
切除不能な局所再発または転移性の進行肛門管扁平上皮癌 (SCAC) に対する1次治療として、 抗PD-1抗体レチファンリマブの上乗せ効果を検証した国際多施設共同第Ⅲ相二重盲検プラセボ対照無作為化比較試験POD1UM-303の結果、 主要評価項目であるPFSにおいて、 プラセボ群に比べて有意な改善が示された。 また、 探索的解析において1次治療からレチファンリマブを使用することによるOSベネフィットが示唆された。 国立がん研究センター中央病院消化管内科医長の髙島淳生氏が発表した。
第Ⅱ相POD1UM-202試験において、 レチファンリマブはプラチナ製剤抵抗性SCACに対する有効性が示唆されていた¹⁾。 そこで今回は、 進行SCAC患者に対する1次治療として、 レチファンリマブ+標準的な化学療法 (カルボプラチン+パクリタキセル併用療法) の有効性および安全性を評価した第Ⅲ相POD1UM-303試験が行われた。
今回は主解析結果 (既報、 事前に規定されたサブグループ解析結果²⁾を含む) のほか、 新たに、 病勢進行 (PD) が認められプラセボ群からレチファンリマブ単剤療法群にクロスオーバーした患者に対する探索的解析の結果が報告された。
対象は、 全身治療歴がなく切除不能な局所再発または転移性の進行SCAC患者であった。
308例が以下の2群に1 : 1で無作為に割り付けられた。
治療は最大1年間継続された。 プラセボ群でPDが認められた患者はクロスオーバーでレチファンリマブ単剤療法群への移行が可能であった。
主要評価項目はRECIST v1.1基準に基づく盲検下独立中央判定による無増悪生存期間 (PFS) であった。 重要な副次評価項目は全生存期間 (OS)、 その他の副次評価項目は客観的奏効率 (ORR)、 病勢コントロール率 (DCR)、 奏効期間 (DOR)、 および安全性などであった。
プラセボ群でPDが認められ、 レチファンリマブ単剤療法群にクロスオーバーした群では、 探索的解析が実施された。
ベースライン時の患者背景は両群間で概ねバランスが取れていた。 オーストラリア、 EU、 北米、 英国の患者のほか、 日本の患者16例 (各群8例) が登録された。 プラセボ群のうち69例がPD後にレチファンリマブ単剤療法群にクロスオーバーした。
PFS*中央値は、 レチファンリマブ併用群が9.3ヵ月 (95%CI 7.5-11.3ヵ月) であり、 プラセボ群の7.4ヵ月 (同 7.1-7.7ヵ月) と比べて有意な改善が示された (HR 0.63 [95%CI 0.47-0.84]、 p=0.0006)
中間解析におけるOS**中央値は、 レチファンリマブ併用群が29.2ヵ月 (95%CI 24.2ヵ月-NE) であり、 プラセボ群の23.0ヵ月 (同 15.1-27.9ヵ月) と比べて有意差はないものの良好な傾向であった (HR 0.70 [95%CI 0.49-1.01]、 p=0.0273***)。
クロスオーバーの影響を除く形で調整した解析において、 調整後のプラセボ群のOS中央値は19.1ヵ月 (95%CI 13.4-27.9ヵ月) であり、 上述のレチファンリマブ併用群 (29.2ヵ月) と比較して明らかな改善が認められた (HR 0.63 [95%CI 0.44-0.90]、 p=0.0055)。
事前に規定されたサブグループ解析の多くで、 レチファンリマブ併用群によるPFSのベネフィットが一貫して認められた。 日本人におけるサブグループ解析においてもレチファンリマブ併用群で良好な結果であった (HR 0.07 [95%CI 0.01-0.59])。
ORRは、 レチファンリマブ併用群が55.8% (95%CI 47.6-63.8%)、 プラセボ群が44.2% (同 36.2-52.4%) であり (名目上のp=0.0129)、 うち完全奏効 (CR) 率はそれぞれ22.1%、 13.6%であった。
DOR中央値はそれぞれ14.0ヵ月 (95%CI 8.6-22.2ヵ月)、 7.2ヵ月 (同 5.6-9.3ヵ月)、 DCRは87.0% (95%CI 80.7-91.9%)、 79.9% (同 72.7-85.9%) であった。
探索的解析において、 クロスオーバーしたレチファンリマブ単剤療法群のOS中央値は24.3ヵ月 (95%CI 14.8-31.7ヵ月) であった。
この結果はクロスオーバーしなかったプラセボ群 (23.0ヵ月 [同 11.7ヵ月-NE]) と比べて良好であった一方で、 レチファンリマブ併用群 (29.2ヵ月 [同 24.2ヵ月-NE]) と比べて低いことより、 1次治療からレチファンリマブを併用することの生存ベネフィットが示唆された。
安全性プロファイルは既報と一致していた。 治療関連の有害事象 (Treatment-related TEAE) の発現率は、 レチファンリマブ併用群が89.6%、 プラセボ群が77.6%、 Grade3以上の治療中の有害事象 (TEAE) の発現率はそれぞれ83.1%、 75.0%、 治療関連死はそれぞれ4例、 1例であった。
髙島氏は 「本試験の結果により、 進行SCACに対する1次治療として、 カルボプラチン、 パクリタキセル、 レチファンリマブ併用療法が新たな標準治療として確立された」 と報告した。
¹⁾ ESMO Open.2022 Aug;7(4):100529.
²⁾ Lancet.2025 Jun 14;405(10495):2144-2152.
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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