Britoらは、 甲状腺癌の既往がなく心血管イベントリスクが中等度の2型糖尿病患者を対象に、 GLP-1受容体作動薬 (GLP-1RA) 投与と甲状腺癌リスクとの関連を、 target trial emulation*を用いた比較効果研究の事前に規定された2次解析で検討した。 その結果、 GLP-1RA投与患者では、 他クラスの薬剤投与患者と比べて、 甲状腺癌の全体的なリスク増加との有意な関連性が認められなかった。 一方で、 投与開始後1年以内の甲状腺癌リスクは有意に増加し、 早期発見の増加に起因する可能性が示唆された。 本研究はJAMA Otolaryngol Head Neck Surg誌にて発表された。
結果はかなりpositiveに捉えられており、 「GLP-1RAが甲状腺癌を引き起こすというよりも、 医療従事者の警戒心や症例発見の増加による可能性があると考えられる」 と解釈されています。
GLP-1RAの使用増加に伴い、 甲状腺癌リスクとの関連をより明確に理解する必要がある。
そこで本研究では、 GLP-1RAを投与されている2型糖尿病患者における甲状腺癌の発生リスクを、 他クラスの糖尿病治療薬と比較評価した。
全米の民間保険およびメディケア加入者の医療請求データより、 2014年1月1日~21年12月31日にGLP-1RA、 SGLT2阻害薬、 DPP4阻害薬、 SU薬のいずれかの処方データが新たに入力され、 心血管イベントリスクが中等度で甲状腺癌の既往のない2型糖尿病の成人患者35万1,913例が抽出された。
投与されたクラス別の患者の内訳は以下の通りであった。
逆確率重み付けCox比例ハザードモデルを用いて、 GLP-1RA群および他のクラス3群による甲状腺癌の全体および期間別*のHRを推定した。
主要解析として修正intention-to-treat (mITT) 解析、 感度解析としてas-treated解析が実施された。
甲状腺癌と診断された患者数は以下の通りであった。
mITT解析では、 GLP-1RA群は他クラスの薬剤群と比較して甲状腺癌の全体的なリスクの有意な増加は認められなかった (HR 1.24 [95%CI 0.88-1.76])。
一方、 投与開始後1年以内の甲状腺癌リスクはGLP-1RA群で有意に高く (HR 1.85 [95%CI 1.11-3.08])、 as-treated解析にて治療中止または他の薬剤を追加した患者を除外した場合、 リスクの増加はより顕著であった (HR 2.07 [95%CI 1.10-3.95])。
著者らは 「GLP-1RA投与患者では、 他クラスの薬剤投与患者と比べて投与開始後1年以内に新たに甲状腺癌と診断される可能性が高かった。 この結果は、 GLP-1RAによるものというよりも、 早期発見の増加に起因している可能性があり、 関連性の解明にはさらなる研究が必要である」 と報告している。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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