70歳以上の未治療進行NSCLCを対象に、 抗PD-L1抗体アテゾリズマブ+化学療法の有効性および安全性を化学療法単独と比較評価した第III相無作為化比較試験IFCT-1805の結果、 OSは有意に改善しなかったものの、 複数の副次評価項目で有意に良好な結果が報告された。 仏・Strasbourg University HospitalのCeline Mascaux氏が発表した。
進行非小細胞肺癌 (NSCLC) の1次治療では、 化学療法+免疫チェックポイント阻害薬併用が標準治療とされる。 しかし、 臨床試験における高齢者の登録数は少なく、 特に75歳以上の患者における同併用療法のベネフィットは明確ではなかった。
70~89歳で局所進行または転移性 (Ⅲb/ⅢcまたはⅣA/ⅣB期) の未治療NSCLC患者510例が、 以下の2群に2:1で無作為に割り付けられた。
主要評価項目は全生存期間 (OS)、 副次評価項目は無増悪生存期間 (PFS)、 奏効率 (ORR)、 奏効期間 (DOR)、 安全性などであった。
患者背景は両群で概ね同様であった。 年齢中央値はおよそ77歳で、 IVA期はアテゾリズマブ併用群47.6%、 化学療法単独群51.8%、 ⅣB期はそれぞれ45.9%、 43.5%であった。
追跡期間中央値38.0ヵ月におけるOS中央値は、 アテゾリズマブ併用群で18.6ヵ月 (95%CI 15.5-22.4ヵ月)、 化学療法単独群で15.0ヵ月 (同 11.8-17.5ヵ月) と、 両群間に有意差は認められなかったものの、 アテゾリズマブ併用群で延長傾向がみられた (HR 0.87、 同0.70-1.08、 p=0.20)。
PFS中央値は、 化学療法単独群の5.6ヵ月 (95%CI 5.4-5.8ヵ月) に比べて、 アテゾリズマブ併用群で7.4ヵ月 (同 6.0-7.8ヵ月) と有意に延長した (HR 0.55、 同 0.44-0.67、 p<0.0001)。 12ヵ月PFS率はアテゾリズマブ併用群で29ヵ月、 化学療法単独群で5.8ヵ月だった。
PFSサブ解析においても、 年齢 (80歳以上/79歳未満)、 性別、 登録時の脳転移の有無など、 事前に規定されたほぼ全てのサブグループでアテゾリズマブ併用群の化学療法単独群に対する優位性が一貫して認められた。
ORRもアテゾリズマブ併用療法群で有意に高く (51.2% vs 41.8%、 p=0.04)、 DOR中央値も同様の結果を示した (6.7ヵ月 vs 3.8ヵ月、 HR 0.45、 95%CI 0.33-0.61、 p<0.0001)。
後治療としてアテゾリズマブ併用群の55.5%、 化学療法単独群の76.2%が全身療法を受けており、 そのうち免疫療法を受けた割合はそれぞれ9.6%、 56.1%、 化学免疫療法は0.6%、 2.4%だった。
Grade 3以上の治療関連有害事象 (TRAE) の発現率は、 化学療法単独群の61.9%に対してアテゾリズマブ併用群で71.4%と有意に高かった (p=0.032)。 重篤なTRAEの発現率もアテゾリズマブ併用群で有意に高く (16.3% vs 7.7%、 p=0.008)、 治療関連死がアテゾリズマブ併用群で5例報告された (化学療法関連2例、 免疫療法関連3例)。
Mascaux氏は 「高齢NSCLCの1次治療において、 標準化学療法へアテゾリズマブを上乗せしても、 OSの有意な改善は示されなかった。 ただしこの結果は、 化学療法単独群の58%以上が2次治療で免疫療法を含む治療を受けたことが影響している可能性がある。 現在、 バイオマーカーに関する探索解析が進行中であり、 有効性および毒性の予測因子の同定が期待される」 と報告した。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
あなたは医師もしくは医療関係者ですか?
HOKUTOへようこそ。当サイトでは、医師の方を対象に株式会社HOKUTOの臨床支援コンテンツを提供しています。