Triplettらは、 糖尿病性腰仙部神経根神経叢障害 (DLRPN) と総腓骨神経障害 (CFN) の患者を対象に、 グルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬 (GLP-1RA) の使用とこれらの神経障害発症との関連を後ろ向き症例対照研究で検討した。 その結果、 GLP-1RA使用がDLRPNおよびCFNの発症リスク上昇と関連することが明らかとなった。 本研究はNeurology誌において発表された。
本研究におけるDLRPNの発症機序は、 不明であるもののHbA1cの急速な低下および過度な体重減少に起因する代謝的ストレスおよび神経虚血が主要な要因と考えられるとのことです。
グルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬 (GLP-1RA) は肥満や糖尿病治療に広く用いられ、 セマグルチドは非動脈炎性虚血性視神経症 (NAION)、 黄斑浮腫、 網膜症との関連が報告されている。 糖尿病性腰仙部神経根神経叢障害 (DLRPN) や総腓骨神経障害 (CFN) は体重減少に関連して発症することが知られており、 GLP-1RAがこれらの神経障害と関連するか調査した。
後ろ向き症例対照研究の対象は、 2005年4月28日 (GLP-1RAのFDA初承認日) ~24年12月25日にDLRPNまたはCFNと診断された患者であった。 年齢、 性別、 BMI、 糖尿病の有無を一致させた対照群を設定し、 GLP-1RAの使用とDLRPNまたはCFN発症との関連を調査した。
DLRPN患者では、 26例が27エピソードを発症し、 GLP-1RA開始から発症までの中央値は6ヵ月 (範囲 3-35ヵ月)、 HbA1c低下の中央値は2.4% (範囲 1-8.5%) であった。 BMI低下の中央値は4単位 (範囲 1-15単位) であり、 体重減少率13.9% (範囲 3.6-28.5%) に相当した。 神経生検5例中4例で微小血管炎を確認した。
CFN患者では、 77例が82エピソードを発症し、 GLP-1RA使用期間は平均15ヵ月 (範囲 1-112ヵ月) であった。 HbA1c低下の中央値は1.2% (範囲 -0.4~5%)、 BMI低下の中央値は4単位 (範囲 0-15単位) であり、 体重減少率15.7% (範囲 3.0-37.0%) に相当した。
DLRPN患者のHbA1c低下はCFN患者より大きかった (2.4% vs 1.2%、 p<0.001)。 また、 新たなNAION、 黄斑浮腫、 網膜症は認められなかった。
対照群と比較し、 GLP-1RA使用者はDLRPN発症リスクが51%増加 (OR 1.5、 95%CI 1.2-1.9、 p=0.0008)、 CFN発症リスクが30%増加 (OR 1.3、 95%CI 1.0-1.5、 p=0.018) した。 発症はすべて2015年以降であり、 2015-2019年にDLRPN 3件・CFN 7件、 2020-2024年にDLRPN 24件・CFN 70件と、 それぞれ700%・900%の増加を認めた。
著者らは、 「GLP-1RAの使用は、 DLRPNおよびCFNの発症リスクの増加と関連していた。 DLRPNとそれに伴う神経微小血管炎は、 代謝変化、 特にHbA1c値の有意な低下とより強く関連していた一方、 CFNは圧迫性神経障害の特徴を有し、 体重減少の影響をより強く受けた」 と報告している。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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