Powerらは、 免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) 関連心筋炎患者の予後予測因子を特定し、 予後リスクスコアを開発することを目的に研究を実施した。 その結果、 心筋炎重症度の関連因子は、 トロポニン上昇の程度、 胸腺腫の有無、 QRS低電位差、 左室駆出率低下および心筋・骨格筋症状の有無であり、 この要素を組み込んだリスクスコアは良好な性能を示した。 研究結果はEur Heart J誌に発表された。
トロポニンについては原則としてトロポニンTを優先的に使用し、 使用できない場合などにはトロポニンIで代用するとの記載があります。
免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) 治療では心筋炎を引き起こすことがあり、 その自己免疫機序は全身性筋炎や筋無力症様症候群、 呼吸筋不全を同時に呈することもある。 このような心筋毒性による予後の関連因子は、 いまだに明らかにされていない。 この研究は、 ICI関連心筋炎を起こした入院患者の予後予測因子を特定しリスクスコアを構築することを目的に実施した。
同研究では、 17ヵ国の多施設レジストリから2014~23年のデータを後ろ向きに収集し、 多変量Cox回帰モデルを用いて主要複合転帰 (重篤な不整脈、 心不全、 呼吸筋不全および心筋毒性関連死までの時間、 またはそのいずれか) の危険因子を特定した。 加えて、 その結果をもとにポイントベースの予後リスクスコアを開発し、 外部コホートで検証した。
対象のICI心筋炎で入院した患者748例における30日以内の主要複合転帰発生率は33%、 心筋毒性死は13%、 全死亡率は17%であった。
多変量解析により、 主要複合転帰との有意な関連因子には、 トロポニン上昇の程度などが挙げられた。
主要複合転帰と有意な関連因子
多変量解析結果を用いて開発した予後リスクスコアの性能は良好であり、 30日以内の主要アウトカム発生率はスコア0で4%、 スコア4以上で81%と段階的に上昇した。
また、 このスコアを前向きに使用して低リスク患者を特定したところ、 その患者群では免疫抑制療法を実施しなかったにもかかわらず心筋毒性イベントは発生しなかった。
著者らは 「ICI関連心筋炎は、 罹患率・死亡率の高い疾患である。 心筋炎の重症度には、 トロポニン上昇の程度、 胸腺腫の有無、 QRS低電位差、 左室駆出率低下および心筋・骨格筋症状の有無との関連が認められた。 この要素を組み込んだリスクスコアの精度は良好であった」 と報告している。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
あなたは医師もしくは医療関係者ですか?
HOKUTOへようこそ。当サイトでは、医師の方を対象に株式会社HOKUTOの臨床支援コンテンツを提供しています。