍内科教授 勝俣 範之先生
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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