著者

メイヨークリニック感染症科 松尾貴公

5日前

化膿性椎体炎の発症率は増加する?将来予測モデルで検証

The projected increase of vertebral osteomyelitis in Germany implies a demanding challenge for future healthcare management of aging populations

Infection. 2024 Aug;52(4):1489-1497.
化膿性椎体炎の発症率は増加する?将来予測モデルで検証

研究方法

研究デザイン

全国規模の後ろ向き観察研究ならびに予測モデリング

データソースと抽出基準

ドイツ連邦統計局の入院データベースから、 化膿性椎体炎を示すコード*が付与された入院症例を抽出。

*ICD-10コードM46.2~M46.5

対象期間

2005年~19年の入院記録を解析し、 2020年~40年の予測を実施。

解析モデル

最も高精度であったARIMA (自己回帰和分移動平均) モデルを用いて、 将来の罹患率と患者数を推定。

対象人口

性別および年齢別*に分類し、 予測は公式人口統計をベースに算出。

*35歳未満~85歳以上を、 5歳刻みで12区分に分類

主な研究結果

症例数、 発症率の推移

2005~19年における化膿性椎体炎の累計症例数は11万5,283例で、 年間の発症率は5.5/10万人から12.4/10万人に上昇した。

性差

男性の発症率は女性の1.4倍、 75歳以上に限ると1.6倍であった。

将来予測 (2040年)

全体の化膿性椎体炎の症例数は1万7,789例と予測された (2019年比 +72.6%)。

発症率は人口10万人あたり21.5件で、 男性26.7件、 女性16.4件となった。

85歳以上では症例数が128.6%増加と予測される一方、 75歳未満では29.7%の増加予測にとどまった。

部位別の発症予測

腰椎の化膿性椎体炎の罹患率の伸びが最大と予測された。

  • 腰椎 : 6,342例→1万1,410例 (+79.9%)
  • 胸椎 : 1,906例→3,242例 (+70.1%)
  • 頸椎 : 794例→1,309例 (+64.8%)
  • 複数部位 : 230例→278例 (+31.1%)
化膿性椎体炎の発症率は増加する?将来予測モデルで検証

高齢化に伴い、 化膿性椎体炎の発症率・罹患数が今後20年間で大幅に増加することが予測されています。 これは、 整形外科・感染症診療の現場にとって重要な示唆を与える結果です。

高齢者では免疫抑制状態、 心疾患、 糖尿病、 透析などの基礎疾患が多く、 化膿性椎体炎の診断・治療がより複雑になる可能性があります。

化膿性椎体炎の罹患部位は腰椎が最も多いですが、 将来的にも腰椎の罹患率の伸びが最大と予測されています。 頻度の高い腰痛の背後に、 化膿性椎体炎が隠れていないか常に念頭に置くことが重要です。

特に、 高齢者や基礎疾患を有する患者の化膿性椎体炎に関して、 今後のさらなる知見の集積が望まれます。


著者 : 松尾貴公
2011年 長崎大学医学部卒業、 聖路加国際病院初期研修・内科専門研修・内科チーフレジデント・感染症科フェロー・医員を経て2021年 テキサス大学ヒューストン校/MDアンダーソンがんセンターにて臨床留学。 2022年 同チーフフェロー、 2023年 同アドバンストフェロー、 2024年よりメイヨークリニック感染症科の整形外科感染症フェローとして骨関節感染症に特化したトレーニングを行い更なる研鑽を積んでいる。 また、 日本チーフレジデント協会 (JACRA) 世話人を経て、 現在日本感染症教育研究会 (IDATEN) KANSEN JOURNAL編集委員・米国感染症学会 (IDSA) 感染症教育推進委員。 2024年2月よりFebrile Podcast ID Digital Institute (IDDI)のメンバーも務めており、 デジタルデバイスを活用した新しい感染症教育に積極的に取り組んでいる。

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HOKUTO編集部
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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