
岡山大学大学院消化器外科学の安井和也氏らの研究グループは、 切除可能な膵管腺癌 (PDAC) 患者を対象に、 ゲムシタビン+S-1による術前療法 (NAC-GS) の実臨床における安全性および有効性を、 同大学病院のデータベースに基づく後ろ向き研究で検討した。 その結果、 NAC-GSの導入は長期生存予後の改善と有意に関連しており、 層別解析において導入患者の教科書的転帰 (textbook outcome : TO) 達成が予後改善に寄与する可能性が示された。 本研究はCancers (Basel) 誌において発表された。
比較群間で治療期間に差があり、 その間に手術手技 (特にロボット手術の導入) や周術期管理が進化・改善したことが、 NAC-GS群の良好な術後成績に寄与した可能性があります。

切除可能PDACに対する術前療法の有用性については、 現時点で国際的なコンセンサスは得られていないものの、 日本ではNAC-GSが広く用いられており、 実臨床における標準的なレジメンとして定着しつつある。 一方で、 NAC-GSを導入した患者において、 TO達成が予後に及ぼす影響については、 これまで十分に検討されていなかった。
そこで本研究では、 この影響を含め、 NAC-GSの実臨床における安全性および有効性を後ろ向きで検討した。
岡山大学のデータベースを基に、 同病院で2009年1月~2023年12月に切除可能PDACと診断された患者265例が以下の2群に分類された。
群間で臨床転帰を比較した後、 生存率に関する多変量解析を行った。 さらに、 NAC-GS群では、 修正TOの達成による転帰の層別解析を行った。
NAC-GSの完了率は90.1%であった。
2年全生存 (OS) 率はNAC-GS群が83.2%、 手術先行群が61.2%、 2年無再発生存 (RFS) 率はそれぞれ61.4%、 37.9%であり、 いずれもNAC-GS群で有意に改善した (いずれもp<0.01)。
多変量解析では、 以下の3つがOSおよびRFSの改善と有意に関連していた。
OS : HR 1.69 (95%CI 1.20-2.38、 p=0.003)
RFS : HR 1.94 (95%CI 1.42-2.66、 p<0.001)
OS : HR 0.49 (95%CI 0.30-0.82、 p=0.006)
RFS : HR 0.67 (95%CI 0.46-0.98、 p=0.04)
OS : HR 0.27 (95%CI 0.19-0.38、 p<0.001)
RFS : HR 0.32 (95%CI 0.23-0.44、 p<0.001)
さらに、 修正TO達成の有無別の層別解析では、 NAC-GSを導入し、 かつ修正TOを達成した患者集団は、 未達成の患者集団と比べてOSおよびRSを有意に改善した (いずれもp<0.01)。
著者らは 「本研究の結果より、 切除可能PDAC患者におけるNAC-GSの臨床的有効性が支持された。 NAC-GSの導入は、 長期生存予後の改善と有意に関連していた。 PDACの多職種治療戦略において、 導入患者の修正TO達成が予後改善に寄与する可能性がある」 と報告している。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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