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仲野 兼司(がん研有明病院 総合腫瘍科)

1時間前

【必修】3分でわかる、 前立腺癌のエビデンス2024-2025

【必修】3分でわかる、 前立腺癌のエビデンス2024-2025
2020年代に入り、 前立腺癌の薬物療法は大きな変革を遂げています。 去勢抵抗性前立腺癌 (CRPC) に対するPARP阻害薬や放射性リガンド療法の進展、 さらにはホルモン感受性前立腺癌 (mHSPC) におけるトリプレット療法の確立が、 治療戦略の再構築を促しています。 2025年2月には米国臨床腫瘍学会泌尿器癌シンポジウム (ASCO GU 2025) が開催されました。 本シリーズでは、がん薬物療法の各領域において注目度の高い論文およびトピックについて、がん研有明病院 総合腫瘍科の仲野兼司先生にご解説いただきます。3回目となる本記事では、 前立腺癌の薬物療法に関するトピックをまとめて紹介します。 

mHSPC治療のトピックは?

トリプレット治療の登場

転移を有する去勢感受性前立腺癌 (mHSPC) の治療は、 従来のアンドロゲン除去療法 (ADT) 単独から、 新規抗アンドロゲン薬や化学療法との併用へと移行しています。 近年、 PEACE-1 および ARASENS 試験の結果を受け、 ADT+ドセタキセル+新規抗アンドロゲン薬 (アビラテロンまたはダロルタミド) のトリプレット療法が推奨されるようになりました。

🔹 PEACE-1試験 (ADT+ドセタキセル+アビラテロン vs. ADT+ドセタキセル)

🔹 ARASENS試験 (ADT+ドセタキセル+ダロルタミド vs. ADT+ドセタキセル)

📄 PubMed論文情報 (PEACE-1試験)

📄 PubMed論文情報 (ARASENS試験)

これらのエビデンスを踏まえ、 日本でも2023年2月にADT+ドセタキセル+ダロルタミドが保険承認されています。

CRPC治療のトピックは?

PARP阻害薬の登場

前立腺癌では、 DNA修復機構の異常 (HRD: Homologous Recombination Deficiency) が一定の頻度で認められ、 特にBRCA遺伝子変異陽性例ではPARP阻害薬が有効とされています。 CRPCに対しては、 PROfound試験に基づきオラパリブが既に承認されており、 2024年にはTALAPRO-2試験の結果を受け、 タラゾパリブが日本で承認されました。

🔹 PROfound試験 (オラパリブ vs. 新規抗アンドロゲン薬単独)

エンザルタミドまたはアビラテロン+prednisoneによる治療中に病勢が進行した転移のある去勢抵抗性前立腺癌が対象

🔹 TALAPRO-2試験 (タラゾパリブ+エンザルタミド vs. エンザルタミド単独)

全身治療歴がない転移を有する去勢抵抗性前立腺癌が対象

📄 PubMed論文情報 (PROfound試験)

📄 PubMed論文情報 (TALAPRO-2試験)

PARP阻害薬を使用するには、 BRCA遺伝子変異の検出が必要となります。 癌遺伝子パネル検査は、 BRCA遺伝子変異検出のコンパニオン診断薬 (CDx) として承認されていますが、 原則として標準治療終了後に包括的癌ゲノムプロファイリング (CGP) 検査として実施されます。 そのため、 ホルモン感受性の段階でCDxとしてパネル検査を行うことは難しく、 標準治療の早い段階でCGP検査を実施することが重要です。

詳細については、 日本泌尿器科学会 「前立腺癌におけるPARP阻害薬のコンパニオン診断を実施する際の考え方 (見解書) 改訂第6版」 を参照してください。

今後の展望は?

Lu-177-PSMA-617の有効性と課題

CRPCに対して、 PSMA (前立腺特異的膜抗原) を標的とするルテチウム-177標識PSMAリガンド (Lu-177-PSMA-617) が有望です。 VISION試験の結果より、 後方治療でOS延長効果が示され、 欧米ではすでに承認されています。

また、 後方治療で用いられるカバジタキセルと比較した第II相試験TheraPや、 タキサン未治療例を対象にした第III相試験PSMAfore、 ドセタキセルとの併用を試みた第II相試験UpFrontPSMAなど、 早期治療や併用療法の有効性が示されつつあり、 今後、 適応患者の拡大が期待されます。

🔹 VISION試験 (Lu-177-PSMA-617 vs. 標準治療)

📄 PubMed論文情報 (VISION試験)

📄 PubMed論文情報 (TheraP試験)

📄 PubMed論文情報 (PSMAfore試験)

📄 PubMed論文情報 (UpFrontPSMA試験)

Lu-177-PSMA-617は、 放射性同位元素を利用した内部照射療法であり、 実施可能な施設が限られます。 日本では既に神経内分泌腫瘍に対するペプチド受容体放射性核種療法が承認されていますが、 前立腺癌は対象患者が多く、 十分な医療提供体制の整備が課題です。

新たな癌免疫療法が開発中

前立腺癌では、 これまで免疫チェックポイント阻害薬の有効性は示されていません。 しかし、 新たな癌免疫療法として、 腫瘍関連抗原STEAP-1を標的とするT細胞エンゲージャー (TCE) が注目されており、 早期臨床試験において有効性が示唆されています。

🔹 Xaluritamig (STEAP-1標的TCE)

📄PubMed論文情報

📄PubMed論文情報

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専門 : 腫瘍内科 (骨軟部腫瘍、 頭頸部腫瘍、 原発不明癌、 希少がん、 その他がん薬物療法全般)

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一言 : がん薬物療法に関する論文を中心に、 勉強した内容を記事にしています。 

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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