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HOKUTO編集部

13日前

uncommonEGFR陽性NSCLCへのアファチニブ、 mOSは45ヵ月:ACHILLES最終解析

uncommonEGFR陽性NSCLCへのアファチニブ、 mOSは45ヵ月:ACHILLES最終解析
未治療の"sensitizing uncommon*"と定義された EGFR変異陽性非扁平上皮NSCLCに対する第2世代EGFR-TKIアファチニブの有効性および安全性を、 プラチナ併用化学療法を対照に比較評価した国内多施設共同第Ⅲ相無作為化比較試験ACHILLES (TORG1834) の最終解析の結果、 PFSは既報の中間解析と同様に有意な延長を示した。 また、 OS中央値は45.0ヵ月であった。 北里大学医学部呼吸器内科学の楠原政一郎氏が発表した。
*exon20挿入変異やT790M変異を除くuncommonな変異

背景

既報の中間解析結果から、 アファチニブは推奨治療に

第Ⅲ相ACHILLES試験の中間解析 (観察期間中央値 12.5ヵ月) において、 主要評価項目である無増悪生存期間 (PFS) は、 プラチナ併用化学療法群と比べてアファチニブ群で有意に延長し (中央値 10.6ヵ月 vs 5.7ヵ月、 HR 0.421 [95%CI 0.251-0.706]、 p=0.0010) ¹⁾、 試験は早期に中止された。 この結果を受けて、 最新の肺癌診療ガイドライン2025年版においても、 sensitizing uncommon EGFR変異陽性例に対する1次治療としてのアファチニブ単剤療法は強く推奨されている (推奨1B)²⁾。

今回は、 同試験について予定された観察期間を終了し実施された最終解析の結果が報告された (観察期間中央値 33.6ヵ月)。

試験の概要

対象は未治療のuncommon EGFR変異陽性NSCLC

日本の51施設において登録された、 ECOG PS 0-1かつ未治療で、 sensitizing uncommon EGFR変異陽性の進行または再発非扁平上皮非小細胞肺癌 (NSCLC) 患者109例が以下の2群に2 : 1で無作為に割り付けられた。

  • アファチニブ群 : 73例
アファチニブ30mgまたは40mgを経口投与。 高齢者や忍容性に問題がある症例では無作為化前にアファチニブ30mgを選択可能
  • プラチナ併用化学療法群 : 36例
プラチナ製剤 (シスプラチン75mg/m² またはカルボプラチンAUC5-6) +ペメトレキセド500mg/m²→維持療法としてペメトレキセド投与

主要評価項目は担当医師評価によるPFS、 副次評価項目は全生存期間 (OS)、 全奏効率 (ORR)、 病勢コントロール率 (DCR)、 安全性などであった。

試験の結果

患者背景は概ね一致

ベースライン時の患者背景として、 年齢中央値はアファチニブ群が71.0歳 (範囲 49-83歳)、 プラチナ併用化学療法群が66.5歳 (範囲 42-77歳) であった。 性別、 PS、 喫煙歴で両群間に多少の差はあるものの、 その他の病期やEGFR変異の有無、 中枢神経系転移、 アファチニブの開始用量は同様であった。

最終解析のmPFSは10.8ヵ月、 病勢進行・死亡リスク48%低減

最終解析におけるPFS中央値は、 アファチニブ群が10.8ヵ月であり、 プラチナ併用化学療法群の7.0ヵ月と比べて有意に延長した (HR 0.528 [95%CI 0.338-0.827]、 p=0.0052)。

Compound変異はPFSベネフィット顕著

PFSのサブグループ解析において、 多くのサブグループでアファチニブ群のベネフィットが一貫して認められた。

また、 PFSの遺伝子変異別サブグループ解析の結果、 アファチニブ群の各サブグループにおけるPFS中央値 (95%CI) およびプラチナ併用化学療法群とのHR (95%CI) はそれぞれ以下のとおりであった。

PFS中央値

uncommonEGFR陽性NSCLCへのアファチニブ、 mOSは45ヵ月:ACHILLES最終解析

mOSは45.0ヵ月

OS中央値は、 アファチニブ群が45.0ヵ月、 プラチナ併用化学療法群が27.0ヵ月であり、 有意差は認められなかったものの数値的な改善が認められた (HR 0.645 [95%CI 0.359-1.160]、 p=0.1433、 maturity 45%)。

75歳以上ではOSベネフィットなし

OSのサブグループ解析において、 多くのサブグループでアファチニブ群のベネフィットが概ね一貫して認められた。

また、 OSの年齢別サブグループ解析の結果、 75歳未満ではアファチニブ群が49.2ヵ月であり、 プラチナ併用化学療法群の27.0ヵ月と比べて延長した (HR 0.422 [95%CI 0.201-0.886]、 p=0.0137)。

一方で、 75歳以上ではそれぞれ17.8ヵ月、 16.1ヵ月と両群間に有意差が認められなかった (HR 1.219 [95%CI 0.333-4.471]、 p=0.3818)。

対照群の80.6%がクロスオーバー

アファチニブ群では、 プロトコール治療完遂と病勢進行後継続投与 (Beyond-PD) を含め29例がアファチニブによる治療を継続していた。 また、 アファチニブ群では第3世代EGFR-TKIオシメルチニブによる2次治療が3例で実施され、 そのうち2例でT790M変異が認められた。

プラチナ併用化学療法群では、 2次治療以降の全ラインを含め36例中24例でEGFR-TKIが投与されており、 EGFR-TKIのクロスオーバー率は80.6%であった。

Compound変異で最も高いORR・DCR

アファチニブ群における遺伝子変異別のORRおよびDCRは以下のとおりであった。

ORR

  • Major uncommon変異 : 59.1% 
(95%CI 43.2-73.7%)
  • Compound変異 : 79.2% 
(95%CI 57.8-92.9%)
  • Other uncommon変異 : 60.0% 
(95%CI 14.7-94.7%)

DCR

  • Major uncommon変異 : 81.8% 
(95%CI 67.3-91.8%)
  • Compound変異 : 87.5% 
(95%CI 67.6-97.3%)
  • Other uncommon変異 : 80.0% 
(95%CI 28.4-99.5%)

安全性プロファイルは既報と一致

Grade≧3の有害事象発現率は、 アファチニブ群が49%、 プラチナ併用化学療法群が46%であり、 両群とも安全性プロファイルは既報と一致していた。

結論

アファチニブ療法を標準治療として支持

楠原氏は 「sensitizing uncommon EGFR変異陽性非扁平上皮NSCLCの1次治療として、 アファチニブ単剤療法が標準治療であることが支持された」 と報告した。

出典

¹⁾ J Clin Oncol. 2025 Jun 20;43(18):2049-2058.

²⁾ 日本肺癌学会編. 肺癌診療ガイドライン-悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む-2025年版

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ACHILLES (TORG1834) 試験 中間解析結果

J Clin Oncol. 2025 Jun 20;43(18):2049-2058.

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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