関西医科大学乳腺外科学講座助教の太治智愛氏らの研究グループは、 ICI導入前における手術可能なトリプルネガティブ乳癌 (TNBC) 患者を対象に、 術前療法および術後療法による予後を後ろ向き研究で比較評価した。 その結果、 術前療法群の全生存期間 (OS) および無再発生存期間 (RFS) は、 術後療法群と比べて有意に不良であった。 研究結果はBreast誌に発表された。
冠動脈疾患、 脳血管疾患、 乳癌以外の悪性腫瘍、 糖尿病、 心不全、 COPDなどの併存疾患に関する情報がデータセットから欠如しているようです。
Ⅱ~Ⅲ期TNBCに対しては術前療法が推奨されているが、 同推奨は年齢や病期などの共変量が調整されていない米・National Cancer Databaseを用いた後ろ向き研究¹⁾に基づくものであり、 術後療法との同等性が疑問視されている。
この課題について、 新たな無作為化比較試験が実施される可能性は低いため、 適切なデザインを用いた大規模な後ろ向き研究が必要である。
日本のNational Clinical Database (NCD) の乳癌登録データベース (2012~16年、 免疫チェックポイント阻害薬 [ICI] の適応承認以前) に登録された手術可能なTNBC患者を対象に、 後ろ向き研究を実施した。 包含基準・除外基準は以下の通りであった。
包含基準
病期Ⅰ-ⅢB、 エストロゲン受容体 (ER) <10%、 プロゲステロン受容体 (PgR) <10%、 およびHER2陰性
除外基準
非浸潤性乳管癌、 cT4a/T4c/T4d、 cN3、 cM1、 両側乳癌、 男性、 非上皮性腫瘍、 化学療法なし、 手術なし、 経過観察なしの患者
年齢、 BMI、 cT、 cN、 組織型、 ER/PgR陽性、 化学療法レジメン、 乳房手術法、 放射線療法、 施設規模に基づいてマッチさせたコホートを作成した。 このコホートを対象に、 Cox比例ハザード回帰モデルを用いて、 主要評価項目のOSおよび副次評価項目のRFSについて、 術前療法と術後療法間で比較評価した。
術後療法群9,000例および術前療法群5,520例のうち、 マッチした3,256例のOSおよびRFSは術前療法群の方が有意に不良であり (それぞれ、 HR 1.45 [95%CI 1.26-1.68]、 HR 1.33 [95%CI 1.19-1.49])、 特に65歳未満、 Ⅱ-ⅢB期、 浸潤性乳管癌患者で顕著であった。
著者らは 「術前療法を実施した患者では予後が不良であったが、 おそらく未調整の交絡因子によるものであろう。 現在はICIが使用可能であるため臨床的影響は限定的であるが、 この結果はICIが治療選択肢の候補にない患者での治療決定に、 補足的な知見を提供する可能性がある」 と報告している。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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