著者

HOKUTO編集部

13日前

皮膚の鑑別診断を整理!視点が広がるプロンプト3選

皮膚の鑑別診断を整理!視点が広がるプロンプト3選
医療での生成AI活用のトップランナー、 大塚篤司先生によるChatGPT講座。 最終回となる今回は、 皮膚鑑別診断の視点が広がる3つのプロンプトを紹介します! 

はじめに

前回は、 一般的な鑑別診断の整理方法を紹介した。 今回は、 皮膚科診療に特化した鑑別診断の支援プロンプトに焦点を当てる。

皮膚科診療では、 皮疹の形態・分布・経過などから鑑別診断を絞り込むことが重要である。 しかし、 同じ皮疹でも複数の疾患で見られることが多く、 非典型的な症例では診断に迷うことも少なくない。

ChatGPTを 「皮膚科診断の思考パートナー」 として活用することで、 鑑別診断の網羅性を高め、 見落としを防ぐことができる。

ただし、 「AIは診断を下すもの」 ではなく、 あくまで 「医師の思考を整理し、 鑑別の幅を広げるための補助ツール」 であることを改めて強調しておく。

今回は、 「皮疹の形態から鑑別を広げる」 「分布パターンから診断を絞り込む」 「経過と治療反応から診断を再考する」 という皮膚科診断の3つのステップに対応したプロンプトを紹介する。


今日から使える!3つのプロンプト

1. 皮疹の形態から鑑別診断を展開する

活用シーン

患者の皮疹の形態的特徴から、 考えられる鑑別診断を系統的・網羅的にリストアップし、 見落としやすい疾患も含めて検討する。

プロンプト例

あなたは皮膚科の専門医です。 
以下の皮疹の形態的特徴から、 考えられる鑑別診断を系統的にリストアップしてください。 
頻度の高いものから稀なものまで、 見落としてはいけない疾患も含めて提示してください。 
【皮疹の情報】
年齢・性別 : [例 : 45歳女性]
皮疹の形態 : [例 : 紅斑、 丘疹、 水疱、 膿疱、 結節、 腫瘤など]
皮疹の性状 : [例 : 境界明瞭/不明瞭、 表面の性状、 触診所見]
皮疹の色調 : [例 : 紅色、 褐色、 黒色、 白色など]
皮疹の大きさ : [例 : 数mm~数cm]
皮疹の数 : [例 : 単発、 多発、 散在性、 集簇性など]
皮疹の分布 : [例 : 左右対称、 片側性、 全身性、 局在性など]
皮疹の経過 : [例 : 急性発症、 慢性経過、 増悪・寛解など]
【出力形式】
 1. 可能性の高い鑑別診断 (Common) 
- 疾患名 : 簡潔な理由
-  (3-5疾患) 
 2. 見落としてはいけない鑑別診断 (Critical) 
- 疾患名 : なぜ重要か
-  (2-3疾患) 
 3. 稀だが否定すべき鑑別診断 (Rare but important) 
- 疾患名 : 示唆する所見
-  (2-3疾患) 
 4. 系統別の鑑別診断
 炎症性疾患
- 
 感染性疾患
- 
 腫瘍性疾患
- 
 その他の疾患
- 
 5. 追加で確認すべき所見
- 全身症状 : 
- 既往歴 : 
- 内服薬 : 
- アレルギー歴 : 
- 職業歴 : 

活用のコツ

● 皮疹の形態はできるだけ具体的に記載する。 例えば紅斑は、 「境界明瞭な紅色の斑」 と記載する。

● 分布パターンは鑑別に重要であるため、 詳細に記載する。

● 経過の情報は診断の重要な手がかりとなるため適切に記載する。

● AIの出力は 「思考の出発点」 として使い、 必ず自身の臨床経験と照合する。

2. 皮疹の特徴から診断を絞り込む

活用シーン

皮疹の分布パターンや好発部位などの特徴から、 鑑別診断を絞り込み、 より具体的な診断アプローチを提案する。

プロンプト例

あなたは皮膚科の診断推論に精通した専門医です。 
以下の皮疹の特徴から診断を絞り込み、 確定診断のためのアプローチを提案してください。 
【皮疹の分布情報】
皮疹の分布パターン : [例 : 左右対称性、 片側性、 全身性、 局在性など]
好発部位 : [例 : 顔面、 四肢伸側、 屈側、 体幹、 手掌・足底など]
分布の特徴 : [例 : 神経支配領域に沿う、 日光露出部、 圧迫部、 摩擦部など]
季節性 : [例 : 夏期増悪、 冬期増悪、 通年性など]
年齢・性別による特徴 : [例 : 小児に多い、 女性に多いなど]
【現在考えている鑑別診断】
1. [疾患名1]
2. [疾患名2]
3. [疾患名3]
【出力形式】
 1. 分布パターンから支持される診断
 支持される診断
- 疾患名 : 支持する理由
 否定される診断
- 疾患名 : 否定する理由
 2. 診断確定のための追加所見確認
 必須確認項目
- 所見 : 確認の理由
 参考となる所見
- 所見 : 診断への寄与度
 3. 鑑別診断の優先順位 (改訂版) 
1. [疾患名] : 確率 (高/中/低)、 理由
2. [疾患名] : 確率 (高/中/低)、 理由
3. [疾患名] : 確率 (高/中/低)、 理由
 4. 次の診療方針
 即座に実施すべき検査
- 検査項目 : 実施理由
 経過観察で確認すべき変化
- 変化 : 期待される所見

活用のコツ

● 分布パターンは皮膚科診断の重要な手がかりとなる。

● 好発部位と年齢・性別の組み合わせで、 診断の確度が変わる。

● 季節性や経過の情報も、 分布と合わせて総合的に判断する。

● 支持・否定の理由を明確にすることで、 診断推論の質が向上する。

3. 経過と治療反応から診断を再考する

活用シーン

初期診断で治療反応が期待通りでない場合や、 経過観察で新たな所見が出現した場合に、 診断推論を整理し、 次のアプローチを検討する。

プロンプト例

あなたは皮膚科の診断困難症例の相談を受ける指導医です。
以下の症例について診断推論を整理し、 次の診療方針を提案してください。 
【これまでの経過】
初診時の皮疹 : [詳細に記載]
初期診断 : [当初考えた診断]
実施した治療と反応 : 
- [治療1] : [反応と経過]
- [治療2] : [反応と経過]
-  (すべて列挙) 
【現在の皮疹の変化】
- 形態の変化 : [例 : 紅斑から水疱化、 丘疹から結節化など]
- 分布の変化 : [例 : 局所から全身化、 新たな部位への出現など]
- 症状の変化 : [例 : 痒みの増悪、 痛みの出現など]
【新たに出現した所見】
- 全身症状 : [例 : 発熱、 関節痛、 倦怠感など]
- 検査所見 : [例 : 血液検査、 病理検査など]
- 画像所見 : [例 : 胸部X線、 CTなど]
【出力形式】
 1. 診断推論の再整理
 初期診断を支持する所見
- 所見 : どの診断と合致するか
 初期診断に反する所見
- 所見 : なぜ典型的でないか
 新たに考慮すべき鑑別診断
- 疾患名 : 新たに考慮する理由
 2. 診断確定への3つのアプローチ
 アプローチ1 : [方針名]
- 具体的方法 : 
- メリット/デメリット : 
- 期待される情報 : 
 アプローチ2 : [方針名]
-  (同様に記載) 
 アプローチ3 : [方針名]
-  (同様に記載) 
 3. 推奨する次の一手
- 優先順位1位の理由 : 
- 実施のタイミング : 
- 判断のポイント : 
 4. 専門医へのコンサルテーションの検討
- コンサルテーション先 : 
- コンサルテーションのタイミング : 
- 準備すべき情報 : 

活用のコツ

● 「初期診断に反する所見」 に注目することで、 診断の見直しポイントが明確になる。

● 皮疹の変化は診断の重要な手がかりとなるため、 詳細に記載する。

● 全身症状や検査所見の変化も含めて総合的に判断する。

● 専門医へのコンサルテーションのタイミングも検討に含める。


効果的な活用に!実践的アドバイス

情報は 「形態→分布→経過」 の順で入力

皮膚科診断でChatGPTを効果的に活用するには、 情報の構造化が重要である。 皮疹の情報は 「形態→分布→経過」 の順で段階的に入力することで、 AIがより適切な鑑別診断を提示できるようになる。

「視覚情報の言語化」 が重要

また、 よく遭遇する皮疹パターンごとにプロンプトをテンプレート化しておけば、 日常診療での活用がスムーズになる。 特に重要なのは、 視覚情報の言語化である。

ChatGPTは画像を直接解析できないため、 皮疹の色調、 形態、 表面性状などを正確に言語で表現する能力が、 AIから有用な回答を引き出すカギとなる。

今回は、 皮膚科鑑別診断の思考プロセスを支援する3つのプロンプトを紹介した。 これらは 「皮疹の形態から鑑別を広げる」  「分布パターンから診断を絞り込む」  「経過と治療反応から診断を再考する」 という、 皮膚科診断の各段階で活用できる。 
重要なのは、  「ChatGPTを”第二の脳”として活用しつつも、 最終的な診断責任は医師にあることを常に意識する」 ことである。 AIとの適切な協働により、 皮膚科診断の質を高め、 患者により良い医療を提供できるようになるだろう。 

皮膚の鑑別診断を整理!視点が広がるプロンプト3選

大塚先生執筆の書籍はこちら!

皮膚の鑑別診断を整理!視点が広がるプロンプト3選
医師による医師のためのChatGPT入門

あっという間のAIスライド作成術

2025年8月発刊! 「スライドづくりの時間が足りない」 を一瞬で解決。 各種生成AIを場面別に使い分け、 構成やデザインをあっという間に整える実践書。  「伝える」 スライド作成のテクニックも公開! 

>> 書籍の詳細はこちら (予約受付中)

皮膚の鑑別診断を整理!視点が広がるプロンプト3選
医師による医師のためのChatGPT入門

臨床・研究を変える究極のプロンプト500選

2025年4月発刊!医療現場でそのまま使えるプロンプトをテーマ別に収載。 日々の診療・教育・研究に役立つ実践的な1冊。  

>> 書籍の詳細はこちら

皮膚の鑑別診断を整理!視点が広がるプロンプト3選

医師による医師のためのChatGPT入門

臨床がはかどる魔法のプロンプト
ChatGPTに苦手意識のある医師に向け、 基本的な使い方から日常業務での活用法までを、 会話形式で丁寧に解説。 

>> 書籍の詳細はこちら

皮膚の鑑別診断を整理!視点が広がるプロンプト3選

医師による医師のためのChatGPT入門 2

臨床現場ががらりと変わる生成AI実践術
GeminiやClaudeなどの登場で広がる最新の活用法を網羅。 前作に続き、 実例とともに理解が深まる構成。 

>> 書籍の詳細はこちら

皮膚の鑑別診断を整理!視点が広がるプロンプト3選

皮膚科の診断に迷ったらChatGPTに全部聞いちゃえ!

紅斑・丘疹・鱗屑など皮疹の"見え方"を言語化し、 ChatGPTで鑑別リストを引き出す手順を症例対話で丁寧に指南。

>> 書籍の詳細はこちら

こちらの記事の監修医師
こちらの記事の監修医師
HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

監修・協力医一覧
QRコードから
アプリを
ダウンロード!
HOKUTOのロゴ
HOKUTOのロゴ
今すぐ無料ダウンロード!
様々な分野の医師
様々な分野の医師

あなたは医師もしくは医療関係者ですか?

HOKUTOへようこそ。当サイトでは、医師の方を対象に株式会社HOKUTOの臨床支援コンテンツを提供しています。