順天堂大学乳腺内分泌外科分野の齊藤光江氏らの研究グループは、 I~III期の乳癌に対するアントラサイクリン+シクロホスファミドによる静注化学療法に制吐3剤併用療法にオランザピン5mgを追加することで悪心・嘔吐を制御しつつ鎮静作用リスクを最小限に抑えることが可能かどうかをプラセボ対照二重盲検第III相無作為化比較試験で検討した。 その結果、 オランザピン5mgにより悪心・嘔吐が有意に
抑制され、 安全性プロファイルも許容可能なものであった。 研究結果はLancet Oncol誌に発表された。
各種ガイドラインで標準とされるオランザピン10mgとの比較が行われていないため、 臨床的意義の評価についてはlimitationとなります。
標準的な制吐3剤併用療法へのオランザピン10mg追加については、 高度催吐性化学療法による悪心・嘔吐抑制において3剤併用療法単独よりも有益であることが示されている一方、 鎮静作用による副作用も報告されている。 そこで、 オランザピン5mgの投与で、 悪心・嘔吐を制御しつつ鎮静作用によるリスクを最小限に抑えることが可能かを検討した。
試験は、 国内15施設で実施された第III相二重盲検無作為化比較試験である。 対象はI~III期の乳癌患者で、 アントラサイクリン+シクロホスファミドベースの静注化学療法を受ける患者とし、 オランザピン5 mg群とプラセボ群に割り付けた。
治療薬は、 化学療法終了後5時間以内と、 それ以後3日間にわたり服用した。 両群とも、 化学療法前投与としてデキサメタゾン9.9mg、 パロノセトロン0.75mg、 アプレピタント125mgを初日に投与した。 また、 2日目・3日目にアプレピタント80mgを追加投与、 もしくは初日にホスアプレピタント150mgを前投与した。
主要評価項目は、 化学療法開始から120時間後までの完全奏効率とし、 嘔吐なし、 かつ救済薬使用なしを完全奏効と定義した。
有効性解析対象480例 (オランザピン群246例、 プラセボ群234例) の完全奏効率は、 オランザピン群の方が有意に高かった (差22.7%、 95%CI 14.0–31.4、 p<0.0001)。
完全奏効率
重度または極めて重度な治療薬関連の症状としては、 食欲不振や便秘が多く報告されたほか、 オランザピン群の10%、 プラセボ群の14%に集中力障害が報告された。
グレード3-4の有害事象は、 オランザピン群では傾眠 (2%) と集中力障害 (1%) が認められ、 プラセボ群では認められなかった。 死亡例はなかった。
著者らは、 「制吐3剤併用療法へのオランザピン5mg追加投与は、 外来化学療法を受ける乳癌患者の化学療法誘発性悪心・嘔吐をプラセボに比べて有意に抑制し、 かつ安全性プロファイルは許容可能なものであった。 オランザピン5mg投与で悪心・嘔吐を安全に管理できることが示された」 と報告している。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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