本連載は4人の腫瘍内科医による共同企画です。 がん診療専門医でない方でもちょっとしたヒントが得られるようなエッセンスをお届けします。 第20回は虎の門病院・山口雄先生から、 「抗がん薬の副作用の説明で意識したい5つのポイント」 です! ぜひご一読ください。
抗がん薬は一般的な薬とは異なり、 副作用が多様で、 ほとんどの患者さんに何らかの副作用が現れる可能性があります。 そのため、 副作用の説明には時間がかかり、 内容も複雑になります。
製薬会社が作成した患者さん向け資料には主な副作用が網羅されていますが、 これらの資料をそのまま使っても、 患者さんがすべてを理解できるわけではありません。 情報量が多すぎると、 逆に理解しづらくなってしまいます。 また、 注意して説明しないと、 必要以上に患者さんの不安を煽ることにもなりかねません。 そのため、 副作用を伝える際には工夫が必要です。
今回は、 私が日常臨床で実践している5つのポイントをご紹介します。
プレゼンテーションにおける 「結論ファースト」 のアプローチは、 副作用を説明する場面でも有効です。 薬剤の特徴を最初に伝えておくことで、 患者さんはどの点に集中して聞けばよいかが明確になり、 理解しやすくなります。
例
「副作用による日常生活への影響が起きにくい薬剤です」
「〇〇という特徴的な副作用がある薬剤なので、 対処法も含めてこれからお話ししますね」
「場合により減量や休薬をして、 副作用を上手にコントロールしながら継続していく薬剤です※」
副作用を整理して伝えると、 理解が深まりやすくなります。 以下にいくつかのグルーピング例を挙げます。
これらのグルーピングを意識しながら説明することで、 患者さんにとって情報が整理され、 理解しやすくなります。
真面目な先生ほど、 全ての副作用を網羅的に説明しようとしがちですが、 外来診療では説明に割ける時間は限られています。 全てを伝えようとしても、 患者さんが全て理解できない可能性も高いため、 重要な副作用に絞って説明することが大切です。
例えば、 高頻度に現れる副作用、 予防・対処が必要な副作用、 まれだが重篤になり得る副作用には時間をかけて説明します。 それ以外の副作用については簡潔に触れる程度に留め、 詳細な説明は薬剤師や看護師に任せることが現実的だと思います。
日常生活にどのような影響がでるか、 発現時期や持続期間を伝えることで、 より具体的にイメージできるようになります。
▼例
吐き気 :
「吐き気が出て食事の量が減ったり、 匂いを嗅いだだけで気持ち悪くなったりすることがあります。 投与翌日から現れることが多く、 通常は1週間以内に回復します」
倦怠感 :
「何もしなくても疲れを感じ、 日中も横になりたくなることがあります。 家事や買い物、 時には食事を摂るのも億劫になることがあります」
味覚障害 :
「治療中は、 甘味や塩味を強く感じたり、 逆に何も味がしなかったりすることがあります。 このため、 食欲が落ちてしまうことがあります」
全ての副作用が必ずしも現れるわけではないことを伝えることが重要です。 過度に副作用を強調するのではなく、 予防や対処法を説明して、 患者さんが不安に思うことを少しでも軽減できるようにします。 また、 他の患者さんで副作用がうまく管理できた事例を共有することで、 安心感を与えることができます。
時には薬剤性肺障害などの重篤な副作用についても触れる必要がありますが、 その際は頻度を具体的に示し、 必ずしも高い頻度ではないことを強調することで、 漠然とした不安を軽減できます。
以上のポイントを踏まえた説明をしやすくするためには、 事前に資料を準備しておくことをお勧めします。 中には、 用紙に副作用を書きながら説明を行う先生もいますが、 この方法では患者さんの反応を見ずに自分のペースで話しがちになり、 質問を受けづらくなるため、 あまりお勧めできません。 当科では、 レジメンごとに説明資料を作成しており、 それを活用しています。
このように、 副作用の説明には患者さんの不安に配慮し、 工夫を凝らして伝えることが求められます。 信頼関係を築くために、 ただの情報提供にとどまらず、 患者さんの気持ちにも寄り添ったコミュニケーションを心掛けたいですね。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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