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HOKUTO編集部

1日前

【NCCNガイドライン】多発性骨髄腫の最新治療戦略

【NCCNガイドライン】多発性骨髄腫の最新治療戦略
本記事では、 NCCNガイドラインの最新版 (Version 1.2025) について、 Version 4.2024からの変更点にフォーカスし、 診療に活用しやすい情報を整理する。 
本稿はNCCNガイドライン Version 1.2025を基に作成しています (閲覧日 : 2025年3月12日)

解説医師

【NCCNガイドライン】多発性骨髄腫の最新治療戦略

改訂のポイント

  • ダラツムマブを含む4剤併用療法が1次治療で推奨強化
  • イサツキシマブを含む併用療法が1次治療の推奨に新規追加
  • 再発時の治療選択肢に 「抗CD38抗体抵抗性」 の分類が追加
  • CAR-T細胞療法と二重特異性抗体 (BsAb) 治療中の感染対策が追加

病期分類

予後予測に活用される病期分類は以下の通り。

R2-ISSは新たに1q増幅 (1q+) をリスク因子として追加し、 NDMM患者のリスク層別化をより精密に行う新たな基準
NDMM: Newly Diagnosed Multiple Myeloma

疾患進行や再発リスクが高い患者

初発時

  • R-ISS III
  • 髄外病変
  • 末梢血形質細胞の出現
末梢血中の形質細胞≧ 5%の場合、 形質細胞白血病と定義
  • 細胞遺伝学的異常
以下を2つ以上を有する場合、 疾患進行/再発リスクが高い

- del(1p32)

- t(4;14)

- t(14;16)

- t(14;20)

- del(17p) / monosomy 17 / TP53変異

- 1q21ゲイン/増幅

- MYC転座

  • 高リスク遺伝子発現プロファイル

再発時

  • 移植および維持療法を実施した場合、 初回治療から2年以内の再発
  • 非移植治療を行った場合、 18ヵ月以内の再発
  • 1qゲイン/増幅やdel(17p)/TP53変異の獲得
  • 再発時の髄外病変や末梢血形質細胞の出現
末梢血中の形質細胞≧ 5%の場合、 形質細胞白血病と定義

治療の流れ

NDMM : 移植適応あり

  • 導入療法が奏効後、 自家移植 (ASCT) 実施
推奨レジメン : D-VRd (カテゴリー1) 
その他の推奨レジメン : VRd (カテゴリー1)、 KRd、 ISA-VRd
D-VRd (ダラツムマブ+ボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン)
VRd (ボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン)
KRd (カルフィルゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン)
ISA-VRd (イサツキシマブ+ボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン)
  • 高リスク例はタンデム移植や同種移植考慮
  • 維持療法
推奨レジメン : レナリドミド (カテゴリー1)

NDMM : 移植適応なし

推奨レジメン : D-Rd、 ISA-VRd、 VRd
(全てカテゴリー1) 
D-Rd (ダラツムマブ+レナリドミド+デキサメタゾン)
ISA+VRdは、 80歳未満の非フレイル患者向け
  • 2025年2月、 日本でも ISA-VRd が保険適用となった。
  • 一般的に、 1次治療は病勢進行まで継続し、 適宜用量・投与期間を調整する。
  • Version 1.2025では、 D-MPBがその他の推奨レジメンから除外され (北米ではメルファランを含むレジメンはほとんど使用されないため)、 VRd-liteがフレイル患者向けに変更になった。
D-MPB (ダラツムマブ+ボルテゾミブ+メルファラン+プレドニゾン)
VRd-lite (減量調整したVRd療法)

RRMM : 前治療歴が1-3レジメン

RRMM : Relapsed and refractory multiple myeloma
推奨レジメン (下表) 
【NCCNガイドライン】多発性骨髄腫の最新治療戦略
参考文献¹⁾を基に編集部作成

CAR-T細胞療法の適応

免疫調節薬 (IMiD) とプロテアソーム阻害薬 (PI) を含む1レジメンの前治療歴があり、 レナリドミド抵抗性の場合

Cilta-cel (カテゴリー1)
シルタカブタゲン オートルユーセル 

抗CD38抗体、 IMiD、 PIを含む2レジメンの前治療歴がある場合

Ide-cel (カテゴリー1) 
イデカブタゲン ビクルユーセル

RRMM : 前治療歴が3レジメン

推奨レジメン : CAR-T細胞療法、 BsAb
BsAb (二重特異性抗体、 日本ではエルラナタマブ) は、 抗CD38モノクローナル抗体、 PI、 IMiDを含む少なくとも4回の前治療歴のある患者に対して推奨

感染症対策

感染リスク増加の因子

  • 一般的な感染リスクの増加

- ASCT

- CAR-T細胞療法

- BsAb

- 抗CD38抗体

- 細胞障害性抗癌薬

  • 細菌感染リスクの増加

- 多発性骨髄腫

- CAR-T細胞療法

- BsAb

  • ウイルス感染リスクの増加

- PI

- モノクローナル抗体

- CAR-T細胞療法

- BsAb

  • 真菌感染リスクの増加

- 高用量ステロイド

- 遷延する好中球減少

- CAR-T細胞療法

- BsAb

CAR-T・BsAb治療中の感染予防

【NCCNガイドライン】多発性骨髄腫の最新治療戦略
参考文献¹⁾を基に編集部作成。 原文には上記治療に加え、 ASCT、 その他の臨床状況に対する感染予防も記載されている。

出典

  1. NCCN Guidelines®), Multiple Myeloma, Version 1.2025

関連コンテンツ

📝 レジメン

BLd (VRd)

KRd

ISA-VRd

DLd (DRd)

D-MPB (D-VMP)

BLd-Lite (VRd-Lite)

PBd (PVd)

DCd (DKd)

ISA-Kd

DBd (DVd)

DPd

EPd

ISA-Pd

Cilta-cel (Ciltacabtagene autoleucel)

Ide-cel (Idecabtagene vicleucel)

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「ヘムサイト®」 販売開始

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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