頭頸部癌の約90%は中咽頭癌・下咽頭癌・喉頭癌の扁平上皮癌であり、 薬物療法のエビデンスも基本的にこの組織型を対象に構築されています。 他の組織型や部位に発症する頭頸部癌では、 扁平上皮癌に対する治療方針が参考にされることが多いですが、 一部には独自のエビデンスが存在します。 連載第4回となる本稿では、 非扁平上皮癌に対する治療戦略と代表的なエビデンスをご紹介します。
専門 : 腫瘍内科 (骨軟部腫瘍、 頭頸部腫瘍、 原発不明癌、 希少癌、 その他癌薬物療法全般)
上咽頭癌はEBウイルス感染が関与するとされ、 特に東アジア (中国など) で発症頻度が高い。 これに伴い、 中国から多くの臨床試験が発信されている。
ゲムシタビン (GEM) とシスプラチン (CDDP) の併用療法は、 局所進行例に対する導入化学療法および再発・転移例に対する化学療法として、 欧米における推奨レジメンである。 本レジメンは日本では未承認であるが、 公知申請による保険収載が目指されている。
日本では未承認であるが、 中国で開発された以下の免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) の有効性が報告されている。
抗PD-1抗体 toripalimab+化学療法
抗PD-1抗体 camrelizumab+GEM+CDDP
副鼻腔癌は病理組織学的に多様であり、 組織型に応じた治療戦略が確立されている場合には、 それに基づいた治療が推奨される。 扁平上皮癌に対する再発・転移例への救援化学療法は、 原則として頭頸部扁平上皮癌の治療戦略が適用される。 また、 悪性黒色腫や神経内分泌癌については、 組織型に準じた治療が行われる。
しかしながら、 副鼻腔原発例に対する治療の有効性や予後に関する情報は限られており、 なかでも副鼻腔未分化癌 (sinonasal undifferentiated carcinoma : SNUC) のように極めて予後の悪い組織型では、 救援治療の有効性について確立された治療戦略が存在しない。
唾液腺癌も極めて組織型が多様であり、 統一的な治療指針は存在しない。 そのため、 個別のバイオマーカーに基づく分子標的治療の適用が重要となる。
アンドロゲン受容体 (AR) 陽性の唾液腺癌では、 男性ホルモンのシグナルが癌の増殖に関与していると考えられており、 このタイプに対してはリュープロレリン+ビカルタミド併用療法が保険審査上認められている。
唾液腺癌の一部では、 乳癌や胃癌と同様にHER2タンパク質の過剰発現が認められる。 このHER2陽性唾液腺癌に対しては、 トラスツズマブ+ドセタキセル療法が承認されている。
さらに、 乳腺相似分泌癌 (MASC : mammary analogue secretory carcinoma) は、 唾液腺に発生するまれな腫瘍であり、 組織学的に乳腺の分泌癌と類似する特徴をもつ。 NTRK融合遺伝子が高頻度で陽性となることから、 NTRK阻害薬の適応となる。
ICIは、 唾液腺癌を含む頭頸部癌に対して承認されている。 ただし、 既治療の進行固形癌を対象としたバスケット試験KEYNOTE-158における唾液腺癌の成績からは、 ペムブロリズマブによる高い有効性は期待しにくい点に留意が必要である。
▼ASCO2025解説
▼仲野兼司先生解説、 頭頸部癌薬物療法の解説
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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