Vittoriaらは、 イタリアにおけるERBB2 (HER2) 陽性早期乳癌患者を対象に、 腫瘍浸潤リンパ球 (TIL) が予後予測を改善し、 術後療法de-escalationのバイオマーカーとなるかどうかを第Ⅲ相多施設共同無作為化試験ShortHERの10年追跡で検討した。 その結果、 TILの増加に全生存 (OS) 率改善との有意な関連を認め、 TILが高い患者では補助療法をde-escalationしてもOS率が維持されることが明らかとなった。 研究結果はJAMA Oncol誌に発表された。
本文にはlimitationを 「本研究がプロトコールに規定されていない探索的分析であること」 と、 どの論文よりも最短の、 一文のみで記載されています。
ERBB2陽性の早期乳癌は、 患者の多くで長期生存が得られ、 豊富な治療選択肢がある。 そのため、 患者のリスク・ベネフィットに基づく個別化治療戦略を確立する必要があり、 予後予測を改善し、 術後療法のde-escalationの指標となるバイオマーカーの特定が求められている。
この研究では、 腫瘍浸潤リンパ球 (TIL) がそのバイオマーカーになるか第Ⅲ相試験ShortHERで評価した。
イタリアの多施設において、 TIL評価が可能なERBB2陽性早期乳癌女性患者866例が無作為化により以下の2群に割り付けられた。
主要評価項目は遠隔無病生存期間 (DDFS) および全生存期間 (OS) であった。 TILとの関連性をCoxモデルで評価した。
追跡期間中央値は9年であった。
DDFS (HR 0.87 [95%CI 0.80-0.95]、 p=0.001) およびOS (HR 0.89 [95%CI 0.81-0.98]、 p=0.01) は、 TILが5%増加するごとに有意に改善した。
10年OS率は以下の通りであり、 TILの増加に伴いOS率も高くなった。
10年DDFS率では、 TIL<20%の患者では、 1年投与群の転帰が9週投与群と比べて良好であったが (88.7% vs 81.0%)、 TIL≥20%の患者では逆の結果となった (87.1% vs 92.2%、 交互作用のp=0.01)。
10年OS率も同様に、 TIL<20%の患者では、 1年投与群の転帰が9週投与群と比べて良好であったが (91.3% vs 86.9%、 HR 1.36 [95%CI 0.82-2.23]、 交互作用のp=0.06)、 TIL≥20%では9週投与群の方が良好な傾向にあった (89.3% vs 93.1%、 HR 0.36 [95%CI 0.10-1.36] )。
著者らは、 「これは我々が知る限り、 TILが、 OSを損なうことなく術後療法のde-escalationを検討できるERBB2陽性早期乳癌患者を特定するのに有用であることが示された初めての研究である」 と報告している。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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