シスプラチン適格筋層浸潤性膀胱癌 (MIBC) への術前抗PD-L1抗体デュルバルマブ+化学療法およびデュルバルマブ術後投与の有効性について、術前化学療法単独を対照に検証した第Ⅲ相国際共同オープンラベル無作為化比較試験NIAGARAのDFS解析の結果、 術後の再発・死亡リスクが31%低減した。 米・Northwestern University Feinberg School of MedicineのJoshua J. Meeks氏が発表した。
MIBCを対象とした第Ⅲ相試験NIAGARAにおいて、 膀胱摘除術 (RC) の術前デュルバルマブ (D) +化学療法および術後化学療法の併用は、 術前化学療法 (NAC) 単独と比較し、 無イベント生存 (EFS) 率および全生存 (OS) 率を有意に改善することが既に報告されている¹⁾。 今回、 2024年4月をデータカットオフとした無病生存期間 (DFS) *の初回解析結果が報告された。
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DFSはRCを受けた患者集団 (デュルバルマブ群469例、 対照群441例) で評価された。 RCを受けなかった患者数はデュルバルマブ群63例、 対照群84例で、 主な理由としては患者の決定、 病勢進行、 有害事象、 死亡、 担当医師の決定、 試験中止、 手術不適応だった。
RCを受けた患者集団の患者背景はITT集団と同様であった。 デュルバルマブ群/対照群のT2N0は39%/40%で、 クレアチニンクリアランス≧40-<60mL/minは19%/18%だった。
病理学的完全奏効 (pCR) 率は、 デュルバルマブ群が42%(95%CI 37.9-47.0%)、 対照群が33%(同 28.7-37.7%)で、 オッズ比は1.56(95%CI 1.18-2.06、 p=0.0017)だった。
DFS中央値は両群とも未到達で、 RC後の再発または死亡イベント数はデュルバルマブ群78件(22%)、 対照群102件(30%)と、 イベント発生リスクを31%低減させた(HR 0.69 [同 0.51-0.93]、 p=0.0143)。
DFSサブグループ解析の結果、 事前に規定された全てのサブグループにおいて、 デュルバルマブ群の対照群に対する優位性が一貫して認められた。 特にpCRが得られた患者とpCRが得られなかった患者の両方でDFSの改善が見られ (pCR患者のHR 0.58 [同 0.33-1.00]、 non-pCRのHR 0.82 [同 0.64-1.05])、 pCR達成の有無に関わらず両DFS曲線は早期に分離した。
境界域腎機能 (CrCl ≧40-<60mL/min) を有する患者においても、 デュルバルマブ群では対照群と比較しDFSベネフィットを認めた(HR 0.71 [同 0.38-1.29])。 さらに同患者集団における、 デュルバルマブ群/対照群のpCR率は32%/16%(オッズ比 2.43)、 EFS中央値は53.3ヵ月/22.8ヵ月(HR 0.69)といずれもデュルバルマブ群で改善した。
追跡期間中央値42.3ヵ月(範囲 0.03-61.3ヵ月)における12ヵ月/24ヵ月EFS率は、 対照群の69.9%/59.8%と比べデュルバルマブ群で76.0%/67.8%と有意に改善した(HR 0.68 [95%CI 0.56-0.82]、 p<0.0001)。
また、 追跡期間中央値46.3ヵ月(範囲 0.03-64.7ヵ月)における12ヵ月/24ヵ月OS率も同様に、 対照群の86.5%/75.2%と比べデュルバルマブ群が89.5%/82.2%と、 有意な改善が見られた(HR 0.75 [95%CI 0.59-0.93]、 p=0.0106)。
RCまでの期間について、 ≦56日は両群とも90%、 ≦70日はデュルバルマブ群が96%、 対照群が95%と、 両群で同等の結果だった。 また手術合併症の発生割合も両群で同程度であり、 デュルバルマブ群の安全性が裏付けられる結果だった。
安全性解析対象集団 (CrCl≧40mL/min) におけるデュルバルマブ群/対照群のGrade3/4の有害事象 (AE) 発現率は69%/68%で、 重篤なAEは62%/55%、 死亡に至ったAEは5%/6%に発現した。
デュルバルマブの術前投与中止に至ったAE発現率は、 境界域腎機能群で11%、 安全性解析対象集団で9%だった。 また同薬の術後投与中止に至ったAEは、 それぞれ6%、 8%で報告され、 境界域腎機能群の安全性プロファイルは試験集団全体と一致することが示された。
Meeks氏は 「RCを受けたシスプラチン適格MIBCにおいて、 周術期デュルバルマブ+NAC併用療法は再発・死亡リスクを31%低減させ、 DFSベネフィットはpCR/非pCRのサブグループ間でも認められた。 また境界域の腎機能を有する患者においても、 安全性プロファイルは試験集団全体と一致し、 pCR率とEFSのどちらも改善した」 と報告した。
¹⁾ N Engl J Med. 2024 Nov;391(19):1773-1786.
【NEJM】筋層浸潤膀胱癌への周術期デュルバルマブ、2年EFS・OS率も改善:NIAGARA
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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