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HOKUTO編集部

14日前

CIPN予防に弾性圧迫グローブ・ストッキングによる圧迫療法が有望

CIPN予防に弾性圧迫グローブ・ストッキングによる圧迫療法が有望
パクリタキセル (PTX) 治療を予定している乳癌患者を対象に、 弾性圧迫グローブ・ストッキング (ECGS)  による化学療法誘発性末梢神経障害 (CIPN) の予防効果をヒストリカルコントロールと比較評価した多施設共同前向き観察研究 (KBCRN A004) において、 ECGSで予防している集団では、 毎週PTX療法12サイクル終了時までの日常生活に支障のあるCIPNの発症が減少していた。 京都大学医学部附属病院腫瘍内科の川口展子氏が発表した。

背景

手術手袋による圧迫療法はアレルギーや利便性に課題

近年、 CIPNの予防法として手術手袋による圧迫療法が注目されているが、 アレルギーリスクやリユースができないことなどが課題だった。

そこで川口氏らの研究グループは、 アレルギーリスクが低く、 繰り返し使用可能で着脱が容易な、 手術手袋と同等の圧力を提供するECGSを開発。 クラスIのため患者判断で使用できる製品として既に導入している。 本観察研究では、 ECGSによるCIPNの予防効果を検証した。

研究概要

対象はPTX投与予定の乳癌患者

対象は、 以下のいずれかの治療を予定している早期または転移性乳癌患者とした。

  • weekly PTX (±HP*、 CbPembro**) を12サイクル以上
  • PTX+抗VEGF抗体ベバシズマブまたは他の3投1休レジメンを4サイクル以上
  • nab-PTXを4サイクル以上
*抗HER2抗体トラスツズマブ+抗HER2抗体ペルツズマブ
**カルボプラチン+抗PD-1抗体ペムブロリズマブ

主要評価項目は日常生活に支障のあるCIPNの発症割合

主要評価項目は治療期間中 (weekly PTXの場合、 12サイクルDay8まで) の日常生活に支障のあるCIPNの手足での発症割合であり、 評価指標は以下の2つだった。

  • 患者自身が評価する患者神経毒性質問票 (Patient Neurotoxicity Questionnaire;PNQ) でDまたはEスコア (PNQ-DE*) の割合
  • 医師が評価するCTCAE ≧Grade2の割合

手足別の結果を、 ヒストリカルコントロール (PNQ-DE: 15-41.7%、 CTCAE ≧Grade2: 24-67%) と比較した。

*PNQ-DE : 生活に支障がある程度

結果

半数以上が術後療法としてのPTX投与

2021年3月~24年3月に235例が登録され、 weeklyPTX投与を受けた203例のうち、 圧迫療法を実施した201例を解析対象とした。

201例の年齢中央値は54歳だった。 PTXの投与タイミングは、 術前療法が77例、 術後療法が111例、 転移病変への治療が13例だった。

手足とも日常生活に支障のあるCIPNの発症が減少

日常生活に支障のあるCIPN (感覚、 運動のより高いスコア) の発症割合は以下の通りで、 手足ともにヒストリカルコントロール (PNQ-DE: 15-41.7%、 CTCAE: 24-67%) と比較して低かった。

<手>

  • PNQ DE : 9.5% 
(95%CI 5.8-14.4%)
リスク減少率37.0% (同 10.4-63.5%) 
  • CTCAE ≥Grade2 : 14.9% 
(95%CI 10.3-20.6%)
リスク減少率37.8% (同 17.1-58.5%) 

<足>

  • PNQ DE : 11.4% 
(95%CI 7.4-16.7%) 
リスク減少率23.7% (同 -6.1~50.2%) 
  • CTCAE ≥Grade 2 : 16.4% 
(95%CI 11.6-22.3%)
リスク減少率31.6% (同 8.8-52.3%) 

感覚性・運動性の評価でも日常生活に支障のあるCIPNの発症が減少

感覚 (Sensory) と運動 (Motor) それぞれのCIPN発症割合 (PNQ DE / CTCAE ≥Grade2) は以下の通りであった。

<感覚>

CIPN予防に弾性圧迫グローブ・ストッキングによる圧迫療法が有望

<運動>

CIPN予防に弾性圧迫グローブ・ストッキングによる圧迫療法が有望

重篤なAEは報告されず

登録された全235例において、 圧迫療法に関連した重篤な有害事象 (AE) は報告されなかった。 圧迫療法の中断は手で11例、 足で14例にみられた。 主な理由は、 持参忘れ、 爪周囲炎、 疼痛、 不快感などだった。

結論

ECGSによる圧迫療法はCIPN予防に有望

弾性圧迫グローブ・ストッキング (ECGS) を使用することで、 日常生活に支障のあるCIPNの発症割合は、 PNQの評価では約10%、 CTCAEの評価では約15%にとどまり、 手・足ともに同様の傾向がみられた。 これは、 手足のしびれ予防をしていない場合 (先行研究) と比べ低く、 また圧迫療法による手足のしびれの発症予防効果を検証した先行研究とも同程度であるため、 確からしいと言える。

川口氏は 「この圧迫療法は特別な装置を必要とせず、 手軽に行える予防法であることから、 今後、 患者さんの間で広く普及していくことが期待される。 研究チームでは、 より多くの患者さんに安全に利用していただけるよう、 保険適用や適正使用の推進にも取り組んでいく」 と報告した。

今回の研究では、 弾性圧迫グローブ・ストッキング (ECGS) を使用することで、 QOLに影響を及ぼす手足のしびれを減らせる可能性が示された。

こちらの記事の監修医師
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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