Mckieらは、 合併症のない胆石症で胆嚢摘出術を実施した小児を対象に、 抗菌薬予防投与が手術部位感染 (SSI) の発生率に及ぼす影響をコホート研究で検討した。 その結果、 予防投与によりSSIのリスクが有意に低下したが、 広域スペクトラム抗菌薬の使用にはセファゾリン単独と比較して優れた転帰との関連は認められなかった。 この研究結果はJAMA Pediatr誌に発表された。
病院ごとの予防投与率が0~100%と大きく異なっているため、 プラクティスに大きな差があります。 調整オッズ比0.28ほどの効果は期待できないかもしれません。
米国感染症学会 (IDSA) のコンセンサスガイドラインでは、 合併症のない胆石症の手術時に抗菌薬予防投与を推奨していないが、 その根拠は成人患者を対象とした研究から得られたものである。
そこで、 胆嚢摘出術を受けた小児のうち、 抗菌薬予防投与を実施した小児と実施しなかった小児の手術部位感染 (SSI) の結果をコホート研究で比較した。
National Surgical Quality Improvement Program-Pediatricに参加している141病院で、 2021年1月~22年12月に合併症のない胆石症に対して胆嚢摘出術を実施した18歳未満の患者 (急性胆嚢炎、 膵炎、 胆管結石症、 血液疾患、 緊急手術の診断は除外) 2,334例を対象とした。 このうち、 2,025例 (90.6%) で抗菌薬予防投与が実施された。
主な評価項目は、 術後30日時点のSSIと再入院であった。
予防投与を実施する可能性に重み付けした傾向スコアを使用して、 症例の重症度、 手術期間、 退院時の診断および患者の特徴に基づきグループ間のバランスをとった。
転帰と予防投与との関連性は、 病院レベルのクラスタリングを制御するため、 病院によるランダム効果による治療の逆確率で重み付けしたロジスティック回帰モデルを用いて推定された。
また、 2次解析として、 広域スペクトラム抗菌薬による予防投与と転帰との関連性を検討した。
投与された抗菌薬のうち、 セファゾリンが69.2% (1,401例) と最も多く使用されており、 広域スペクトラム抗菌薬は27.6% (559例) で使用された。
重み付け傾向コホートでは、 予防投与を実施した小児のSSI発生率は、 実施しなかった小児と比べて有意に低かった (0.9% [18/2,016例] vs 3.7% [7.8/212例]、 調整OR 0.28 [95%CI 0.11-0.70] )。
2次解析で、 セファゾリンと広域スペクトラム抗菌薬をそれぞれを投与した小児のSSI発生率は同程度であった (1.0% [13.9/1,399例] vs 0.5% [2.9/558例]、 調整OR 0.54 [95%CI 0.15-1.95] )。
著者らは 「今回の結果は、 緊急を要さない胆嚢摘出術を受ける小児に対する抗菌薬予防投与を支持するものであった。 一方、 広域スペクトラム抗菌薬の使用には、 セファゾリン単独と比較して良好な転帰との関連は認められなかった」 と報告している。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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