医療での生成AI活用のトップランナー、 大塚篤司先生によるChatGPT講座。 最終回となる今回は、 皮膚鑑別診断の視点が広がる3つのプロンプトを紹介します!
前回は、 一般的な鑑別診断の整理方法を紹介した。 今回は、 皮膚科診療に特化した鑑別診断の支援プロンプトに焦点を当てる。
皮膚科診療では、 皮疹の形態・分布・経過などから鑑別診断を絞り込むことが重要である。 しかし、 同じ皮疹でも複数の疾患で見られることが多く、 非典型的な症例では診断に迷うことも少なくない。
ChatGPTを 「皮膚科診断の思考パートナー」 として活用することで、 鑑別診断の網羅性を高め、 見落としを防ぐことができる。
ただし、 「AIは診断を下すもの」 ではなく、 あくまで 「医師の思考を整理し、 鑑別の幅を広げるための補助ツール」 であることを改めて強調しておく。
今回は、 「皮疹の形態から鑑別を広げる」 「分布パターンから診断を絞り込む」 「経過と治療反応から診断を再考する」 という皮膚科診断の3つのステップに対応したプロンプトを紹介する。
活用シーン
患者の皮疹の形態的特徴から、 考えられる鑑別診断を系統的・網羅的にリストアップし、 見落としやすい疾患も含めて検討する。
プロンプト例
あなたは皮膚科の専門医です。
以下の皮疹の形態的特徴から、 考えられる鑑別診断を系統的にリストアップしてください。
頻度の高いものから稀なものまで、 見落としてはいけない疾患も含めて提示してください。
【皮疹の情報】
年齢・性別 : [例 : 45歳女性]
皮疹の形態 : [例 : 紅斑、 丘疹、 水疱、 膿疱、 結節、 腫瘤など]
皮疹の性状 : [例 : 境界明瞭/不明瞭、 表面の性状、 触診所見]
皮疹の色調 : [例 : 紅色、 褐色、 黒色、 白色など]
皮疹の大きさ : [例 : 数mm~数cm]
皮疹の数 : [例 : 単発、 多発、 散在性、 集簇性など]
皮疹の分布 : [例 : 左右対称、 片側性、 全身性、 局在性など]
皮疹の経過 : [例 : 急性発症、 慢性経過、 増悪・寛解など]
【出力形式】
1. 可能性の高い鑑別診断 (Common)
- 疾患名 : 簡潔な理由
- (3-5疾患)
2. 見落としてはいけない鑑別診断 (Critical)
- 疾患名 : なぜ重要か
- (2-3疾患)
3. 稀だが否定すべき鑑別診断 (Rare but important)
- 疾患名 : 示唆する所見
- (2-3疾患)
4. 系統別の鑑別診断
炎症性疾患
-
感染性疾患
-
腫瘍性疾患
-
その他の疾患
-
5. 追加で確認すべき所見
- 全身症状 :
- 既往歴 :
- 内服薬 :
- アレルギー歴 :
- 職業歴 :
活用のコツ
● 皮疹の形態はできるだけ具体的に記載する。 例えば紅斑は、 「境界明瞭な紅色の斑」 と記載する。
● 分布パターンは鑑別に重要であるため、 詳細に記載する。
● 経過の情報は診断の重要な手がかりとなるため適切に記載する。
● AIの出力は 「思考の出発点」 として使い、 必ず自身の臨床経験と照合する。
活用シーン
皮疹の分布パターンや好発部位などの特徴から、 鑑別診断を絞り込み、 より具体的な診断アプローチを提案する。
プロンプト例
あなたは皮膚科の診断推論に精通した専門医です。
以下の皮疹の特徴から診断を絞り込み、 確定診断のためのアプローチを提案してください。
【皮疹の分布情報】
皮疹の分布パターン : [例 : 左右対称性、 片側性、 全身性、 局在性など]
好発部位 : [例 : 顔面、 四肢伸側、 屈側、 体幹、 手掌・足底など]
分布の特徴 : [例 : 神経支配領域に沿う、 日光露出部、 圧迫部、 摩擦部など]
季節性 : [例 : 夏期増悪、 冬期増悪、 通年性など]
年齢・性別による特徴 : [例 : 小児に多い、 女性に多いなど]
【現在考えている鑑別診断】
1. [疾患名1]
2. [疾患名2]
3. [疾患名3]
【出力形式】
1. 分布パターンから支持される診断
支持される診断
- 疾患名 : 支持する理由
否定される診断
- 疾患名 : 否定する理由
2. 診断確定のための追加所見確認
必須確認項目
- 所見 : 確認の理由
参考となる所見
- 所見 : 診断への寄与度
3. 鑑別診断の優先順位 (改訂版)
1. [疾患名] : 確率 (高/中/低)、 理由
2. [疾患名] : 確率 (高/中/低)、 理由
3. [疾患名] : 確率 (高/中/低)、 理由
4. 次の診療方針
即座に実施すべき検査
- 検査項目 : 実施理由
経過観察で確認すべき変化
- 変化 : 期待される所見
活用のコツ
● 分布パターンは皮膚科診断の重要な手がかりとなる。
● 好発部位と年齢・性別の組み合わせで、 診断の確度が変わる。
● 季節性や経過の情報も、 分布と合わせて総合的に判断する。
● 支持・否定の理由を明確にすることで、 診断推論の質が向上する。
活用シーン
初期診断で治療反応が期待通りでない場合や、 経過観察で新たな所見が出現した場合に、 診断推論を整理し、 次のアプローチを検討する。
プロンプト例
あなたは皮膚科の診断困難症例の相談を受ける指導医です。
以下の症例について診断推論を整理し、 次の診療方針を提案してください。
【これまでの経過】
初診時の皮疹 : [詳細に記載]
初期診断 : [当初考えた診断]
実施した治療と反応 :
- [治療1] : [反応と経過]
- [治療2] : [反応と経過]
- (すべて列挙)
【現在の皮疹の変化】
- 形態の変化 : [例 : 紅斑から水疱化、 丘疹から結節化など]
- 分布の変化 : [例 : 局所から全身化、 新たな部位への出現など]
- 症状の変化 : [例 : 痒みの増悪、 痛みの出現など]
【新たに出現した所見】
- 全身症状 : [例 : 発熱、 関節痛、 倦怠感など]
- 検査所見 : [例 : 血液検査、 病理検査など]
- 画像所見 : [例 : 胸部X線、 CTなど]
【出力形式】
1. 診断推論の再整理
初期診断を支持する所見
- 所見 : どの診断と合致するか
初期診断に反する所見
- 所見 : なぜ典型的でないか
新たに考慮すべき鑑別診断
- 疾患名 : 新たに考慮する理由
2. 診断確定への3つのアプローチ
アプローチ1 : [方針名]
- 具体的方法 :
- メリット/デメリット :
- 期待される情報 :
アプローチ2 : [方針名]
- (同様に記載)
アプローチ3 : [方針名]
- (同様に記載)
3. 推奨する次の一手
- 優先順位1位の理由 :
- 実施のタイミング :
- 判断のポイント :
4. 専門医へのコンサルテーションの検討
- コンサルテーション先 :
- コンサルテーションのタイミング :
- 準備すべき情報 :
活用のコツ
● 「初期診断に反する所見」 に注目することで、 診断の見直しポイントが明確になる。
● 皮疹の変化は診断の重要な手がかりとなるため、 詳細に記載する。
● 全身症状や検査所見の変化も含めて総合的に判断する。
● 専門医へのコンサルテーションのタイミングも検討に含める。
皮膚科診断でChatGPTを効果的に活用するには、 情報の構造化が重要である。 皮疹の情報は 「形態→分布→経過」 の順で段階的に入力することで、 AIがより適切な鑑別診断を提示できるようになる。
また、 よく遭遇する皮疹パターンごとにプロンプトをテンプレート化しておけば、 日常診療での活用がスムーズになる。 特に重要なのは、 視覚情報の言語化である。
ChatGPTは画像を直接解析できないため、 皮疹の色調、 形態、 表面性状などを正確に言語で表現する能力が、 AIから有用な回答を引き出すカギとなる。
今回は、 皮膚科鑑別診断の思考プロセスを支援する3つのプロンプトを紹介した。 これらは 「皮疹の形態から鑑別を広げる」 「分布パターンから診断を絞り込む」 「経過と治療反応から診断を再考する」 という、 皮膚科診断の各段階で活用できる。
重要なのは、 「ChatGPTを”第二の脳”として活用しつつも、 最終的な診断責任は医師にあることを常に意識する」 ことである。 AIとの適切な協働により、 皮膚科診断の質を高め、 患者により良い医療を提供できるようになるだろう。
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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