Cortelliniらは､ PD-L1免疫染色による腫瘍細胞における陽性率 (TPS) ≧50％の進行非小細胞肺癌 (NSCLC) 患者を対象に､ ペムブロリズマブ単剤を用いた初回治療の5年全生存(OS) 率とその決定因子を評価する実臨床の多施設共同後ろ向きコホート研究を実施した｡ その結果､ 5年OS率は既存の臨床試験結果と同程度であり､ 全身状態 (ECOG PS)､ 年齢､ PD-L1 TPSが主要な予後予測因子であることが示された｡ 同研究結果はJ Immunother Cancer誌に発表された｡ 

📘原著論文

Determinants of 5-year survival in patients with advanced NSCLC with PD-L1≥50% treated with first-line pembrolizumab outside of clinical trials: results from the Pembro-real 5Y global registry. J Immunother Cancer. 2025 Feb 4;13(2):e010674. PMID: 39904562.

👨‍⚕️HOKUTO監修医コメント

論文の ｢この研究が及ぼす影響｣ の項に､ リアルワールドデータの意義が教科書的に記載されていましたので紹介します｡

"By providing real-world evidence, this study bridges the gap between trial data and clinical practice."

背景

Pembro単剤療法の長期有効性は不明

KEYNOTE-024試験の結果¹⁾より､ ペムブロリズマブ単剤療法は､ PD-L1 TPS≧50％の進行NSCLC患者の1次治療において標準治療として確立している｡ しかし､ 実臨床の広範な患者における長期有効性に関するデータは不明のままである｡

そこで､ 実臨床における長期生存とその予測因子を明らかにすることを目的として､ 後ろ向きコホート研究を実施した｡

研究デザイン

5年OS率および主要な決定因子を解析

実臨床の後ろ向きコホートPembro-real 5Yにおいて､ 14ヵ国61施設におけるPD-L1 TPS≧50％の進行NSCLC患者1,050例が登録され､ ペムブロリズマブ単剤療法の5年OS率を､ KEYNOTE-024試験の実験群から個別被験者データ (IPD) を抽出したKN024 IPDコホートと比較した｡

また､ 臨床試験結果の再現性をさらに評価するため､ KN024 IPDコホートから以下を除外して ｢KN024類似コホート｣ を再構築した｡

• ECOG PS≧2の患者
• プレドニゾロン10mg相当以上の副腎皮質ステロイドを必要とする患者
• 上皮成長因子受容体/未分化リンパ腫キナーゼ遺伝子型が陽性または不明の患者
• 自己免疫疾患の既往のある患者

さらに､ 条件付き推論ツリーにより､ 長期的な有効性の決定因子を階層的に解析した｡

結果

5年OSは26.9%､ KN024類似コホートと同程度

追跡期間中央値は70.3ヵ月であった｡

Pembro-real 5Yにおける5年OS率は26.9％ (95％CI 23.8-30.2％)､ OS中央値は21.8ヵ月 (95％CI 19.1-25.7ヵ月) であり､ 完全奏効を達成した32例 (3.0％) がデータカットオフ時点で無増悪のままであった｡

KN024類似コホートの5年OS率は29.3％ (95％CI 25.5-33.6％)､ OS中央値は27.5ヵ月 (95％CI 22.8-31.3ヵ月) であった｡

Pembro-real 5Y全体およびKN024類似コホートのいずれも､ KN024 IPDコホートと比較してOSに有意差は認められなかった｡

ECOG PSなどを主要な決定因子に同定

条件付き推論ツリー解析により､ 5年OS率の主要な決定因子としてECOG PS､ 年齢､ PD-L1 TPSが同定された｡

安全性プロファイルは管理可能

データカットオフまでに1,015例 (96.7％) が治療中止に至った｡ 659例 (64.9％) が病勢進行､ 156例 (15.4％) が毒性､ 77例 (7.6％) が治療終了､ 106例 (10.4％) がその他の理由であった｡

また､ 最低24ヵ月の治療を受けた患者222例 (21.1％) における治療中止に至った理由別の5年OS率は以下のとおりであった｡

• 病勢進行 : 31.7％
• 毒性 : 72.7％
• 治療終了 : 78.6％
• その他の理由 : 84.2％

結論

5年OS率は既存の臨床試験結果と同程度､ 主要な予測因子を同定

著者らは ｢本研究により､ 実臨床でのペムブロリズマブ単剤療法の5年OS率と予測因子が示された｡ これらの知見は､ 実臨床における治療戦略の最適化に寄与する可能性がある｣ と報告している｡

<出典>

1) Clin Oncol. 2019 Mar 1;37(7):537-546.