頭頸部癌薬物療法の注目トピックやキーワードについて解説する新連載です。 第1回は、 頭頸部扁平上皮癌の再発・転移例に対する1次治療について、 奈良県立医科大学附属病院耳鼻咽喉・頭頸部外科の西村 在氏に解説いただきます。
頭頸部癌のうち扁平上皮癌は、 耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域における悪性腫瘍の大部分を占め、 高頻度に再発・転移をきたすため予後は不良である。
しかし近年、 免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) をはじめとする新規治療法の登場により、 予後は改善しつつある。
ICIは多くの癌種で標準治療に組み込まれており、 再発・転移頭頸部扁平上皮癌 (R/M-HNSCC) の1次治療でも抗PD-1抗体であるニボルマブやペムブロリズマブが使用される。
これらのICIが登場する以前のR/M-HNSCCの1次治療は、 シスプラチン (CDDP) およびフルオロウラシル (5-FU) を基盤とした治療が主流であった。 一方、 局所進行例では根治を目的に外科治療または化学放射線療法 (CRT) が選択され、 CRTにはCDDPなどのプラチナ製剤 (Pt) が併用される。
Pt治療後、 6ヵ月以内に再発した症例は 「Pt不応」、 6ヵ月を超えて再発した症例は 「Pt感受性」 と判断される。 Pt不応・Pt感受性のどちらなのかによって、 次の治療を決定する。
ニボルマブ単剤療法が標準治療
Pt不応のR/M-HNSCCに対し、 ニボルマブ療法と従来治療*を比較した第III相試験CheckMate 141¹⁾が実施され、 ニボルマブ療法群で全生存期間 (OS) の有意な延長が示された。
局所治療歴はあるものの、 R/M病変に対する初回薬物療法であることから、 本治療は1次治療と位置付けられ、 現在ではPt不応例に対する1次治療の標準治療となっている。
CPSによりペムブロリズマブ単剤or併用を選択
Pt感受性のR/M-HNSCCに対し、 ペムブロリズマブ単剤療法およびペムブロリズマブ+化学療法*¹の併用療法と、 従来の標準治療*²を比較した第III相試験KEYNOTE-048²⁾が行われた。
本試験では、 PD-L1発現を反映するCPS (Combined Positive Score) が層別化因子として用いられている。 結果として、 化学療法+ペムブロリズマブ併用療法は全体集団においてOSの有意な延長を示し、 かつペムブロリズマブ単剤はCPS≧1群でのOS延長が確認された。
Pt感受性例では、 CPS≧20で症状が軽度であればペムブロリズマブ単剤、 CPS≧1ならばペムブロリズマブ単剤または併用療法、 CPS<1ならばペムブロリズマブ併用療法が標準治療とされている。
R/M-SCCHNに対する1次治療では、 ニボルマブ、 ペムブロリズマブのいずれも単剤が選択肢に挙げられる。 ただし、 ICIは効果発現に時間を要する例がある。 そのため、 Kaplan-Meier曲線上では初期の無増悪生存率や全生存率が従来治療より劣る傾向がみられる。
腫瘍量が多く病勢が強い場合や、 疼痛などの症状を伴う場合には、 Pt不応例では他の殺細胞性抗癌薬レジメン、 Pt感受性例では殺細胞性抗癌薬+ペムブロリズマブ併用レジメンの使用も考慮される。 また、 忘れがちではあるが患者が治療を入院、 通院どちらを希望するかも考慮すべき要素である。
また、 ICIは高度な間質性肺疾患や活動性の膠原病を有する場合には使用が適さない。 このような場合には、 従来のEXTREMEレジメン (セツキシマブ+シスプラチン/カルボプラチン+5-FU) も治療選択肢として考慮される。
R/M-SCCHNの1次治療としてICIレジメンが広く用いられるが、 Pt治療歴やCPS、 腫瘍量や症状の有無などを総合的に評価し、 適切な治療選択を行うことが望ましい。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
あなたは医師もしくは医療関係者ですか?
HOKUTOへようこそ。当サイトでは、医師の方を対象に株式会社HOKUTOの臨床支援コンテンツを提供しています。